残業代請求に関する解決事例 34
残業代請求に関する解決事例 34
解決事例34
担当弁護士
若松 俊樹
ご依頼者 N.Sさん
ご依頼者のN.Sさんは、介護施設の夜間専従職員として、週3日程度、午後4時から翌日午前10時までの勤務を行っていました。一部残業代については手当で支払われていたものの、それ以外については1か月単位の変形時間労働制があるとして支払われていませんでした。また、タイムカード上は2時間の休憩がありましたが、実際は休憩ができる状況になく、N.Sさんは継続して労働をしていました。
弁護士が代理人として会社側の代理人と交渉するも、会社は1か月単位の変形時間労働制であること、休憩時間は2時間取られていることを主張し、未払い残業代はないとの主張は変わりませんでした。
やむなく訴訟に移行し、就業規則に必要な事項の記載がなく1か月単位の変形時間労働制は無効であること、タイムカードの記載に関わらず、ご依頼者のN.Sさんは休憩を取得できた状況になかったことを主張・立証していきました。
その結果、休憩時間中の労働については認定し難いとされたものの、1か月単位の変形時間労働制は無効であるとの裁判官心証のもと、未払いとなっている残業代の残額をベースに解決金180万円での和解となりました。
変形時間労働制は多くの企業で採用されていますが、実際のところ有効性のハードルが高く、無効であるにもかかわらず必要な残業代が支払われていないケースが多く見受けられます。
要件の判断は内容が複雑ですので、就業規則や労使協定、タイムカード、給与明細などの資料を揃え、できるだけお早めにご相談いただくと良いと思います。
他方、休憩時間中の労働については、タイムカードの記載と食い違う場合は高度に客観的な証拠での立証が求められます。本件でも、タイムカードにご依頼者のN.Sさんと所属長の確認印が押されていたこと、その他特段異議が申し立てられたことがないことから、休憩時間中の労働は認めがたいとの結論となりました。このため、勤務中の段階で休憩時間中の労働があった場合、客観的資料をできるだけ集めておくことが重要です。