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労災コラム

労災事故で会社の対応に不満…弁護士に相談するタイミングとは?

会社での業務中に大ケガを負った際、使用者側がケガを負われた労働者に対してどのような対応をとるか、その行動や言動で会社の労災に対する意識が垣間見えることもあります。

工場など、5S活動の啓蒙やヒヤリ・ハットの情報共有をはじめ、労災事故を未然に防ぐための活動をしっかり行い、日頃から労災に対する意識を高く持っている企業もある一方、労働者への安全配慮に対する意識が低く、労災事故が発生しても「会社は悪くない、従業員の不注意が原因だ。」などの発言を繰り返し、事故を隠そうとする悪質な企業もまだ存在するのが現状です。

労災事故は、本来あってはいけないものですが、万一労災事故が発生しても、会社側が労災保険による治療や休業補償をはじめ、さまざまな公的制度の準備を手引きするなど、ケガを負われた従業員に配慮した対応をとられる企業がほとんどです。

しかし、労災事故に遭われ、会社の対応が冷淡で自己責任のような言動が見られたり、事故を隠そうとしている、労災保険の使用を拒むなど、違法性の高い対応が行われていると感じたら、労働基準監督署に相談することを検討すべきでしょう。

では、労災に遭われたとき、弁護士への相談はどのような理由があったときに行うべきでしょうか。

ここでは、労災被害に遭われた方に対して、相談のタイミングや弁護士がお力になれる点について解説します。

この記事の内容

労災事故に遭われた際に弁護士へ相談するタイミング

多くの企業では、万一労災事故が発生しても、救急対応をはじめ、手続きについても法令に沿った対応を行い、事故に遭われた労働者に対して適切な処置を行うケースがほとんどですので、すぐ弁護士へ相談ということは多くないと思います。

しかし、次のような状況やタイミングが訪れている場合、早めに弁護士へ相談されることをおすすめします。

早めに弁護士へ相談するとよい事例

  • 会社に対して慰謝料などの損害賠償の請求を検討しているとき
  • 労災で死亡事故となったとき
  • 大ケガをしているのに、会社が労災を認めない・労災利用を明確に拒むとき
  • 会社がケガを負った責任を認めないとき
  • 治療が終わり、後遺障害が残ってしまったとき

なお、次に掲げる内容については、管轄の労働基準監督署へ問い合わせされるとよいでしょう。

管轄の労働基準監督署へ相談するとよい事例

  • 労災保険の給付申請の手続きに関すること
  • 労災にあたるのかどうかよくわからないとき
  • 労災でケガをしたが、明らかに会社に事故の責任がないとき
  • 会社が労災の手続きを積極的に進めてくれず、進行を促したいとき
  • 労災が起こるような会社の状況の改善をしてほしいとき

弁護士への相談タイミングについて、ここまで述べた状況にあるときがひとつの問い合わせタイミングとなりますが、それぞれの理由についてみていきましょう。

会社に対して慰謝料などの損害賠償の請求を検討しているとき

被害者自身が会社に損害賠償を請求しても、会社でなかなか動いてくれないことがあります。また、ほとんどの方は、どのくらいの金額を受け取れば十分な賠償といえるのか、わからないのではないでしょうか。

弁護士は、治療期間の長さや後遺障害の程度に応じて損害を計算し、被害を受けた労働者が適正な賠償を受けられるよう交渉することができます。

会社が責任を否定したり、過小な賠償にしか応じないような場合には、労働審判や訴訟といった裁判所での手続きに進んでいくことになります。これらの手続きでは、「会社の責任によって、これだけの損害が生じた」ということを被害者の側で証明することが必要ですので、労災に精通した弁護士に依頼することが望ましいでしょう。

大ケガをしているのに、会社が労災を認めない・労災利用を明確に拒むとき

本来利用できるはずの労災保険が使えないと、被害者は休業により収入が途絶えると同時に、治療費などの多額のお金が必要になり、生活面で大きなダメージを受けます。

また、労災利用を認めない会社は、残念ながら従業員への賠償についても消極的なことが多いです。

ひどいケガで働けない期間が長かったり、重い後遺障害で復職が見通せないようなケースもあります。このようなケースでは、場合によっては労災申請の段階から弁護士がサポートすることも考えられます。

ケガを負った責任を会社が認めないとき

会社が労災保険の申請手続きはしてくれても、会社に責任はないと主張してくることがあります。いわゆる会社の労働者に対する「安全配慮義務違反」の問題です。

会社が安全配慮義務に違反していることは、会社へ損害賠償請求をするための要件のひとつです。どんなに大ケガをして多額の損害が出ていても、安全配慮義務違反であると証明できなければ、会社にお金を支払ってもらうことはできません。

また、会社が「ケガをしたのは被害者のミス・不注意のせいである」と被害者の過失を主張してくることもあります。労災で生じた損害のうち、自分の過失の分の損害賠償は受けることができないため、過失割合は賠償金額に大きな影響を与えます。

安全配慮義務違反・過失の主張は、しばしば大きな争点になります。これらの判断には、専門知識が必要ですので、会社が責任を否定してくる場合には弁護士への相談をおすすめします。

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労災事故における安全配慮義務とは?

労災で死亡事故となったとき

死亡事故のご遺族は、精神的にも経済的にも甚大なダメージを負われており、損害賠償などについて、会社との交渉が困難になることも多くあります。

また、真実を知る被害者ご本人が亡くなっているため、労災事故時の状況がわからない場合もあります。会社への責任追及は、災害調査復命書や救急搬送時の記録等を集め、会社の安全配慮義務違反を証明できるだけの資料をそろえる必要もあることから、早めに弁護士へ相談することをおすすめします。

治療が終わり、後遺障害が残ってしまったとき

重いケガを負った場合、治療終了後に後遺障害が残ってしまうことがあります。この場合、ケガそのものの慰謝料などに加え、後遺障害についての慰謝料と逸失利益(労働能力が低下した分の損害)を請求することになります。

重い後遺障害が残った場合、損害額も当然大きくなります。また、後遺障害の影響で思うように働いて収入を得ることができなくなった分、賠償をしっかり受ける必要性も高まります。会社側に言われるがまま安易に示談するのではなく、今後の生活のためにもしっかり賠償を受ける必要性が高く、弁護士に相談することが望ましいと考えます。

労災保険ではすべての損害や慰謝料が補償されない

ここまで労災事故において弁護士に相談するタイミングと理由についてみてきましたが、労災事故における大きな問題点として、「労災保険ではすべての損害や慰謝料が補償されない」ことが挙げられます。

労災保険の補償には限界がある

「損害賠償」と聞いて、まず思い浮かぶのは慰謝料だという方も多いのではないでしょうか。しかし、労災保険には、慰謝料の補償はありません。

また、労災保険の休業補償は、給料の月額の6割分(特別支給金を入れても8割分)であり、仕事を休んだ分の給料すべてを支払ってもらえるわけではありません。

そのほか、労災保険からは、後遺障害の補償や介護への補償、被害者本人が亡くなってしまった場合の遺族への補償などが支払われます。

しかし、これらはすべて、労災保険の決められた基準にもとづいて支払われるものです。そのため、実際に生じた損害が基準額よりも大きいことを証明できたとしても、労災保険からは補償を上乗せしてもらえません。

労災保険で補償されない分は会社から受け取る必要がある

労災保険で賄えない分の損害は、会社に賠償してもらうことが必要です。

しかし、労災保険に関してはしっかり対応してくれる会社であっても、必ずしも会社自らの責任を認めて賠償をしてくれるわけではありません。また、賠償を申し出てくれても、実際の損害よりも少額で示談するよう求められることもあります。

適正な賠償を受けるためには、弁護士に交渉を任せるのが望ましいでしょう。会社が賠償を拒否する場合には、労働審判や訴訟など、裁判所での手続きを行っていくことも必要です。これらの手続きには専門知識が必要で、被害者ご自身だけで進めるのはなかなか難しいものです。交渉段階から裁判所での手続きを見据えて、労災に精通した弁護士に依頼することをおすすめします。

労災事故で弁護士に相談するタイミングと判断できれば早めに問い合わせをする

ここまで労災事故における弁護士への相談タイミングについて解説してきました。

労災事故に苦しんでいる被害者が、自分の力で資料を集め、賠償を受ける段階までたどり着くことはかなり大変です。

労災に精通した弁護士に依頼し、会社から適正な賠償を受けるというゴールに向けて、着実に手続きを進めていくことが、解決への近道となります。ご自身の労災事故が相談のタイミングに差し掛かっているのではないかとお思いになった方は、一度弁護士にご相談されることをおすすめします。

労災事故による損害賠償請求は弁護士へご相談ください

初回相談は無料です

この記事の監修

三浦 知草

Chigusa Miura

  • 弁護士
  • 上野法律事務所
  • 東京弁護士会所属

労災は、ケガで身体や心にダメージを与えるだけでなく、これまで働いて収入を得てきた生活の基盤そのものに深刻なダメージを与えるものです。適正な賠償を獲得することで、被害者の方が少しでも労災のダメージを回復するお手伝いができればという想いで活動しています。

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