残業代請求に関する解決事例 01

解決事例01

強引な退職勧奨を進めてきた会社に対して未払い残業代を請求し、約500万円を回収して解決した事案

谷 靖介
担当弁護士
谷 靖介
業種
飲食業
解決方法
示談交渉
ご依頼者
T.Yさん
受任年
2018年
解決年
2018年
1日の平均残業時間
6時間
回収金額
約500万円

事例の概要

ご依頼者のT.Yさんは、複数の飲食店舗を経営する会社に所属し、ある店舗の料理長を務めていました。所属社員数名の店舗のため、料理長という立場でしたが、食材の仕入れや開店準備のための仕込みや調理などを行い、つねに早朝から深夜まで、長時間の深夜時間外労働を行っていました。

その後、会社側の経営判断で店舗が閉鎖となり、会社が強引な退職勧奨を進めてきたことをきっかけに、割増賃金(残業代)請求を考え、当事務所へご相談にこられました。

解決に向けてのポイント

お話を伺うと、まず、勤務先に対する「割増賃金の請求をするタイミング」の検討が必要でした。

ご相談時点では、退職直後のため「退職手続きに関する書類」の交付がなく、また「給料の未払い」もありました。そのため、割増賃金の請求を行った場合に、会社側がこれらの手続きに非協力的となる可能性があったため、請求タイミングについてはT.Yさんと連絡をとりつつ、適切な請求タイミングを検討しながら、残業代請求を行うことが必要でした。

次に、割増賃金請求にあたり、管理監督者であると主張される可能性がありました。

法律上「管理監督者」である場合には、割増賃金などの支払いは不要とされています。T.Yさんは料理長という立場でしたが、出退勤の自由や人事の裁量などがなければ、「管理監督者」には当たりません。

そのため、実際の勤務内容・状況などについてしっかりヒアリングをし、管理監督者にあたらないことの確認と、「残業代」が発生するかどうかを検討する必要もありました。

これらの状況をふまえ、証拠収集をどのように進めるかを検討しました。

T.Yさんは、タイムカードで出退勤を記録していました。しかし、他の社員が代わりにT.Yさんのタイムカードの打刻をしていたため、T.Yさんの実際の労働時間がタイムカードに反映されていませんでした。

例えば、代わりに打刻をしていた社員の出退勤時間と料理長であるT.Yさんの出退勤時間が違うことも多く、T.Yさんの実際の勤務状況とタイムカードにズレが生じていました。これら証拠の不十分性について、T.Yさんのご家族とのSNS(LINE)のやり取りなど、他の資料で証拠を補う必要性が高いことを、ご相談時にアドバイスさせていただきました。

解決に向けた交渉の経過

受任後、「未払い残業代」の支払いを求める書面を作成し、内容証明郵便にて会社に対し行ったところ、会社側に代理人として弁護士がつき、反論の書類が届きました。

勤務先からは、「料理長は管理監督者にあたり、割増賃金の支払い義務はない」との主張がなされました。

これに対しては、当事務所から反論を行いました。事実上、料理長であるT.Yさんに出退勤の自由や人事の裁量権はなく、給与面でも管理監督者に相応しい金額が支払われていなかったことを、法律面から「管理監督者には当たらない」と、しっかり主張していきました。

管理監督者であるかどうかについては、次に述べる項目にて判断されます。

  • 経営者から一定の権限を与えられている(経営者と一体的な立場で仕事をしている)
  • 勤務時間について厳格な制限がない
  • その地位にふさわしい待遇がなされている

そのため、これらについて確認・検討したところ、T.Yさんには特に裁量権と呼べるものはなく、T.Yさんのスキルや経験を考慮すると、飲食業界の賃金水準を考慮しても低い賃金である状況から、しっかり反論を行いました。

当事務所が関わった結果

示談交渉により、受任から約5か月での解決となりました。管理監督者に対する反論を法的根拠に基づいて行い、証拠が少ない中でパターンを分け、残業代計算をしっかり行いました。また、相手方である勤務先からタイムカードも取り寄せ、残業代の計算を進めました。タイムカード自体、正確な出退勤の履歴がなされていないものでしたが、T.Yさんとご家族の方のメールの履歴(LINE)などをもとに、計算を行いました。

勤務形態によっては、雇用契約時の内容と実情の勤務形態が異なっている場合もあり、そのような場合には、複数パターンで残業代を計算して検討するなど、丁寧にサポートいたしました。

示談内容は、勤務先の経営状況の問題があり、未払い残業代を複数回に分けて支払うという示談内容でした。

分割払いがしっかりとなされない場合、弁護士による改めての訴訟、強制執行などの手続きもご相談できますので、万一の際もしっかり対応いたします。

ご依頼者様からのコメント

示談後に「お任せして、心からよかったと思っております」とのお言葉をいただくことができました。

相手方に弁護士がついたことで、法律に基づいた主張に対する反論をしっかりと行う必要性がありました。また、勤務状況を証明する証拠が少ない中で、2年分の残業代計算を行わなければならず、今回のケースにおいては、個人の方では対応が難しい場面が多くあり、弁護士としてしっかりサポートさせていただけたのではないかと思います。

未払い残業代請求の適切な解決のため、会社と話を進めていく中で想定される「交渉上の問題点」「必要な証拠」「残業代の概算」など、初期の段階で認識しておくことは大切です。未払い残業代でお悩みの場合、まずはお気軽に当事務所までご相談ください。

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