後遺障害等級認定を受けた場合の給付内容・補償金額について
労働基準監督署へ障害(補償)給付の申請を行い、後遺障害等級が認定されると、労災保険より等級に応じた給付金を受け取ることができます。
障害(補償)給付については、障害の程度により大きく2つに分けることができ、支給される給付金の内容には違いがあります。
- 障害等級第1級から第7級に該当:障害(補償)年金、障害特別支給金、障害特別年金
- 障害等級第8級から第14級に該当:障害(補償)一時金、障害特別支給金、障害特別一時金
第8級から第14級は、障害(補償)一時金、障害特別支給金、障害特別一時金の3つがあり、それぞれ等級に応じた金額が一度支払われて終わりとなります。
第1級から第7級については、障害特別支給金こそ等級に応じた金額が一度のみの支給となりますが、障害(補償)年金、障害特別年金については、等級に応じた金額が毎年(6期に分けて支給)支払われます。
ここでは、後遺障害の等級内容や後遺障害等級の補償内容、障害(補償)給付の計算方法について説明します。
- この記事の内容
障害等級それぞれの内容と補償について
労災保険の後遺障害には1〜14級の等級が定められ、第1級が最も重く、第14級が最も軽い障害となっています。労働能力喪失率(労働能力の低下がどの程度であるかを数値化したもの)を基に、障害の状態に応じた等級の区分けがされており、それぞれの等級ごとに給付額が決まっています。なお、後遺障害等級が7級以上で年金の給付を受けている場合、毎年定期報告書と呼ばれる受給者の現状を報告する書類を提出しなければなりません。それでは、等級ごとの補償内容について見ていきましょう。
障害等級14級の場合
後遺障害等級14級に該当する身体・精神に関する認定範囲や補償内容を表でまとめました。
障害等級14級の認定範囲
給付内容 | 身体障害 | |
---|---|---|
給付基礎日額の56日分 | 1 一眼のまぶたの一部に欠損を残し、又はまつげはげを残すもの | |
2 三歯以上に対し歯科補てつを加えたもの | ||
2の2 一耳の聴力が一メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの | ||
3 上肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの | ||
4 下肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの | ||
5 削除 | ||
6 一手の母指以外の手指の指骨の一部を失ったもの | ||
7 一手の母指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなったもの | ||
8 一足の第三の足指以下の一又は二の足指の用を廃したもの※ | ||
9 局部に神経症状を残すもの | ||
10 削除 |
- 用を廃したものとは、対象の部位が完全に動かないもしくはわずかに動くが限りなく動かない状態に近いことを指します。
障害等級14級の補償内容
障害(補償)給付 | 一時金 | 給付基礎日額の56日分 |
---|---|---|
障害特別支給金※ | 一時金 | 8万円 |
障害特別一時金 | 一時金 | 算定基礎日額の56日分 |
- 同一の災害により、既に傷病特別支給金を受けた場合は、その差額となります。
障害等級13級の場合
後遺障害等級13級に該当する身体・精神に関する認定範囲や補償内容を表でまとめました。
障害等級13級の認定範囲
給付内容 | 身体障害 |
---|---|
給付基礎日額の101日分 | 1 一眼の視力が〇・六以下になったもの |
2 一眼に半盲症、視野狭さく又は視野変状を残すもの | |
2の2 正面視以外で複視を残すもの | |
3 両眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの | |
3の2 五歯以上に対し歯科補てつを加えたもの | |
3の3 胸腹部臓器の機能に障害を残すもの | |
4 一手の小指を廃したもの | |
5 一手の母指の指骨の一部を失ったもの | |
6 削除 | |
7 削除 | |
8 一下肢を一センチメートル以上短縮したもの | |
9 一足の第三の足指以下の一又は二の足指を失ったもの | |
10 一足の第二の足指の用を廃したもの、第二の足指を含み二の足指の用を廃したもの又は第三の足指以下の三の足指の用を廃したもの |
障害等級13級の補償内容
障害(補償)給付 | 一時金 | 給付基礎日額の101日分 |
---|---|---|
障害特別支給金※ | 一時金 | 14万円 |
障害特別一時金 | 一時金 | 算定基礎日額の101日分 |
- 同一の災害により、既に傷病特別支給金を受けた場合は、その差額となります。
障害等級12級の場合
後遺障害等級12級に該当する身体・精神に関する認定範囲や補償内容を表でまとめました。
障害等級12級の認定範囲
給付内容 | 身体障害 |
---|---|
給付基礎日額の156日分 | 1 一眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの |
2 一眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの | |
3 七歯以上に対し歯科補てつを加えたもの | |
4 一耳の耳かくの大部分を欠損したもの | |
5 鎖骨、胸骨、ろく骨、肩こう骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの | |
6 一上肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの | |
7 一下肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの | |
8 長管骨に変形を残すもの | |
8の2 一手の小指を失つたもの | |
9 一手の示指、中指又は環指の用を廃したもの | |
10 一足の第二の足指を失ったもの、第二の足指を含み二の足指を失ったもの又は第三の足指以下の三の足指を失ったもの | |
11 一足の第一の足指又は他の四の足指の用を廃したもの | |
12 局部にがん固な神経症状を残すもの | |
13 削除 | |
14 外貌に醜状を残すもの |
障害等級12級の補償内容
障害(補償)給付 | 一時金 | 給付基礎日額の156日分 |
---|---|---|
障害特別支給金※ | 一時金 | 20万円 |
障害特別一時金 | 一時金 | 算定基礎日額の156日分 |
- 同一の災害により、既に傷病特別支給金を受けた場合は、その差額となります。
障害等級11級の場合
後遺障害等級11級に該当する身体・精神に関する認定範囲や補償内容を表でまとめました。
障害等級11級の認定範囲
給付内容 | 身体障害 |
---|---|
給付基礎日額の223日分 | 1 両眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの |
2 両眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの | |
3 一眼のまぶたに著しい欠損を残すもの | |
3の2 十歯以上に対し歯科補てつを加えたもの | |
3の3 両耳の聴力が一メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの | |
4 一耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの | |
5 せき柱に変形を残すもの | |
6 一手の示指、中指又は環指を失ったもの | |
7 削除 | |
8 一足の第一の足指を含み二以上の足指の用を廃したもの | |
9 胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの |
障害等級11級の補償内容
障害(補償)給付 | 一時金 | 給付基礎日額の223日分 |
---|---|---|
障害特別支給金※ | 一時金 | 29万円 |
障害特別一時金 | 一時金 | 算定基礎日額の223日分 |
- 同一の災害により、既に傷病特別支給金を受けた場合は、その差額となります。
障害等級10級の場合
後遺障害等級10級に該当する身体・精神に関する認定範囲や補償内容を表でまとめました。
障害等級10級の認定範囲
給付内容 | 身体障害 |
---|---|
給付基礎日額の302日分 | 1 一眼の視力が〇・一以下になったもの |
1の2 正面視で複視を残すもの | |
2 そしゃく※又は言語の機能に障害を残すもの | |
3 十四歯以上に対し歯科補てつを加えたもの | |
3の2 両耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの | |
4 一耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの | |
5 削除 | |
6 一手の母指又は母指以外の二の手指の用を廃したもの | |
7 一下肢を三センチメートル以上短縮したもの | |
8 一足の第一の足指又は他の四の足指を失ったもの | |
9 一上肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの | |
10 一下肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの |
- そしゃくとは、摂取した食べ物を歯でよく噛み、味わうことを指します。
障害等級10級の補償内容
障害(補償)給付 | 一時金 | 給付基礎日額の302日分 |
---|---|---|
障害特別支給金※ | 一時金 | 39万円 |
障害特別一時金 | 一時金 | 算定基礎日額の302日分 |
- 同一の災害により、既に傷病特別支給金を受けた場合は、その差額となります。
障害等級9級の場合
後遺障害等級9級に該当する身体・精神に関する認定範囲や補償内容を表でまとめました。
障害等級9級の認定範囲
給付内容 | 身体障害 |
---|---|
給付基礎日額の391日分 | 1 両眼の視力が〇・六以下になったもの |
2 一眼の視力が〇・〇六以下になったもの | |
3 両眼に半盲症、視野狭さく又は視野変状を残すもの | |
4 両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの | |
5 鼻を欠損し、その機能に著しい障害を残すもの | |
6 そしゃく及び言語の機能に障害を残すもの | |
6の2 両耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの | |
6の3 一耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり、他耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの | |
7 一耳の聴力を全く失ったもの | |
7の2 神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの | |
7の3 胸腹部臓器の機能に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの | |
8 一手の母指又は母指以外の二の手指を失ったもの | |
9 一手の母指を含み二の手指又は母指以外の三の手指の用を廃したもの | |
10 一足の第一の足指を含み二以上の足指を失ったもの | |
11 一足の足指の全部の用を廃したもの | |
11の2 外貌に相当程度の醜状を残すもの | |
12 生殖器に著しい障害を残すもの |
障害等級9級の補償内容
障害(補償)給付 | 一時金 | 給付基礎日額の391日分 |
---|---|---|
障害特別支給金※ | 一時金 | 50万円 |
障害特別一時金 | 一時金 | 算定基礎日額の391日分 |
- 同一の災害により、既に傷病特別支給金を受けた場合は、その差額となります。
障害等級8級の場合
後遺障害等級8級に該当する身体・精神に関する認定範囲や補償内容を表でまとめました。
障害等級8級の認定範囲
給付内容 | 身体障害 |
---|---|
給付基礎日額の503日分 | 1 一眼が失明し、又は一眼の視力が〇・〇二以下になったもの |
2 せき柱に運動障害を残すもの | |
3 一手の母指を含み二の手指又は母指以外の三の手指を失ったもの | |
4 一手の母指を含み三の手指又は母指以外の四の手指の用を廃したもの | |
5 一下肢を五センチメートル以上短縮したもの | |
6 一上肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの | |
7 一下肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの | |
8 一上肢に偽関節を残すもの | |
9 一下肢に偽関節を残すもの | |
10 一足の足指の全部を失ったもの |
障害等級8級の補償内容
障害(補償)給付 | 一時金 | 給付基礎日額の503日分 |
---|---|---|
障害特別支給金※ | 一時金 | 65万円 |
障害特別一時金 | 一時金 | 算定基礎日額の503日分 |
- 同一の災害により、既に傷病特別支給金を受けた場合は、その差額となります。
障害等級7級の場合
後遺障害等級7級に該当する身体・精神に関する認定範囲や補償内容を表でまとめました。
障害等級7級の認定範囲
給付内容 | 身体障害 |
---|---|
当該障害の存する期間1年につき給付基礎日額の131日分 | 1 一眼が失明し、他眼の視力が〇・六以下になったもの |
2 両耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの | |
2の2 一耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの | |
3 神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの | |
4 削除 | |
5 胸腹部臓器の機能に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの | |
6 一手の母指を含み三の手指又は母指以外の四の手指を失ったもの | |
7 一手の五の手指又は母指を含み四の手指の用を廃したもの | |
8 一足をリスフラン関節以上で失ったもの | |
9 一上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの | |
10 一下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの | |
11 両足の足指の全部の用を廃したもの | |
12 外貌に著しい醜状を残すもの | |
13 両側のこう丸を失ったもの |
障害等級7級の補償内容
障害(補償)給付 | 年金 | 給付基礎日額の131日分 |
---|---|---|
障害特別支給金※ | 一時金 | 159万円 |
障害特別年金 | 年金 | 算定基礎日額の131日分 |
- 同一の災害により、既に傷病特別支給金を受けた場合は、その差額となります。
障害等級6級の場合
後遺障害等級6級に該当する身体・精神に関する認定範囲や補償内容を表でまとめました。
障害等級6級の認定範囲
給付内容 | 身体障害 |
---|---|
当該障害の存する期間1年につき給付基礎日額の156日分 | 1 両眼の視力が〇・一以下になったもの |
2 そしゃく又は言語の機能に著しい障害を残すもの | |
3 両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの | |
3の2 一耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの | |
4 せき柱に著しい変形又は運動障害を残すもの | |
5 一上肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの | |
6 一下肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの | |
7 一手の五の手指又は母指を含み四の手指を失ったもの |
障害等級6級の補償内容
障害(補償)給付 | 年金 | 給付基礎日額の156日分 |
---|---|---|
障害特別支給金※ | 一時金 | 192万円 |
障害特別年金 | 年金 | 算定基礎日額の156日分 |
- 同一の災害により、既に傷病特別支給金を受けた場合は、その差額となります。
障害等級5級の場合
後遺障害等級5級に該当する身体・精神に関する認定範囲や補償内容を表でまとめました。
障害等級5級の認定範囲
給付内容 | 身体障害 |
---|---|
当該障害の存する期間1年につき給付基礎日額の184日分 | 1 一眼が失明し、他眼の視力が〇・一以下になったもの |
1の2 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの | |
1の3 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの | |
2 一上肢を手関節以上で失ったもの | |
3 一下肢を足関節以上で失ったもの | |
4 一上肢の用を全廃したもの | |
5 一下肢の用を全廃したもの | |
6 両足の足指の全部を失ったもの |
障害等級5級の補償内容
障害(補償)給付 | 年金 | 給付基礎日額の184日分 |
---|---|---|
障害特別支給金※ | 一時金 | 225万円 |
障害特別年金 | 年金 | 算定基礎日額の184日分 |
- 同一の災害により、既に傷病特別支給金を受けた場合は、その差額となります。
障害等級4級の場合
後遺障害等級4級に該当する身体・精神に関する認定範囲や補償内容を表でまとめました。
障害等級4級の認定範囲
給付内容 | 身体障害 |
---|---|
当該障害の存する期間1年につき給付基礎日額の213日分 | 1 両眼の視力が〇・〇六以下になったもの |
2 そしゃく及び言語の機能に著しい障害を残すもの | |
3 両耳の聴力を全く失ったもの | |
4 一上肢をひじ関節以上で失ったもの | |
5 一下肢をひざ関節以上で失ったもの | |
6 両手の手指の全部の用を廃したもの | |
7 両足をリスフラン関節以上で失ったもの |
障害等級4級の補償内容
障害(補償)給付 | 年金 | 給付基礎日額の213日分 |
---|---|---|
障害特別支給金※ | 一時金 | 264万円 |
障害特別年金 | 年金 | 算定基礎日額の213日分 |
- 同一の災害により、既に傷病特別支給金を受けた場合は、その差額となります。
障害等級3級の場合
後遺障害等級3級に該当する身体・精神に関する認定範囲や補償内容を表でまとめました。
障害等級3級の認定範囲
給付内容 | 身体障害 |
---|---|
当該障害の存する期間1年につき給付基礎日額の245日分 | 1 一眼が失明し、他眼の視力が〇・〇六以下になったもの |
2 そしゃく又は言語の機能を廃したもの | |
3 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの | |
4 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの※ | |
5 両手の手指の全部を失ったもの |
- 終身労務に服することができないとは、障害により労働力を喪失またはそれに近い制限を受け、仕事をすることができない状態を指します。
障害等級3級の補償内容
障害(補償)給付 | 年金 | 給付基礎日額の245日分 |
---|---|---|
障害特別支給金※ | 一時金 | 300万円 |
障害特別年金 | 年金 | 算定基礎日額の245日分 |
- 同一の災害により、既に傷病特別支給金を受けた場合は、その差額となります。
障害等級2級の場合
後遺障害等級2級に該当する身体・精神に関する認定範囲や補償内容を表でまとめました。
障害等級2級の認定範囲
給付内容 | 身体障害 |
---|---|
当該障害の存する期間1年につき給付基礎日額の277日分 | 1 一眼が失明し、他眼の視力が〇・〇二以下になったもの |
2 両眼の視力が〇・〇二以下になったもの | |
2の2 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの | |
2の3 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの | |
3 両上肢を手関節以上で失ったもの | |
4 両下肢を足関節以上で失ったもの |
障害等級2級の補償内容
障害(補償)給付 | 年金 | 給付基礎日額の277日分 |
---|---|---|
障害特別支給金※ | 一時金 | 320万円 |
障害特別年金 | 年金 | 算定基礎日額の277日分 |
- 同一の災害により、既に傷病特別支給金を受けた場合は、その差額となります。
障害等級1級の場合
後遺障害等級1級に該当する身体・精神に関する認定範囲や補償内容を表でまとめました。
障害等級1級の認定範囲
給付内容 | 身体障害 |
---|---|
当該障害の存する期間1年につき給付基礎日額の313日分 | 1 両眼が失明したもの |
2 そしゃく及び言語の機能を廃したもの | |
3 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの | |
4 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの | |
5 削除 | |
6 両上肢をひじ関節以上で失ったもの | |
7 両上肢の用を全廃したもの | |
8 両下肢をひざ関節以上で失ったもの | |
9 両下肢の用を全廃したもの |
障害等級1級の補償内容
障害(補償)給付 | 年金 | 給付基礎日額の313日分 |
---|---|---|
障害特別支給金※ | 一時金 | 342万円 |
障害特別年金 | 年金 | 算定基礎日額の313日分 |
- 同一の災害により、既に傷病特別支給金を受けた場合は、その差額となります。
障害(補償)給付金の計算方法
障害等級14級を例に、支給額の計算方法についてみていきましょう。
- 【例】
- 月30万円の賃金を受け、賃金締切日が毎月末日で労災事故が8月に発生、後遺障害14級と認定された。また、事故が発生した日以前の1年間、ボーナスは60万円支給されていた。
給付基礎日額の計算
まず、次の計算式によって、給付基礎日額を算出します。
給付基礎日額(労働基準法の「平均賃金」に相当する金額)とは、原則として業務上または通勤による負傷や死亡の原因となった事故が発生した日、または医師の診断によって疾病の発生が確定した日(ただし、賃金締切日が定められているときは、傷病発生日の直前の賃金締切日)の直前3か月間に、被災された労働者に対して支払われた賃金の総額(賞与や臨時に支払われた賃金を除く)を、その期間の歴日数※で割った1日当たりの賃金額になります。
- 歴日数とは、土日祝日を含めたその月のカレンダーの日数を指します。
例:4月の場合:30日、8月の場合:31日、2月の場合:28日(閏年は29日)
関連リンク
[本例での給付基礎日額の計算]
30万円×3か月÷92日※=9,783円(9,782円60銭ですが、1円未満の端数は切り上げ)
92日=直前3か月間の歴日数{(5月:31日)+(6月:30日)+(7月:31日)}
給付基礎日額=9,783円
障害(補償)給付/障害等級14級の計算
給付基礎日額がわかりましたので、この金額を障害(補償)給付の障害等級14級の条件に当てはめ、給付額を計算します。
- 障害(補償)給付=給付基礎日額の56日分
[本例での障害(補償)給付金の計算]
9,783円×56日※=547,848円
- 等級ごとに定められた日数なので、14級の場合56日となります。
障害(補償)給付=547,848円
つまり、後遺障害等級認定が14級の場合、障害(補償)給付は一時金(一回のみ)として547,848円受け取ることができます。
障害特別支給金(後遺障害等級認定14級の場合)
本例では、後遺障害等級認定が14級ですので、障害特別支給金は8万円の支給となります。
障害特別一時金/障害等級14級の計算
続いて、後遺障害等級認定が14級の場合の障害特別一時金の計算をします。算定基礎日額とは、原則として、業務上または通勤による負傷や死亡の原因である事故が発生した日または診断によって病気にかかったことが確定した日以前1年間に、被災労働者が事業主から受けた特別給与の総額(算定基礎年額)を365で割った額です。特別給与とは、給付基礎日額の算定の基礎から除外されているボーナスなど3か月をこえる期間ごとに支払われる賃金を指し、臨時に支払われた賃金は含まれません。
また、特別給与の総額が給付基礎年額(給付基礎日額の365倍に相当する額)の20%に相当する額を上回る場合、給付基礎年額の20%に相当する額が算定基礎年額となります。ただし、150万円が限度額となります。
- 障害特別一時金=算定基礎日額の56日分
[本例での算定基礎日額の計算]
まず、労災事故が起こった日から1年前までに、支給されたボーナスの総額を確認します。本例の場合60万円ですので、続いて算定基礎日額を計算します。
60万円÷365=1,644円(1,643円83銭ですが、1円未満の端数は切り上げ)
算定基礎日額=1,644円
算定基礎日額に56日分をかけます。
1,644円(算定基礎日額)×56=92,064円
障害特別一時金=92,064円
つまり、後遺障害等級認定が14級の場合、障害特別給付金は一時金(一回のみ)として92,064円受け取ることができます。
ここまで例題に沿って、障害(補償)給付金・障害特別支給金・障害特別一時金それぞれの金額を出してきましたが、それぞれを合計した金額が受け取れる補償になります。
547,848円(障害(補償)給付)+80,000円(障害特別支給金)+92,064円(障害特別一時金)=719,912円
つまり、後遺障害等級14級における本例題では、719,912円の障害(補償)給付を受け取れることになります。
計算は複雑に見えますが、他の等級でも後遺障害等級ごとに定められた日数をかけあわせていくことで算出することができます。
このページの表は、「労災保険 障害(補償)給付の請求手続」(厚生労働省)を加工して作成
労災事故による損害賠償請求は弁護士へご相談ください
この記事の監修
小湊 敬祐
Keisuke Kominato
- 弁護士
- 上野法律事務所
- 東京弁護士会所属
労働災害をはじめ、交通事故、未払い残業代請求や相続紛争業務を中心に、ご依頼者の心情に寄り添いながら、さまざまな法律問題でお悩みの方に対し、解決にむけたサポートを行っている。