残業代請求に関する解決事例 07
残業代請求に関する解決事例 07
解決事例07
解説弁護士
谷 靖介
ご依頼者 M.Hさん
ご依頼者のM.Hさんは、接客業として相手方の企業で2年ほど勤務してきました。勤務先は複数の店舗を運営しており、M.Hさんはその内の1店舗で勤務されていました。
M.Hさんは勤務先の店舗で、午前10時~午後7時まで勤務することが多く、お客様が来店するとすぐ接客にあたるため、休憩時間も決まった時間にとることができなかったとのことでした。
就職後2年ほど勤務をしていたものの、健康上の理由や職場環境、上司との関係等に悩まれ、やむなく退職されることになりました。
そして、M.Hさんは退職後に残業代請求をしたいと相談にいらっしゃいました。
相手方勤務会社では、日給制による給与制度が定められていました。この点、勤務先店舗の営業時間からすると、1日10時間以上の労働時間があることは確実で、少なくとも1日2~3時間の残業時間が発生しているとのことでした。
しかし、勤務先会社から残業に対する割増賃金は、これまで支払われていませんでした。また、未払い残業代を請求したところ、勤務会社は、支払われた日給には、残業時間に対する割増賃金が含まれていると主張してきました。
まずは、相手方(勤務先会社)に対し、内容証明郵便で受任通知を送付しました。
残業代請求権の時効期間は2年間(受任当時)と比較的短い期間になっています。時効による消滅を防ぐためには、2年経過しない間に、相手方に催告(残業代請求の意思表示)をしておく必要があります。
受任通知を送付後、相手方の勤務先代表者と電話で協議し、ご依頼者のM.Hさんが勤務していた当時のシフト表を開示するよう要請しました。
残業代を計算する際には、労働時間を立証できる資料(タイムカード等)が必要です。これらの資料について、ご依頼者が事前に収集して手元にある状態であればよいですが、証拠資料がないようなケースでは、受任後に使用者側に対して開示請求することもあります。
ただ、悪質な使用者の場合、労働時間に関する資料を開示しないことがありますので、残業代の請求を考えている方は、ご自身でも労働時間に関する記録や証拠は保存しておくとよいでしょう。本件では、相手方から任意にシフト表(過去2年分)を開示してもらうことができました。
事案ごとに1日あたりの所定労働時間、年間休日数、深夜・休日労働の有無、給与の条件等が異なりますので、勤務先の労働条件をM.Hさんからヒアリングし、個別に計算を行いました。残業代の計算作業完了後、相手方との交渉を開始しました。
交渉での初回提案に対して、相手方より納得の行く十分な回答が返ってきませんでした。
しかし、相手方会社の代表者と本件に関する見通しを説明し、法的根拠をもとに粘り強く説得に努めた結果、交渉段階で解決するのであれば、相応の金額を支払うとの回答を引き出すことができ、和解が成立しました。