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労働災害(労災)に関する基礎知識

労災で適正な後遺障害等級認定を受けるための流れ

【労災事故一例】

業務または通勤が原因となるケガを負い、治療を継続してきたが、しびれや痛み、腕などの関節の可動領域に制限がかかる状態となった。主治医からは「これ以上治療を続けてもよくなる見込みがない」との判断を受け、身体に一定の障害が残る状態で症状固定と判断された。

このような労災事故の場合、どのような補償を受けられるのでしょうか。
まず、一例の本文で注意すべき文言があります。「身体に一定の障害が残った状態」ですが、これは後遺障害と呼ばれ、事故が原因でケガや病気が治ったあとも、以前の健康な状態に戻らず身体に残った障害を指します。症状固定と診断された場合、医師へ後遺障害診断書の作成をお願いすることになります。
「症状固定」とは、傷病の症状が安定し、医学上一般に認められた医療を行っても、その医療効果が期待できなくなった状態を指します。
労災事故によるケガが原因で事故前の健康な状態に戻らない状態となり、医師より症状固定と認められた場合、後遺障害の認定を受けられる可能性があります。
この場合、後遺障害認定の申請を行い、等級認定されることで、等級に応じた補償を受けることできます。障害(補償)給付を受けるには、後遺障害等級(1〜14級)のいずれかに該当していなければなりません。
ここでは、労災事故で後遺障害が残った場合に、適正な後遺障害等級認定を受けるための申請手続きの流れや認定を受けるためのポイントについて説明します。

この記事の内容

適切な後遺障害等級認定を受けるには

労災事故でケガを負い、事故前の健康な状態に戻らず症状固定となった場合、労働基準監督署へ障害(補償)給付の申請を行い、後遺障害等級の認定を受けることで、等級に応じた補償を受けることができます。適切な補償を受けるには、ケガの治療から申請の手続きまで、理解しておくべきポイントがいくつもありますので、詳しくご紹介します。

症状固定まできちんと治療を継続する

労災事故でケガを負った場合、まずは治療を最優先してください。担当医師の治療方針を確認し、医師の指示に従って症状固定まで継続してきちんと治療を受けるようにしてください。症状固定は医師が判断しますので、ご自身の判断で治療を怠ることは避けてください。治療を怠ると、ケガや病気の症状が軽いと判断され、後遺障害等級認定を受けにくくなります。
また、治療において必要な検査はきちんと受けるようにしてください。CTやMRI、レントゲンや心電図検査など、医学的な根拠に基づいた情報をきちんと収集しておくことで、ケガによる異常の原因を証明することにつながり、後遺障害等級認定を受けられる可能性が高まります。

労災事故による後遺障害の因果関係を証明する

労災事故によるケガで治療を行うことと同時に、そのケガが労災によるものであることをきちんと証明することも大切です。後遺障害にあたる症状があったとしても、その症状が労災とは関係のないものと判断されると後遺障害等級認定を受けることができません。
特に問題となるのが、被災労働者に持病(既往症)があるケースです。後遺障害の原因が持病にあると判断されれば後遺障害等級認定を受けることができなくなりますので、持病による影響がないことを説明できるようにしなければなりません。持病と後遺障害の因果関係については医師の見解を伺いながら、関係がない、または多少関係はあるが持病の影響は少ないなど、そのことを裏付ける根拠を医師からきちんと説明をうけ、労働基準監督署に説明できるよう準備しておきます。

労働者災害補償保健診断書の作成を担当医師に依頼する

担当医師より症状固定の診断を受けたら「労働者災害補償保険診断書」を渡し、診断内容を記入してもらい、必要に応じてレントゲンやCT、MRIなどの画像も受け取ってください。
なお、診断書料を労基署に請求する場合、療養補償給付たる療養の費用請求書(様式第7号)または、療養給付たる療養の費用請求書(様式第16号の5)を提出する準備も行います。

  • 労災保険で給付される診断書料については4,000円と規定されているため、この金額を超える診断書料の差額は自己負担となりますのでご注意ください。

後遺障害等級認定は医師の診断書が重要

後遺障害の認定は、提出先の労働基準監督署長の判断により認定の可否が決まるため、医師の診断書は大変重要です。労基署は、医師の診断書に基づいて後遺障害の認定だけでなく、障害等級の認定にも関わるため、診断書の内容に過不足がないか、被災労働者やご家族の方もよく確認し、注意を払う必要があります。
会社側が労災申請に協力的であれば、会社が提携している社労士や労務管理担当者と内容の確認をしながら診断書の記載や関連資料に問題がないかをチェックできますが、万一会社が労災申請に非協力的なときは、労災に詳しい弁護士や専門家に相談することも検討してください。
後遺障害等級がひとつ違うだけで受けられる補償内容が大きく変わりますので、診断書作成が極めて重要であることを認識しておきましょう。

診断書の重要性に対する認識がない医師には注意が必要

診断書の記入は担当医師にお願いすることになりますが、医師によっては作成に消極的な方もいます。
作成そのものが医療行為でないことと、後遺障害に関する診断書を書くことは、医師からすると治療したにも関わらず治らなかったことについての詳細を記載することになるため、稀なケースではありますが、診断書の作成自体を拒否されることもあります。
しかし、診断書の作成依頼を拒否することは、正当な理由がないかぎり医師法(医師法第十九条の二項)で禁じられているため、被災労働者が通院を怠っていたなどの瑕疵がなければ、原則作成の義務があります。
とはいえ、こちらから法律の正当性を押し出して医師を問い詰めるようなことをすると、医師との信頼関係を破壊してしまいます。また、作成いただけたとしても内容が不十分だった場合、再度作成依頼をしなければならず、大変になることもあります。
診断書作成はこちらからお願いする立場になるので、医師に敬意を払い、診断書の重要性と状況について丁寧に説明して作成を促していくことが大切です。それでも難しい場合は病院を変えて治療を受け、診断書の作成をお願いすることも検討します。

労働基準監督署へ障害(補償)給付の申請をする

労働者災害補償保健診断書や関係資料の準備が整ったら、管轄の労働基準監督署長に障害補償給付支給請求書(様式第10号)または、障害給付支給請求書(様式第16号の7)とあわせて提出することになります。
請求書には、会社が事故を証明するための事業所記入欄があり、通常は事業所側が記載することになっていますが、万一会社が労災認定に非協力的な場合は空欄でも申請できます。担当者が空欄の理由を把握しやすいように、「会社が労災を認めないため未記入」といった具合に記載してもかまいません。
なお、給付の申請には時効があり、傷病が治った日(症状固定日)の翌日から5年経過すると請求権が消滅するのでご注意ください。

自己申立書の提出

労災で障害(補償)給付をする場合、障害(補償)給付支給請求書の提出と併せて自己申立書(障害の状態に関する申立書)という書類を提出します。
この書類では、ケガの症状に関することを記載し、労働基準監督署へ状況を正確に伝える必要があります。仕事や日常生活のなかで起こっている不自由な点や、ケガによる痛みの状況、身体の部位に可動制限がどの程度発生しているかなど、詳しく説明するようにしてください。

労働基準監督署の調査員との面談

障害(補償)給付支給請求書を労働基準監督署に提出すると、労基署の調査員による面談が行われます。面談日時については書類提出のタイミングで決まることもありますが、後日連絡を受け、日時が決定します。

後遺障害等級認定の審査・認定

労働基準監督署は、提出された障害(補償)給付支給請求書をもとに、事故内容や被災労働者の後遺障害の状況などについて調査を行います。後遺障害認定基準に該当し、労災が原因であることが明白となれば後遺障害認定を受けることができ、等級に応じた補償を受けることができます。

後遺障害が認められない場合

後遺障害認定基準に該当しない場合や、ケガや病気の症状が労災と因果関係にないと判断された場合、後遺障害の認定を受けることができません。認定されなければ、同様に障害(補償)給付も受けられません。
また、後遺障害が認められても、想定した等級より低く納得できないような場合、どのような対処方法があるでしょうか。
後遺障害等級認定が非該当であったり、等級認定に不満がある場合は、認定通知を受け取った日の翌日から3か月以内に労働者災害補償保険審査官へ審査請求を申し立てることで、再度審査を受けることができます。
手続きは、各都道府県の労働局に審査請求書を提出することで足りますが、最初の申請とは違う内容で根拠や証拠を示す必要があるため、認定結果を覆すことは容易ではありません。
なお、審査請求で内容が変わらなかった場合は、審査請求の通知を受け取った翌日から2か月以内に労働保険審査会に対して再審査請求することもできます。ここでも結果が変わらない場合は、再審査の決定がでてから6か月以内に訴訟を申し立て、裁判所の判断に委ねることとなります。

  • 審査請求での決定に納得できない場合、再審査請求をせずに直接訴訟を申し立てることもできます。

後遺障害等級認定の基準について理解する

後遺障害は、労働者災害補償保険法施行規則によって1級から14級までの等級が定められており、第1級が最も重く、第14級が最も低い障害となります。労働能力喪失率(労働能力の低下がどの程度であるかを数値化したもの)を基に、障害の状態に応じた等級の区分けがされており、それぞれの等級ごとに補償額が決まっています。
申請にあたっては、労災における後遺障害等級認定基準について詳しく理解している必要があります。先にもお伝えしましたが、等級がひとつ違うだけで補償内容も大きく変わり、特に7級と8級でその違いが顕著です。1〜7級は毎年年金を受け取ることができますが、8〜14級では一時金の支給となるからです。
後遺障害の申請、認定にあたっては、認定基準と被災労働者のケガの状況とを照らし合わせることや、担当医師と治療を通じて意思疎通を図り診断書作成等の対応を検討することが重要となります。こうした判断には専門的な知識が必須であるため、専門家にアドバイスを求めることが大切です。
そのため、労災における後遺障害等級認定については、交通事故で後遺障害等級認定に携わった経験があるなど、1級から14級までそれぞれの基準を熟知している労災に詳しい弁護士や専門家に相談されることをおすすめします。

この記事の監修

小湊 敬祐

Keisuke Kominato

  • 弁護士
  • 津田沼法律事務所
  • 千葉県弁護士会所属

労働災害をはじめ、交通事故、未払い残業代請求や相続紛争業務を中心に、ご依頼者の心情に寄り添いながら、さまざまな法律問題でお悩みの方に対し、解決にむけたサポートを行っている。

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