残業代コラム

失業保険の受給条件と手続きの方法や前職への残業代請求について

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会社を退職の際、ご家庭の事情や転職活動が継続などの理由で次の職場が決まっていない場合、次のお仕事が決まるまでの間、退職してから再就職するまでの生活費を支えてくれる制度として、失業保険があります。

管轄のハローワークで手続きを行うことと規定を遵守することで受け取ることができる失業保険の受給手続は、多くの方にとって頻繁に行われるものではないため、複雑で面倒に感じるかもしれません。

ここでは退職した後、スムーズに失業保険を受け取るための流れと、前職で残業代が未払いになっている場合、請求を同時並行で行うための方法について解説します。

なお、「失業保険」の名称ですが、法律上の正式名称ではありません。正しくは雇用保険法に定められた「失業等給付」の「基本手当」のことを指します。本ページでは、多くの方になじみのある「失業保険」で説明いたします。

この記事の内容

失業保険の受給条件について

まず、失業保険を受け取る条件について確認しましょう。失業保険を受給するには、以下の条件を満たしていなければなりません。

①雇用保険の被保険者期間が過去2年間で合計12か月以上(会社都合の場合は6か月)あること

失業手当は雇用保険の加入により支払われるものです。いわゆる「自己都合退職」と「会社都合退職」では必要な加入期間に違いがあることも理解しておきましょう。

②ハローワークにて求職を申し込み、本人に働く意志・能力があるのに、本人やハローワークの努力によっても就職できない状態にある

失業手当の目的は、退職者が次の就職先を見つけるまでの生活保障です。働く意志がない場合は受け取ることができません。

失業保険の受給条件の②は「失業の状態」といえますが、次のような場合、失業には当たらないとされ、失業保険が支給されません。

  • 病気やケガ、妊娠・出産・育児ですぐに就職できない場合
  • 起業を予定されている方
  • 定年退職など

退職したらハローワークで手続きを行う

実際に退職をしたら、あなたの現住所を管轄するハローワーク(公共職業安定所=職安)へ必要書類を提出し、求職の申込みをします。失業保険の手続きは、求職申込みのあとに行います。

離職票(雇用保険被保険者離職票)については、退職前に会社へ発行の依頼をし、退職後に送付してもらうようお伝えしておきます。退職後、概ね10日前後で離職票が前職より届きますので、受領後にハローワークで求職等の手続きを行ってください。

関連リンク

退職後に離職票が届かない場合の対処方法とその違法性について

必要書類

  • 雇用保険被保険者離職票-1
  • 雇用保険被保険者離職票-2(1の複写になっている)
  • 雇用保険被保険者証
  • 印鑑
  • 個人番号確認書類(マイナンバーカード、通知カード、個人番号記載の住民票など)
  • 証明写真2枚(3cm×2.5cm)
  • 本人確認ができるもの(写真付き)
  • 普通預金通帳(本人名義のもの。ハローワークによってはキャッシュカードも可)

以上を窓口に提出します。簡単な質問を受けたあと、問題がなければ「雇用保険受給資格者のしおり」と「失業認定申告書」などを受け取り、手続は終了となります。

ハローワークでの求職手続きの流れ

①求職の申込み(求職申込書の提出)
②必要書類の提出
③ハローワーク職員から退職理由等の質問
④受給資格の決定
⑤離職理由の判定(自己都合または会社都合退職)
⑥雇用保険受給資格者のしおり等の資料を受領
⑦雇用保険受給説明会の日時の指定(次回訪問日)

元勤務先から受け取った「離職票」に書かれている「離職理由」について「異議」がある場合には、元勤務先から離職理由についてヒアリングを行うなどして、ハローワークが「離職理由」を判断します。

意外に思われるかもしれませんが、「離職理由」を判断するのは勤務先でもご自身でもなく、ハローワーク(公共職業安定所の所長)です。

これは、「離職理由」によって失業保険(基本手当)がもらえる日数やもらえる時期が変わるからです。そのため、「離職理由」を不適切に申告すると、思わぬデメリットを受ける可能性があります。説明が面倒だからといって、安易に「一身上の都合です」などの発言をしないようにしましょう。

雇用保険受給説明会から受け取りまで

失業保険の手続きは、申請したらすべての手続きが完了というわけではありません。実際に失業保険が給付されるまでには「待期期間」「雇用保険受給説明会への参加」「一定の求職活動をおこなう」「失業認定日にハローワークへ行く」という行動が必要になります。

待期期間とは?

失業保険は、退職したその日の分からもらえるわけではありません。ハローワークで手続きをした日(失業保険の申請をし、受給資格が決定した日)から7日間、失業の状態であることが受給の条件となり、その間の分は失業保険が支給されません。この7日間を待期期間といいます。

待期期間は、本当に失業していることを確認するための期間です。そのため、この期間中に何らかの仕事をした場合、働いた日数分の待期期間が延長されます。

さらに、正当な理由のない自己都合退職や懲戒解雇による退職の場合には、待期期間の7日間に2か月もしくは3か月の給付制限期間を経過してから支給となります。

また、実際に給付金が指定口座に振り込まれるのは、最初にハローワークで手続きを行ってから約1か月後になりますので、注意が必要です。

待期期間に関する注意点

自己都合退職などで、7日間の待期期間+2か月の給付制限がある場合、家計の補助としてアルバイトを検討される方がいるかもしれません。失業保険を受けている間において、アルバイトは可能ですが、どの段階にいるかによって注意すべき点が異なってきます。

  • ※2020年10月1日より、正当な理由のない自己都合退職により離職した場合、5年間のうち2回までは給付制限期間が2か月となります。5年間のうち3回目以降の失業保険給付を受ける場合や、重大な過失による解雇、2020年10月1日以前の正当な理由のない自己都合退職の場合は、待期期間終了後に3か月の給付制限期間があります。

「7日間の待期期間中」の場合

アルバイトとして働くことはできません。アルバイトの「応募」をする場合には、あらかじめハローワークに申告するようにしましょう。

「2か月の給付制限期間中」の場合

1週間の所定労働時間が20時間以上にならない範囲でアルバイトを行っても、ハローワークに就職したとみなされると、受給できなくなる可能性があるため、あらかじめアルバイトを行う際には管轄のハローワークで、どのような範囲であれば可能か確認するようにしてください。なお、この期間におけるアルバイトで失業保険の減額はありません。

「失業保険受給中」の場合

ハローワークに相談のうえ、どのような範囲であればアルバイトを行うことが可能か確認するようにしてください。失業保険受給中のアルバイトは可能ですが、失業保険は労働した分が先送りになるだけで、失業保険の総額は変わりません。

2020年(令和2年)10月1日以降の自己都合退職者に対し、給付制限期間が2か月に短縮

これまで、正当な理由のない自己都合退職及び懲戒解雇による退職は、失業等給付制限期間が3か月となっていましたが、法改正により2020年(令和2年)10月1日以降に離職された方は、正当な理由のない自己都合退職の場合、5年間のうち2回までは給付制限期間が2か月に変更となりました。

ただし、懲戒解雇による退職はこれまでどおり3か月で給付制限期間に変更はありません。

関連リンク

厚生労働省:令和2年10月1日から給付制限期間が3か月から2か月になります

雇用保険受給説明会の参加について

管轄のハローワークで雇用保険についての説明を受けます。先の求職申込の手続きの際に、説明会への参加日時指定の案内があります。

説明会終了後に写真付きの「雇用保険受給資格者証」「失業認定申告書」を受け取り、初回の失業認定日について通知を受けます。

なお、この説明会への参加は就職活動とみなされるので、失業認定申告書に「初回講習会参加」と書いてハローワークへ提出します。

初回の失業認定日

説明会参加から2週間前後で初回の失業認定日があります。その際、「雇用保険受給資格証」と「失業認定申告書」が必要です。この認定日にハローワークに行かなければ失業状態であることが確認できないため、雇用保険が支給されません。

この場合、失業認定を受けるために必要な「就職活動の実績」が無効になりますが、受給期間内(1年間)であれば、受け取ることができなかった期間分は繰り越して受け取ることができます。失業の認定後に、指定した預金口座に失業保険が振り込まれます。

なお、初回の失業認定日以降、認定日に次回の認定日が指定されます。就職活動を行い、4週間に1度ハローワークで認定を受け、失業保険の給付を受けることになります。

前職で未払い残業代が発生している場合の対処について

前職で残業代の未払いが発生しており、残業代を回収したいとお考えの場合、退職後すぐに行動することが重要です。

未払い残業代の消滅時効が3年ですので、前職の勤務期間が3年未満であれば未払い残業代がすぐ消滅することはありませんが、3年以上勤務された方であれば、退職後1日経過するごとに消滅してしまいますので、早めの対応が求められます。

  • ※2020年4月1日より、改正民法の施行とあわせて改正労働基準法も施行されたことで、未払い残業代の時効が2年から3年に延長となりました。ただし、時効の適用は2020年4月1日以降に支払われる賃金からが対象となるため、3年分の未払い残業代を請求するには、最短でも2023年3月以降となります。

未払い残業代の請求は弁護士へ相談をする

未払い残業代の請求については、ご本人で行うこともできますが、前職の会社が前向きに対応されるかについては、難しいケースがほとんどです。

稀に労務管理体制の見直しをされて、勤務実態に基づき対応される企業もありますが、多くの企業は法的に問題のない運用をしているなど、自社の労務管理体制に不備がないことを前提に応じてもらえないことが多く、泣き寝入りになりがちです。

しかし、弁護士を代理人に立てて会社と交渉を行うと、会社側も弁護士を無視することは難しく、交渉に応じて話し合いを進めながら和解の道を探るか、それぞれの主張に納得ができないときは労働審判・裁判へと発展することもあります。

前職に未払い残業代を請求したいと考えているときは、失業給付や求職の手続きに向けた書類の準備による手間もあり大変ですが、同時並行で弁護士へ相談し、今後の対応に向けて依頼をするべきかどうかを含め、検討されることをおすすめします。

未払い残業代の請求は弁護士へご相談ください

初回相談は無料です

この記事の監修

小湊 敬祐

Keisuke Kominato

  • 弁護士
  • 上野法律事務所
  • 東京弁護士会所属

働き方改革やテレワークの導入による在宅勤務など、社会情勢の変化により企業の残業に対する姿勢が変化しつつあります。一方で、慢性的な人手不足により、残業が常態化している企業もあり、悪質なケースでは、残業代の支給がされていないこともあります。ご依頼者の働きが正当に評価されるよう、未払いとなっている残業代の回収を目指し、活動を行っています。

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