残業代請求に関する解決事例 36
残業代請求に関する解決事例 36
解決事例36

担当弁護士
若松 俊樹
ご依頼者 J.Iさん
ご依頼者のJ.Iさんは、建設機械レンタル会社の営業職で、主として外回り営業が仕事の中心でした。会社にはタイムカードがなく、給与明細上残業代も支払われていなかったため、残業代請求をしたいと考えご相談にいらっしゃいました。
ご依頼者のJ.Iさんの給与明細を確認したところ、給与明細上残業代とみられる支払いは見受けられませんでした。他方で、会社ではタイムカードをはじめとした時間管理を一切していなかったため、J.Iさんの労働時間をどう立証するかが問題となりました。
そこで、J.Iさんがあらかじめ収集していた各勤務日のグーグルマップタイムライン、および退勤直前に送信していた得意先へのメール、業務日報の趣旨で作成し会社に提出していた「行動予定表」、社屋で使用していたデスクトップパソコンの写真(画面に時刻が表示されたもの)を揃え、少なくともそれらの時間までは労働に従事していたものとして残業代請求を行いました。
交渉では解決がつかず訴訟となり、会社からはみなし労働時間制や労働時間に対する疑義の反論がありましたが、裁判所と協議の結果、当方の請求をある程度認める内容(354万円強の残業代元本請求に対し、解決金220万円)で和解が成立しました。
残業代における労働時間立証の方法としては、会社の管理するタイムカードがもっとも信用性があるとされています。しかし、労働時間管理がずさんな会社ですとタイムカードすらないことも多く、この場合は実労働時間を労働者の側で主張立証しなくてはなりません。
本件においては、外回りをしていた際のグーグルマップタイムライン(現場で撮影されたと思われる写真が多数添付されているもの)、およびご依頼者のJ.Iさんが退勤直前に得意先に送っていた送信メールの記録などを合わせて、実労働時間を相当程度客観的に立証できたことが功を奏したといえます。
タイムカード取得が期待できない場合、複数の時間立証資料をいかに組み合わせるかがカギとなります。具体的には、①「その資料で記録された時間が客観的に正確であること」②「その記録された時間に労働に従事していたことが第三者の目から見ても相当程度推認されること」の2点を、複数の時間立証資料を組み合わせて立証することとなります。こうした点については専門的な判断が欠かせませんので、一度ご相談いただくことをお勧めします。