残業代請求に関する解決事例 14
残業代請求に関する解決事例 14
解決事例14
担当弁護士
宮崎 寛之
ご依頼者 T.Nさん
ご依頼者のT.Nさんは、工場作業員として早朝から夕方まで勤務しており、1日あたり約3時間、法定の8時間を超える労働をしていました。しかし、会社から残業代名目で支払われていたものがなく、T.Nさんが管理監督者であることを理由に、残業代の支給をしていない状況でした。
弁護士が交渉を開始すると、勤務先からは、管理監督者であることや、就業規則上にある手当を残業代とする旨規定されているといった主張をしてきました。
しかし、到底管理監督者と言えるような勤務状況ではなかったこと、残業代とする規定はあるものの、実際に算定しようとすると、具体的な算定が不可能な規定方法でした。
ある手当を「残業手当とする」旨の規定がなされていたとしても、その計算方法や具体的にどの程度の残業時間に対応するのかが明らかでなければ、有効な規定とはなりません。
今回のケースでは、会社側の管理監督者に関する理解が不足し、単に残業代を支払わなくてよいという誤った解釈をしていたことや、就業規則の規定にも問題があったため、これらの点を指摘して交渉を進めることとしました。
就業規則の規定が有効とはいえず、また、実際に残業代についてはほとんど支払っていなかったという状況であると考えていたため、単純な計算結果に基づく請求となりました。
相手方企業の代理人弁護士も、勤務先の取り扱い状況や、就業規則の規定を確認し、法的に効果的な反論が難しいということを理解していたと思われ、一応の反論はなされたものの、争点として正面から争わなければならないような反論ではありませんでした。
正面から争うべき争点がほぼなかったことから、法的な争点に関するやり取りは多くなく、交渉のほとんどは金額のやり取りに終始しました。
当然、勤務先はできるだけ払いたくない、ご依頼者はできるだけもらいたい、という考えですので、勤務先の払える金額、ご依頼者のT.Nさんが納得できる金額を交渉で詰めていき、最終的に合意することとなりました。
納得できない金額しか提示されないのであれば、当然訴訟も選択肢となる事案でしたが、訴訟は時間がかかることや、ご依頼者にとってもどこに不利な点があるかわからない、という側面もあることから、交渉での解決に至りました。