残業代コラム

退職後に離職票が届かない場合の対処方法とその違法性について

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会社を退職する際、労務担当者に離職票の発行をお願いしたが、日数が経過してもご自身の手元に届かず困ったことはないでしょうか。離職票は、一般的に退職してから10日から2週間程度で届くものです。離職してから数日しか経っていなければ焦る必要はありませんが、2週間を過ぎても届かない場合、前職の会社に状況の確認をはじめとした対応を検討した方がよいかもしれません。

ここでは、退職後に離職票が届かない場合の対処方法をはじめ、その違法性や未払い残業代請求のタイミングについて解説します。

  • ※当事務所では、離職票に関するご質問やお問い合わせをお受けしていませんので、予めご了承ください。離職票に関するご質問やご相談は、管轄のハローワークへお問い合わせください。
この記事の内容

前職の労務担当者に離職票が届いていないことを伝える

退職してから2週間以上経っても離職票が届かない場合、まずは前職の労務担当者にメールで連絡し、そのあと電話で状況を確認しましょう。単純に担当者が忘れている場合であれば、届いていない旨を伝え、急ぎ送ってもらえるよう再度依頼を行えば、問題なく解決すると思います。

ここでのポイントは、メールと電話の両方で確認をとることです。特に離職票の届かない原因が嫌がらせと考えられる場合、メールのみの連絡であれば「届いていない」と回答されたり、電話のみの場合、後々「当時の担当者がおらず、離職票の状況がわからない」など、原因を特定できない可能性があります。

そこで、メールを送信したあとに電話をかけ、「少し前にメールで問い合わせしましたが〜」と伝え、先手を打ちながら確認していくとよいでしょう。

管轄のハローワークで離職票の手続きが止まっていないか確認する

もし会社側の回答が、「すでにハローワークへ書類提出を済ませているが、まだ離職票の交付を受けていない」といった場合、交付され次第郵送してもらうよう依頼しましょう。

一般的にハローワークの繁忙期は、年度の切り替わる3月と9月といわれ、この時期に退職した場合、交付が遅れる可能性があります。交付を急いでいる場合は、前職の管轄にあたるハローワークへ直接問い合わせ、交付の状況を確認しましょう。

管轄のハローワークより、すでに離職票を発行・返信したと回答された場合

管轄のハローワークに離職票の手続き状況について問い合わせをし、すでに発行済で会社に送付している旨の回答を受けた場合、いつ手続きが完了し、発送したのか、日時を確認するようにしましょう。

日時によっては、郵送の状況でまだ会社に届いていない可能性がありますので、様子を見ながら対処します。もし、管轄ハローワークが手続きを完了してから日数が経っている場合、面倒でも会社側にメールと電話でハローワークの問い合わせ状況を説明し、確認をとってください。

会社内での郵送トラブル(間違って社内の別部署に届き、放置されていたなど)により、なんらかの問題が発生しているかもしれませんので、会社側の回答を待って対応してください。回答内容によっては、嫌がらせの可能性も考えられます。

前職の会社の嫌がらせで、離職票の発行が行われていないと考えられる場合

離職票が届かないことで問題となるのは、ハローワークで失業給付の申請ができず、失業手当の受給が遅れてしまうことです。また、再就職先の会社によっては、離職票の提出を求められることもあります。

前職の会社を円満な形で退職できず、しこりが残っているようなケースでは、嫌がらせで故意に発行を遅らせていることも考えられるため、管轄のハローワークへ離職票の交付手続きが済んでいるかを確認しましょう。

まだ手続きがされていないようであれば、改めて会社に手続きの進捗を確認し、至急ハローワークに手続きを進めるよう、電話とメールで催促をしてください。

会社がハローワークに離職証明書を提出する期限は、退職の翌日から10日以内と雇用保険法(法7条及び76条3項、施行規則7条)で定められています。嫌がらせをしていると考えられる場合、会社に連絡をするのは気が引けるかもしれませんが、上記のように法的根拠もあるので、10日を過ぎても対応していなければ、提出を急ぐよう抗議してもよいでしょう。

会社が離職票の提出に取り合わない、不明瞭な回答をする場合、嫌がらせの可能性が高いと考えられるので、このようなときはハローワークに相談し、対策を検討してください。

残念なことですが、失業手当の受け取りが遅れることを逆手に取り、経済的なダメージを与えようと嫌がらせをする悪質な企業が存在しているのも事実です。

雇用保険法第83条4項には、理由なく離職票の交付を拒んだ場合の罰則規定が盛り込まれており、こうした行為は雇用保険法に違反するものです。

離職票が発行されないことをハローワークに相談する

2週間を過ぎても離職票が届かず、会社側へ再三の確認や催促をしているにも関わらず提出されない場合は、ご自身の管轄ハローワークの窓口に出向き、「会社が離職票の交付手続きをしてくれない」と相談しましょう。ハローワーク側で会社に離職票を送るよう促してもらえます。

ハローワークで失業給付の仮手続きを行うことができる

離職票の発行が遅れると、その分失業保険の受給期間が先に伸びてしまいます。就職活動を行いながら失業給付を受けたい方にとって、手続きが遅れることは、ときに生活面で大きな支障がでてしまいます。

退職した日から12日経っても離職票が届かない場合は、離職票がなくてもハローワークで失業保険給付の仮手続きを行うことができます。まずはご自身の管轄のハローワークへ赴き、離職票が発行されない事情を説明し、仮手続きの対応について確認してください。

手続きには先に求職登録を行う必要があり、事前に通帳やマイナンバーカード、運転免許証など、身分を証明するものを用意しなければいけないものもあるため、先に電話連絡をして対応について相談しておくのもよいでしょう。

仮手続きを行うことで、離職票が届いていなくても、失業保険の受給手続きは遅滞なく進めることができます。ただし、最終的に離職票が必要になるため、最初の失業認定日までに用意できないと、失業保険の受給が保留になってしまいます。

そのため、前職やハローワークには、引き続き発行の進捗状況を確認し、離職票を発行してもらうようにしてください。

ハローワークで離職票を発行してもらえるか相談する

離職票を発行することは会社の義務であり罰則規定もありますので、会社側は請求希望された退職者に対し離職票を発行しなければいけませんが、悪質な企業の場合、最後まで応じる姿勢をみせないことがあります。

このようなときはハローワークに事情を説明し、対応策について話し合うようにしてください。退職証明書など、退職を証明する書類が必要になりますが、ハローワークで離職票を発行してもらえるケースもあるため、どうしても離職票を受け取ることができない場合、ハローワークの職員とよく相談の上、判断を仰ぐようにしましょう。

転職先が決まっている場合でも離職票が必要になるケース

転職先が決まっていても離職票が必要になる場合もあります。ここでは、どのようなケースで必要になるのか解説します。

転職先で提出を求められた場合

離職票には雇用保険の加入期間や勤務状況などが明記されており、職歴の証明にもなるので、求められたら提出してもかまいません。ただ、前職より間をあけずに再就職された場合、離職票を請求していないと改めて前職の会社に発行依頼を行う必要があります。この場合、担当者に提出まで時間がかかることを伝え、届き次第提出するとよいでしょう。

諸事情により内定していた転職先に転職しない・できない場合

会社の事情で採用が取り消しになったり、事情があって入社を辞退することになったなど、予期せぬ形で失業状態になる可能性を想定し、離職票を入手・保管しておくようにしましょう。不測の事態があっても、ハローワークでの手続きがスムーズに行えます。

転職したが、諸事情により早期退職した場合

失業手当の受給には、「離職の日以前2年間に」12か月以上雇用保険に加入していることが条件です。(自己都合退職の場合) 複数の職を転々とした場合でも、合計して雇用保険加入期間が12か月以上となれば受給できるので、こちらも万が一を想定して離職票を持っておくと安心です。

会社は退職者より離職票の発行を求められた場合、交付しないと違法になる

すでに述べたように、退職者本人が「発行してほしい」と求めているにもかかわらず、離職票を発行しないことは違法になります。

雇用保険法第7条と、雇用保険法施行規則第7条に、会社は退職した翌日から10日以内に「雇用保険被保険者資格喪失届」と「離職証明書」をハローワークに提出しなければならないことが法制化されているためです。

これに違反した場合、雇用保険法第83条4項において、6か月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金という罰則規定があります。

また、離職票を受け取る権利については、雇用保険法施行規則第16条と、雇用保険法第76条3項、労働基準法第22条において法制化されており、退職者から離職票の発行を求められたら、すみやかに交付しなければなりません。

前職で未払いとなっている残業代がないか確認する

ハローワークもしくは転職先へ離職票を提出する手続きとあわせて、前職で未払いの残業代がないかを確認することも検討しましょう。

労働者には、会社に対して残業代を請求する権利がありますので、決して不当な要求ではありません。在職中は会社との関係性悪化を懸念し、未払い残業代請求の主張は難しい側面もありますが、退職する直前・直後であれば、残業代を請求するための証拠集めが比較的容易なことと、会社との関わりがなくなることから、関係性を気にせず未払い残業代を請求することができます。

つまり、未払いになっている残業代を会社に請求するのは、「退職直後」に行うことがベストのタイミングといえます。

詳しくは、下記ページでも解説していますので、こちらもご覧ください。

関連記事

残業代請求のタイミングについて

離職票が発行されないときの対処の流れ

ここまで離職票が発行されない場合の対処方法について解説してきましたが、手順としては次の流れになります。

対応の流れ

  1. 退職から10日〜2週間は離職票が届くのを待つ
  2. 離職票が届かない場合、会社に手続き状況の確認をする
  3. ハローワークで手続きが止まっていれば、どの程度日数がかかるか問い合わせる
  4. 嫌がらせの可能性があれば、ハローワークに相談し、発行手続きを促してもらう
  5. 離職票が届かず失業給付手続きが遅れる場合、失業保険給付の仮手続きを先行して行う
  6. どうしても離職票が発行されない場合、改めてハローワークに相談をする
  7. 再就職先が決まっていても、離職票は保管しておく
  8. 離職票に関するトラブルがあった場合、まずはご自身の管轄のハローワークに相談する
  9. 離職のタイミングとあわせ、前職で残業代の未払いがないか確認する

特に、離職票提出の準備とあわせて残業代の未払いがないかこのタイミングで確認し、もし未払い残業代が相当あると感じているようでしたら、回収に向けた対応について弁護士へご相談されることをおすすめします。

未払い残業代の請求は弁護士へご相談ください

初回相談は無料です

この記事の監修

小湊 敬祐

Keisuke Kominato

  • 弁護士
  • 上野法律事務所
  • 東京弁護士会所属

働き方改革やテレワークの導入による在宅勤務など、社会情勢の変化により企業の残業に対する姿勢が変化しつつあります。一方で、慢性的な人手不足により、残業が常態化している企業もあり、悪質なケースでは、残業代の支給がされていないこともあります。ご依頼者の働きが正当に評価されるよう、未払いとなっている残業代の回収を目指し、活動を行っています。

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