残業代請求に関する解決事例 05

解決事例05

長時間にわたる時間外労働にも関わらず、残業手当が一部支給だったため未払い残業代を請求、労働審判により和解した事案

谷 靖介
解説弁護士
谷 靖介
業種
サービス業
解決方法
労働審判
ご依頼者
S.Tさん、S.Kさん
受任年
2018年
解決年
2019年
1日の平均残業時間
5時間
回収金額
約500万円

事例の概要

ご依頼者のS.TさんとS.Kさんは、事業所外での外回りが多い業務を担当されていました。

業務多忙と人員配置の問題から、お二人とも時間外労働・休日労働を長時間にわたってされており、繁忙期は残業時間が月100時間を超えることもありました。

しかし、会社からは残業手当が一部しか支払われず、適切な残業代が支払われていませんでした。

解決に向けてのポイント

ご依頼者のS.TさんとS.Kさんは、これまで会社の就業規則や賃金規定をみたことがなく、残業代に関する規定があるのか全く把握されていませんでした。また、会社からは一定の残業手当以外に残業代はないと説明されていたとのことでした。

ご依頼者の業務内容からすると、営業所外での業務も多いことから、事業場外みなし労働時間制が採用されている可能性があるのではないか、また固定残業代に関する定めが置かれているのではないかと思われました。

解決に向けた交渉の経過

S.TさんとS.Kさんの退職後、本格的な情報収集に着手しました。相手方となる会社に対し、残業代を請求する通知を送り、タイムカードや就業規則等の関係資料の開示を求めました。

その後、相手方に代理人が就任し、関係資料の開示を受けることができました。そして、就業規則等を確認したところ、やはり事業場外みなし労働時間制に関する規定が置かれており、固定残業代に関する規定も置かれていました。

もっとも、事業場外みなし労働時間制を適用するには、本当に労働者の労働時間を把握することが困難といえるのか厳格にチェックする必要があります。

本件では、外出するスケジュールを会社が管理しており、外出先でも携帯電話等で業務状況を報告するなどの実態から、みなし労働時間制の適用は困難と思われました。

また、固定残業代についても、残業時間の実態から乖離した金額しか支払われておらず、残業代として有効であるのかについても、疑問が残るものでした。

当事務所が関わった結果

まずは、開示されたタイムカードをもとに、最大限ご依頼者に有利となるように、残業代計算を行います。その上で、事業場外みなし労働時間制の問題点や固定残業代の問題点を指摘して相手方代理人と交渉を行いました。

この点、固定残業代にはいくつかパターンがあります。支給のされ方や名目等から他の給与と区別されうるのかによって、残業代の支払いとして有効なのかについて見通しも変わってきます。固定残業代の有効性に関しては事件ごとに事情が異なるため、個別に弁護士に分析してもらうのがよいでしょう。

本件では、交渉段階ではスムーズな進展が見込めなかったため、ご依頼者であるS.Tさん、S.Kさんと協議し、労働審判を行うことにしました。

労働審判は少ない期日で早期解決を図りやすいメリットもありますが、綿密な証拠調べを要する場合には向きにくい、最終的な解決にならないこともあるなどのデメリットもあります。

訴訟も労働審判も裁判所を介した手続きではありますが、それぞれ手続きの特性があり、どのような手続き選択がよいのかは、事案やご依頼者の希望を踏まえて事案ごとに検討する必要があります。もしどちらの手続きがよいのかお悩みの場合は、弁護士に相談されることをおすすめします。

労働審判では決着がつかないことも懸念されましたが、本件では、幸いにして第1回目の期日にて和解解決をすることができました。

争点に関する裁判所側から率直に明快な説明をいただけたことも早期の解決に役立ったかと思います。

ご依頼者様からのコメント

この度は色々と力になってくださりありがとうございました。本当に助かりました。

もしまた何かありましたらご相談したいと思います。その時はどうぞよろしくお願いします。

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