解決事例から学ぶ残業代請求の実況中継

リーガルプラスで解決した残業代請求の実例をもとに、弁護士へ依頼するとどのような流れで解決に向けて進行するのかをご紹介します。

ここでは、残業代請求の実際の解決事例を通して、弁護士へ相談するタイミングや残業代請求に向けた準備、弁護士が会社側と実際にどのような交渉を進めているのかなど、解決までの流れを実例に基づき、マンガやイラストなどを交えてわかりやすく解説します。

残業代請求に向けて弁護士へ相談

弁護士に相談したきっかけは「強引な退職勧奨を受けた」ことでした

Aさんは夜遅くまで開いている飲食店の料理長。22時以降の深夜勤務や休日労働に関して「料理長は管理監督者だから残業代は支払わない」と言われていましたが、法律上ではAさんの勤務形態では管理監督者には該当せず、残業代の支払いを受けられる立場にありました。

在職中は我慢して働いていたAさんですが、会社から勤務先の店舗の閉鎖にともなう強引な退職勧奨を受けたことから、リーガルプラスへご相談に来られました。

ご相談者のポイントとなった行動

  • 会社が主張する管理監督者のあり方に疑問を持っていたこと
  • インターネットの情報で判断せず、法律の専門家である弁護士へ早期に相談したこと

管理監督者は残業代が支払われない?

管理監督者である場合には、労働基準法で定められた労働時間、休憩、休日の制限を受けないため、原則として残業代は発生しません。しかし、管理監督者であるかどうかは次のように判断されます。

  • 経営者から一定の権限を与えられている(経営者と一体的な立場で仕事をしている)
  • 勤務時間について厳格な制限がない
  • その地位にふさわしい待遇がなされている

Aさんは、これらに該当しないことが弁護士から見て明らかでした。そのため、ご依頼後に書面でしっかりと反論しました。

無料相談で「根本的な解決を目指したアドバイス」を行います

リーガルプラスの無料相談では、弁護士が直接お話をうかがいます。Aさんは退職後にご相談に来られましたが、未払い残業代請求は、退職後はもちろんのこと、在職中でも転職先が決まり次第未払い残業代を請求したいと考えている方からのご相談もお受けしています。ご相談の際は、勤務状況や残業代回収のご希望をうかがい、状況に応じたアドバイスをいたします。

個人である従業員と組織である会社の交渉では、その力関係から従業員の方は不利になりがちです。

状況を整理して、法律的に権利を主張できるかどうかを検証し、根本的な解決に向けたご提案も行うようにしております。

ご相談のなかでの弁護士の役割

残業代が発生しているか、していないかを診断

今回のケースでは、「料理長は管理監督者である」という会社の言い分を検証しました。Aさんの勤務形態では、管理監督者の条件を満たさず、該当しないので、残業代請求ができることをアドバイスし、ヒアリングした勤務状況から、発生している残業代の概算をお伝えしました。

残業代の回収方法をアドバイス

まずは示談(任意交渉)で話し合っていくことになりますが、Aさんの場合、会社の姿勢がすでに非協力的な様子であったため、労働審判や訴訟手続きの可能性についてもアドバイスさせていただきました。

残業代請求のタイミングをアドバイス

会社は強引な退職勧奨を行ったにも関わらず、Aさんの退職理由は「自己都合」として処理されていました。最後の給与が支払われる前でもあったため、これらの会社側の退職事務手続きが完了した際に残業代請求を行う方がよいとアドバイスさせていただきました。

弁護士費用のお見積りもきちんとご提示します

弁護士と直接話をするなかで、これまで抱いてきた疑問を解決でき、Aさんは残業代請求の意思を固められました。その日のうちに弁護士費用をお伝えし、後日正式にご依頼いただきました。

なお、当事務所では、ご相談いただいた後にすぐご契約を強要するようなことは一切ありませんので、安心してお話ください。

弁護士費用と契約の内容について

弁護士費用を事前見積もり

未払い残業代請求における弁護士費用は、着手金無料・成功報酬制としています。残業代を回収できてからのお支払いとなります。

  • ※調査・交渉の着手金は無料です。証拠保全手続きや、労働時間に関する有力な証拠がないまま訴訟に移行する場合、着手金が必要になることもあります。
  • ※証拠保全手続きを行う場合、証拠保全の着手金(22万円〜)が必要となります。手続きが発生するときは、事前に費用のご説明をいたします。

委任契約書の取り交わし

弁護士のアドバイスや活動方針にご納得いただき、ご依頼をされる場合は委任契約書を取り交わします。代理交渉・書類作成など、解決に向けて必要な活動内容が含まれます。

未払い残業代の回収に向けて代理活動の開始

委任契約を取り交わした後、弁護士があなたの代理・窓口となって、会社側と交渉を行います。ご依頼された方には安心して普段どおりの生活を過ごしていただけます。

残業代請求に向けた事前準備について

残業代請求に向けての証拠収集と残業代の正確な計算を行う

Aさんの職場ではタイムカードで出退勤を記録していました。しかし実態は、店長が出退勤の際に、全従業員のタイムカードをまとめて打刻するというものでした。そのため、Aさんの実際の出退勤時刻とタイムカードは噛み合っていませんでした。

こうした状況でしたが、Aさんの場合、日々ご家族とメールのやりとりがありました。これをもとにして、出退勤の履歴を補完するかたちで残業の証拠とし、会社側に主張していきました。

  • ※会社が勤怠管理をおこなっていない場合には、周辺の記録(メール・ICカードの履歴等)で勤務状況を証明し残業代を計算することがあります。

証拠収集と正確な残業代の割り出し

どの証拠をどこまで収集するかをアドバイス

弁護士が会社宛に内容証明を送付する際、雇用契約書や就業規則、賃金台帳やシフト表など、会社が保管している資料の提出も求めました。Aさんには、ご家族とのメールの履歴をまとめていただきました。

2年分の出退勤状況を基に残業代を計算

リーガルプラスでは、1日毎の出退勤時刻をチェックし、計算します。会社側からの反論などを考慮し、複数のパターンで残業代を試算・計算することもあります。

  • ※2020年4月1日に、2017年6月に公布された改正民法の施行とあわせて改正労働基準法も施行されたため、未払い残業代の時効が2年から3年に延長となりました。この事例は施行前に活動した案件のため、2年分としております。

失業手当(失業給付)を申請する

Aさんは会社都合による強引な退職勧奨で退職しましたが、離職票には「自己都合」と書かれていました。失業手当の給付は自己都合で退職すると、会社都合に比べて2〜3か月遅れます。転職先も決まっていなかったため、早急に生活費として失業手当を受け取る必要がありました。

当事務所の弁護士は失業給付の早期受領に向けたサポートを行うため、ハローワーク宛に弁護士名で「Aさんの退職は会社都合であること」を書面にて送付しました。

慎重に判断された結果「自己都合」から「会社都合」へと離職理由が変更となり、失業給付の早期受領が実現しました。

ご依頼者の生活面に対する不安解消にむけた活動

管轄ハローワークに宛てて「離職理由変更」願いの書面を作成・発送

書面に強制力はないのですが、弁護士が作成することで端的かつ論理的な書面を作成することができます。今回の件では、自己都合退職と言い難いものでしたので、突然の出来事で生活面に不安を抱えるAさんに対し、弁護士が書面をまとめ、管轄ハローワークに離職変更願いを送付しました。

管轄ハローワークが慎重かつ迅速に手続きしてくれたことで、Aさんはすぐに失業給付を受け取ることができました。

残業代請求に向けて内容証明郵便の発送・代理交渉の開始

退職手続きの問題が解決したため、残業代の支払いを求める書面を速やかに作成して内容証明郵便で送付しました。内容証明郵便を受け取った会社側にも代理人として弁護士がつきました。

会社側と未払い残業代の回収に向けて本格的なスタート

残業代請求の内容証明郵便を作成・送付

残業代請求には3年(ここでのAさんの事例は2年)の時効があります。Aさんはすでに退職しているので、速やかに一時的に時効を中断する必要がありました。内容証明郵便による残業代の催告を行うことで6か月、一時的に時効を中断することができます。

残業代請求に向けて会社側と交渉

弁護士による会社側との代理交渉

Aさんの元勤務先に対して、期限を設けて残業代の支払いを求める書面を作成し、内容証明郵便を送付したところ、会社側にも代理人として弁護士がつきました。こちらの要求に対して、会社側からは最初にAさんが言われたとおり「料理長は管理監督者であり、残業代の支払い義務がない」という反論がありました。

今回のケースでは、Aさんの勤務実態が法的に管理監督者にあたると言い難い内容でしたので、当事務所の弁護士が反論を重ねることになります。

このあと弁護士は、残業代の支払いに期限を設けて、期日までに支払われない場合は「労働審判」や「訴訟手続き」に移行することを会社側に通知しました。

訴訟になった場合、公開が原則となるため、残業代問題が起きていることが社会に知られ、会社の評価が下がる恐れがあります。

また、会社としては他の従業員からの「残業代請求の連鎖」リスクもあるため、訴訟を避けて支払いに応じる姿勢が望める場合もあります。

弁護士だからこそできる交渉術を使い、解決に向けた活動を行います。

会社側との本格的な交渉

反論書面の作成と電話による交渉

元勤務先におけるAさんの勤務実態では、料理長は管理監督者とは認められないことを法律的に証明し、反論しました。

交渉経過の報告・打ち合わせ

会社側からの回答があるたび、Aさんには交渉の経過をご報告し、経過に基づいて解決までの方針をご説明して打ち合わせを重ねました。

口頭での交渉はNG?

口頭で交渉をすると、あとから「言った」「言ってない」ということになりがちです。そういった無駄なトラブルを避けるため、基本的に書面を作成して会社側とやりとりを行います。

時間をかけて練ることができるのはメリットですが、反面、時間がかかることは書面での交渉のデメリットとも言えます。

その点を踏まえて、最大限に交渉を前進させられるよう、いかに相手方に有効な主張をできるか、ここが弁護士の腕の見せどころとなります。

和解(示談解決)

交渉では、管理監督者に対する認識が争点となりました。管理監督者とは、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的立場にある者をいいます。

「管理監督者」という名称にとらわれず、実態に即して判断されるため、Aさんの料理長という立場が管理監督者にあたるとするには、厚生労働省が管理監督者の判断基準として挙げる「職務内容として経営者と一体的な立場にあること」「労務管理の責任権限があること」「出退勤や勤務時間の厳しい制限を受けないこと」「地位にふさわしい待遇を受けていること」が証明されなければなりません。

この定義において、Aさんの料理長としての勤務実態が本当に管理監督者にあたるかどうかを検証していくこととなります。

和解書の作成とリーガルチェック

和解書の作成

交渉を重ねた結果、会社側は「Aさんは管理監督者ではなく、残業代の支払い義務がある」ということを認めました。ご依頼いただいてから5か月での解決となりました。

きちんと支払いがなされるよう、また、Aさんにとって不利な内容が盛り込まれていないかをしっかり確認したうえで和解書を取り交わしました。

和解書締結前のリーガルチェック

和解した内容や支払金額、方法などについて記した和解書案をリーガルプラスの弁護士が作成し、会社側にもその内容をチェックしてもらいながら、双方が納得するまでやりとりを続けます。会社側から送られてきた修正に対して、Aさんに不利益な内容が盛り込まれていないかをしっかり確認します。

未払い残業代を請求したいとお考えであれば、まずは弁護士にご相談ください

ここまで料理長であったAさんの実事例をもとに、相談から和解までの流れについて解説してきました。弁護士の役割についても触れてきましたが、解決の近道となることも多くありますので、転職などを機に未払いとなっている残業代を請求したいとお悩みでしたら、まずは弁護士への無料相談などを利用してご相談されることをおすすめします。