交通事故被害の基礎知識

後遺障害の等級認定と申請手続きの流れについて

後遺障害の等級認定と申請手続きの流れについて

交通事故で負ったケガが完治せずに症状が残ったとき、後遺障害の認定に向けた手続きを行い、等級認定を受けることで適正な損害賠償を受けることができます。

後遺障害認定の手続きに向けた書類の準備等に際しては、医師への診断書作成をはじめ注意すべき点も多く、対応を誤ると等級認定そのものが非該当になったり、正しい等級認定を受けられないこともあるため、その後の賠償金にも影響を及ぼします。

ここでは、後遺障害等級認定を受けるにあたり、申請の手続きの流れや注意点について解説します。

この記事の内容

後遺障害等級の認定とは?

後遺障害等級の認定について、全体を理解する上で知っておくべき事柄についてひとつずつ解説していきます。

後遺症と後遺障害の違いについて

普段生活するなかで、よく「後遺症」という言葉を使います。いわゆる後遺症は、病気やケガが治った後に残る症状全般を指します。

他方、交通事故損害賠償の手続きの中では、「後遺障害」というよく似た言葉が使われます。「後遺障害」とは、事故による傷病がなおったときに残っている症状で、事故によるケガと因果関係を持ち、かつ、将来においても回復が困難と見込まれる身体や精神のき損状態(障害)であって、その障害の存在が医学的にも認められ、労働能力の喪失を伴うものを意味します。

なお、傷病が「なおったとき」というのは、すっかり完治したときではなく、後で述べる「症状固定」の状態に達して治療が終了したときを意味します。

少し難しい説明でしたが、「事故で後遺症が残った」といったときにイメージする状態とは必ずしも一致せず、後遺障害といえるためには様々な条件を満たす必要があることをご理解いただけたらと思います。

後遺障害等級は第1級から第14級に分けられる

後遺障害は、障害の残った身体の部位ごと・障害の系列(例えば腕や足が「無くなった」のか「変形した」のか「傷跡が残った」のか等々)ごとに分類され、重い順に第1級から第14級までの等級に分けられています。ここでいう「重い」というのは、労働能力の喪失が大きいことを意味します。

残った症状がどの等級に当たるかは、損害保険料率機構という機関の設置する、自賠責損害調査事務所が判断します。認定される等級によって、受け取れる賠償金の額は大きく異なります。

後遺障害の申請方法は事前認定と被害者請求の2種類

後遺障害の申請方法は次の2種類となります。

事前認定

相手方任意保険会社から申請を出してもらう方法です。治療終了後に、医師の作成した後遺障害診断書等の必要書類を相手方保険会社に提出すれば、申請手続きを進めてもらえます。

被害者請求

被害者自身が申請する方法です。後遺障害診断書だけでなく、治療期間中の医療記録などを集めて提出します。被害者自身からの請求なので、カルテや意見書など、判断材料にしてほしい書類を追加することもできます。

後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益の請求とは?

後遺障害が認定された場合に請求できるものは、後遺障害慰謝料と逸失利益です。なお、入通院慰謝料などの治療期間中の損害は、これらとは別に請求できます。

後遺障害慰謝料について

後遺障害等級に応じて慰謝料が支払われます。下の表で示した金額は、裁判基準といわれるものです。これを超える慰謝料を請求するためには、増額すべき特殊な事情があると証明することが必要です。

第1級 2800万円
第2級 2370万円
第3級 1990万円
第4級 1670万円
第5級 1400万円
第6級 1180万円
第7級 1000万円
第8級 830万円
第9級 690万円
第10級 550万円
第11級 420万円
第12級 290万円
第13級 180万円
第14級 110万円
逸失利益について

逸失利益は、労働能力の低下・喪失によって、将来得るはずだった収入が得られなくなったことについての損害です。

「基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間」で算定し、この数字から、中間利息を差し引きます。労働能力喪失率は、後遺障害等級によって決まります。

後遺障害等級の認定を受けるまでの流れ

続いて実際に後遺障害の申請をする際の流れをご説明します。

医師から症状固定の診断を受ける

まず、医師から「症状固定」の診断を受けます。

「症状固定」とは、一定期間の治療を続けた後、症状が薬やリハビリで一時的には緩和するが、また戻ってしまう一進一退の状態に達したことを意味します。

「症状固定」の状態に達すると、もはや治療が効いていない状態ということになります。そのため、症状固定後の治療費を相手方に請求することはできません。残った痛みや可動域の制限については、後遺障害として認定を受けたうえで、損害賠償を請求することになります。

まだ治療が必要なのか、それとも症状固定に達しているのかを判断するのは、実際に治療に当たっている医師です。本来は保険会社が決めるものではありません。もし、まだ治療の効果が出ていて、医師が症状固定ではないと判断しているのであれば、保険会社が症状固定だと主張していても治療を継続しましょう。

特に、むち打ち症などの神経症状(痛みや痺れ)は、後遺障害の存在が見た目や検査画像からわからないことも多く、治療の記録が唯一の証拠となることがしばしばです。治療期間が短すぎると、適正な認定を受けることができなくなるので注意してください。

医師に診断書を作成してもらう

症状固定の判断が出たら、主治医に後遺障害診断書を作成してもらいます。この際、改めてMRIなどの画像を撮ったり、可動域を測定したりします。症状によって、認定に必要とされる検査内容は異なります。必要な検査をしっかり受けるようにしましょう。

また、ケガの部位ごとに複数の病院に通院している場合などには、それぞれの病院で後遺障害診断書を書いてもらうことが必要です。

診断書作成の際に注意すべきこと

診断書を書いていただく際には、通常、改めて主治医の診察を受けます。その際、きちんと自覚症状を伝えてください。

  • 痛みのある部分はすべて伝えているか
  • 常に痛いのに「○○の動きをすると痛い」という記載になってしまっていないか
  • 可動域の制限(曲がらない・伸ばせない)がある場合には計測してもらい、数値を書いてもらえたか
  • 人目につく場所にある大きな傷(醜状痕)の存在を記載してもらったか

こうした点に注意してください。

特に、痛み・痺れは、ケガをした本人にしかわからないので、丁寧に伝えるようにしてください。自覚症状を事前にメモして診察に行くことも効果的です。

事前認定または被害者認定で後遺障害の申請をする

後遺障害診断書を取得したら、申請手続きに進みます。被害者請求を行う場合の必要書類には、以下のようなものがあります。

自賠責保険支払請求書兼支払指図書

請求者(被害者)・加害者の情報や、保険金振込先を記載する書類です。

交通事故証明書

交通事故の事実を確認したことを証明する書類です。警察に届け出た事故について作成されます。証明書の申請に必要な書類は、自動車安全運転センターのほか、最寄りの警察署・交番でもらうことができます。

事故発生状況報告書

自身が認識している事故発生時の状況を報告する書類です。図と説明文を記載します。

診療報酬明細書及び診断書

事故によるケガの治療を行ったすべての医療機関の診療報酬明細書・診断書を取得します。毎月各1部が発行されます。

保険会社が治療費の支払いを行ってくれていた期間のものは、保険会社からコピーをもらうことができます。それ以外の分は、ご自身で取り付ける必要があります。治療費打ち切り後にも通院している場合など、保険会社から否認された治療がある場合には、弁護士に相談してみましょう。

後遺障害診断書

主治医に作成してもらいます。作成時の注意点などは、前項の「診断書作成の際に注意すべきこと」で説明したとおりです。

人身事故証明書入手不能理由書

人身事故として届け出をしていない場合に、その理由を記載する書類です。

検査画像

レントゲンやMRIなどの検査画像です。画像上異常なしの場合にもすべて提出します。

事前認定の流れ

相手方保険会社を通して後遺障害の認定結果が通知されます。通常、認定された等級を踏まえ、相手方保険会社から、示談提案がなされます。

被害者請求の流れ

自賠責保険会社を通じて結果が通知されます。あわせて、後遺障害が認定された場合には、自賠責保険の保険金が入金されます。保険金は、等級に応じて定額が支給されます。具体的な金額は、次項の表をご覧ください。

後遺障害に関する損害の一部が、この保険金によって支払われたという扱いになり、残りの損害を、相手方保険会社に請求することになります。

認定結果の通知を受ける

むち打ち・打撲のみの場合、申請から結果が出るまで通常2〜3か月程度です。

複数箇所に重傷を負っている場合や、高次脳機能障害などの慎重な判断が必要になる場合などには、より長い期間を要します。

異議申し立てについて

認定結果が、後遺障害非該当の場合や、認定された等級が軽すぎる場合には、異議申立てを行うことができます。

異議申立てに当たっては、診断書だけでなく、カルテを精査します。また、必要に応じて主治医の意見書や検査画像解析の専門家の意見書を取り付ける場合もあります。異議が通る可能性があるのかについて見立てをし、必要な資料を整えるのは、専門知識のない方にはなかなか難しいところです。認定内容に納得できない場合には、一度弁護士にご相談ください。

後遺障害等級とその認定基準について

交通事故の後遺障害等級ですが、介護を要するものが1級と2級、後遺障害は1級から14級まであり、それぞれの等級に認定基準があります。この基準は、「自動車損害賠償保障法施行令」のなかで規定されていますので、表にまとめてご紹介します。

介護を要する後遺障害

等級 介護を要する後遺障害 保険金額 労働能力喪失率
第1級
  1. 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
  2. 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
4000万円 100/100
第2級
  1. 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
  2. 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
3000万円 100/100

後遺障害

等級 後遺障害 保険金額 労働能力喪失率
第1級
  1. 両眼が失明したもの
  2. 咀嚼及び言語の機能を廃したもの
  3. 両上肢をひじ関節以上で失つたもの
  4. 両上肢の用を全廃したもの
  5. 両下肢をひざ関節以上で失つたもの
  6. 両下肢の用を全廃したもの
3000万円 100/100
第2級
  1. 一眼が失明し、他眼の視力が〇・〇二以下になつたもの
  2. 両眼の視力が〇・〇二以下になつたもの
  3. 両上肢を手関節以上で失つたもの
  4. 両下肢を足関節以上で失つたもの
2590万円 100/100
第3級
  1. 一眼が失明し、他眼の視力が〇・〇六以下になつたもの
  2. 咀嚼又は言語の機能を廃したもの
  3. 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
  4. 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
  5. 両手の手指の全部を失つたもの
2219万円 100/100
第4級
  1. 両眼の視力が〇・〇六以下になつたもの
  2. 咀嚼及び言語の機能に著しい障害を残すもの
  3. 両耳の聴力を全く失つたもの
  4. 一上肢をひじ関節以上で失つたもの
  5. 一下肢をひざ関節以上で失つたもの
  6. 両手の手指の全部の用を廃したもの
  7. 両足をリスフラン関節以上で失つたもの
1889万円 92/100
第5級
  1. 一眼が失明し、他眼の視力が〇・一以下になつたもの
  2. 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
  3. 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
  4. 一上肢を手関節以上で失つたもの
  5. 一下肢を足関節以上で失つたもの
  6. 一上肢の用を全廃したもの
  7. 一下肢の用を全廃したもの
  8. 両足の足指の全部を失つたもの
1574万円 79/100
第6級
  1. 両眼の視力が〇・一以下になつたもの
  2. 咀嚼又は言語の機能に著しい障害を残すもの
  3. 両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になつたもの
  4. 一耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの
  5. 脊柱に著しい変形又は運動障害を残すもの
  6. 一上肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの
  7. 一下肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの
  8. 一手の五の手指又はおや指を含み四の手指を失つたもの
1296万円 67/100
第7級
  1. 一眼が失明し、他眼の視力が〇・六以下になつたもの
  2. 両耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの
  3. 一耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの
  4. 神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
  5. 胸腹部臓器の機能に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
  6. 一手のおや指を含み三の手指を失つたもの又はおや指以外の四の手指を失つたもの
  7. 一手の五の手指又はおや指を含み四の手指の用を廃したもの
  8. 一足をリスフラン関節以上で失つたもの
  9. 一上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの
  10. 一下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの
  11. 両足の足指の全部の用を廃したもの
  12. 外貌に著しい醜状を残すもの
  13. 両側の睾丸を失つたもの
1051万円 56/100
第8級
  1. 一眼が失明し、又は一眼の視力が〇・〇二以下になつたもの
  2. 脊柱に運動障害を残すもの
  3. 一手のおや指を含み二の手指を失つたもの又はおや指以外の三の手指を失つたもの
  4. 一手のおや指を含み三の手指の用を廃したもの又はおや指以外の四の手指の用を廃したもの
  5. 一下肢を五センチメートル以上短縮したもの
  6. 一上肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの
  7. 一下肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの
  8. 一上肢に偽関節を残すもの
  9. 一下肢に偽関節を残すもの
  10. 一足の足指の全部を失つたもの
819万円 45/100
第9級
  1. 両眼の視力が〇・六以下になつたもの
  2. 一眼の視力が〇・〇六以下になつたもの
  3. 両眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの
  4. 両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの
  5. 鼻を欠損し、その機能に著しい障害を残すもの
  6. 咀嚼及び言語の機能に障害を残すもの
  7. 両耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの
  8. 一耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり、他耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になつたもの
  9. 一耳の聴力を全く失つたもの
  10. 神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
  11. 胸腹部臓器の機能に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
  12. 一手のおや指又はおや指以外の二の手指を失つたもの
  13. 一手のおや指を含み二の手指の用を廃したもの又はおや指以外の三の手指の用を廃したもの
  14. 一足の第一の足指を含み二以上の足指を失つたもの
  15. 一足の足指の全部の用を廃したもの
  16. 外貌に相当程度の醜状を残すもの
  17. 生殖器に著しい障害を残すもの
616万円 35/100
第10級
  1. 一眼の視力が〇・一以下になつたもの
  2. 正面を見た場合に複視の症状を残すもの
  3. 咀嚼又は言語の機能に障害を残すもの
  4. 十四歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
  5. 両耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になつたもの
  6. 一耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になつたもの
  7. 一手のおや指又はおや指以外の二の手指の用を廃したもの
  8. 一下肢を三センチメートル以上短縮したもの
  9. 一足の第一の足指又は他の四の足指を失つたもの
  10. 一上肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの
  11. 一下肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの
461万円 27/100
第11級
  1. 両眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの
  2. 両眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの
  3. 一眼のまぶたに著しい欠損を残すもの
  4. 十歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
  5. 両耳の聴力が一メートル以上の距離では小声を解することができない程度になつたもの
  6. 一耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの
  7. 脊柱に変形を残すもの
  8. 一手のひとさし指、なか指又はくすり指を失つたもの
  9. 一足の第一の足指を含み二以上の足指の用を廃したもの
  10. 胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの
331万円 20/100
第12級
  1. 一眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの
  2. 一眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの
  3. 七歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
  4. 一耳の耳殻の大部分を欠損したもの
  5. 鎖骨、胸骨、ろく骨、けんこう骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの
  6. 一上肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの
  7. 一下肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの
  8. 長管骨に変形を残すもの
  9. 一手のこ指を失つたもの
  10. 一手のひとさし指、なか指又はくすり指の用を廃したもの
  11. 一足の第二の足指を失つたもの、第二の足指を含み二の足指を失つたもの又は第三の足指以下の三の足指を失つたもの
  12. 一足の第一の足指又は他の四の足指の用を廃したもの
  13. 局部に頑固な神経症状を残すもの
  14. 外貌に醜状を残すもの
224万円 14/100
第13級
  1. 一眼の視力が〇・六以下になつたもの
  2. 正面以外を見た場合に複視の症状を残すもの
  3. 一眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの
  4. 両眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの
  5. 五歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
  6. 一手のこ指の用を廃したもの
  7. 一手のおや指の指骨の一部を失つたもの
  8. 一下肢を一センチメートル以上短縮したもの
  9. 一足の第三の足指以下の一又は二の足指を失つたもの
  10. 一足の第二の足指の用を廃したもの、第二の足指を含み二の足指の用を廃したもの又は第三の足指以下の三の足指の用を廃したもの
  11. 胸腹部臓器の機能に障害を残すもの
139万円 9/100
第14級
  1. 一眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの
  2. 三歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
  3. 一耳の聴力が一メートル以上の距離では小声を解することができない程度になつたもの
  4. 上肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの
  5. 下肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの
  6. 一手のおや指以外の手指の指骨の一部を失つたもの
  7. 一手のおや指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなつたもの
  8. 一足の第三の足指以下の一又は二の足指の用を廃したもの
  9. 局部に神経症状を残すもの
75万円 5/100

参照ページ

後遺障害の等級はどのようにして認定されるのか?

残存する症状がどの後遺障害等級に当たるのかは、基本的に、提出された医療記録(診断書などの書類、検査画像)から判断されます。なお、醜状障害(人目につく傷跡が残ったもの)などは、面談審査が行われます。

等級は、まず、後遺障害がどこの部位に残っているかで区分され、さらにそこから系列に区分されます。この系列同士について、労働能力喪失の程度に応じて軽重を定めたものが先程ご紹介した障害等級表です。

併合や加重、準用について

次に、等級認定に関するいくつかのルールを説明します。

併合とは?

複数の部位・系列ごとの後遺障害を認定した後、全体として何級の後遺障害とするのかについての処理が「併合」です。

系列の異なる2つ以上の障害がある場合、

①第13級以上の障害が2以上ある→重い方の等級を1つ繰り上げる
②第8級以上の障害が2以上ある→重い方の等級を2つ繰り上げる
③第5級以上の障害が2以上ある→重い方の等級を3つ繰り上げる
④それ以外の場合→重い方の等級による

という処理がされます。

例をあげて見ていきましょう。

  • 事故で骨折し、右肘の関節の可動域が健康な状態の4分の3以下までしか曲がらなくなった→第12級6号
  • 同じ事故で歯が折れて、5本をインプラントにした→第13級5号

①のルールより、重い方(第12級)を1つ繰り上げ、併合11級となります。

加重とは?

障害等級表は、事故前に健常だった身体に障害が生じたとした場合の等級と、それに応じた労働能力喪失率を定めています。しかし、元々障害があった部分にケガをして、さらに障害が重くなったという後遺障害の残り方もあり得ます。この場合のルールが「加重」です。

事故前から元々あった障害のことを「既存障害」といいます。障害の原因は問わず、障害等級表に定められた程度の障害があれば、一律に既存障害とされます。

加重障害の場合、症状固定時点で残っている障害の損害額から、既存障害分の損害額を差し引いた金額が、相手方保険会社から賠償されるべき金額となります。

例をあげて見ていきましょう。

  • もともと右肘が健康な状態と比べて4分の3以下しか曲がらない状態だった(第12級6号に当たる)
  • 事故によって右肘を骨折し、2分の1以下しか曲がらなくなってしまった(第10級9号に当たる)

つまり、賠償を受けるべき後遺障害慰謝料は、550万円(第10級)-290万円(第12級)=260万円となります(なお、逸失利益も同様の考え方で算定しますが、収入や年齢で金額が変動するので割愛します)。

準用とは?

後遺障害は、先に示した表のように分類されていますが、生じうるすべての障害を網羅するには限界があります。そのため、

  • その後遺障害が、障害等級表上のどの系列にも属さない場合
  • 系列はあるが、該当する身体障害がない場合

に「準用」という処理をします。

事故の後、嗅覚を失った場合を例にあげます。障害等級表上、鼻の機能障害は「鼻を欠損し、その機能に著しい障害を残すもの」(第9級5号)があるのみで、鼻の欠損がない場合の等級は設けられていません。この場合、神経症状(痛みや痺れ)の等級を準用し、嗅覚を失っていれば第12級13号、嗅覚が減退していれば第14級9号の障害として扱います。

ここまで等級認定のルールについて説明してきましたが、もっとも、実際の症状に対してどのように基準が当てはめられているのかは、はっきり公開されているわけではありません。同じケガでも、資料を追加して異議申立てをすることで、等級が変わることもあります。

このように、等級認定のルールはなかなか複雑です。そのため、「自分の後遺障害認定は適切なのか?」と疑問を持たれる場合は、弁護士にご相談されることをおすすめします。

正しい後遺障害等級の認定を受けるには?

後遺障害の等級認定は決まりが複雑でわかりにくい部分も多いのですが、正しい後遺障害等級の認定を受けるためには、いくつかのポイントがあります。ここでは、そのポイントについて説明します。

整形外科に定期的な通院をする

正しい後遺障害等級認定を受けるために最も大切なのは、適切なペースでの整形外科への通院です。

むち打ち・打撲の場合

むち打ち症状でリハビリが中心になる場合、週2〜3回を目安に整形外科に通院するのが望ましいです。お仕事をしている方などは、常にこのペースを守ることは難しいかもしれませんが、通院の間隔を2週間以上空けないようにしましょう。

通院頻度が少なすぎると、後遺障害等級の認定を受けるのが難しくなります。痛みがあるなら我慢せず治療を受けに行きましょう。

重傷の場合

骨折でギブス固定しているような場合、週に何度もリハビリを行うということはあまりなく、月1回程度定期的に通院するというケースが多くなります。

このような重傷の場合、通院頻度が少ないために後遺障害が認定されないということはあまり起こりません。ただし、医師の指示を守ってしっかり治療をすることは重要です。回復のためにも後遺障害等級認定のためにも、自己判断で通院を止めるようなことはしないようにしましょう。

事故後早めに診察を受ける

初回の通院は、可能な限り速やかに行いましょう。一見してどこにもケガをしていない場合も同様です。事故後すぐは興奮などもあり、あまり痛みを感じず、落ち着いた頃に痛みが強く出てくる方もいます。初回通院が遅いと、「通院しなくてもいいような軽いケガだったのではないか」と、後に相手方保険会社から主張されることもあります。強い痛みがなくても、なるべく当日中の通院をおすすめします。

整骨院での治療は避ける

夜遅くまで開いていることや、病院よりも時間をかけて施術をしてくれるといったメリットから、整骨院に通院される方もいます。しかし、適正な後遺障害等級の認定を受けるという観点からすると、整骨院・接骨院・整体など、病院以外の治療機関に通うことはおすすめできません。

整骨院に、週2~3回ペースの通院をしても、後遺障害の認定を受けるうえでプラスにはなりません。また、整骨院治療が多いと、相手方保険会社からの治療費支払いの打ち切りがなされやすくなる傾向があるため、等級認定に必要な通院期間を確保するという意味でもマイナスになってしまいます。

こうしたことから、整骨院ではなく、リハビリ設備のある整形外科でリハビリを受けるようにしてください。どうしても整骨院に通いたい場合は、できれば医師から同意をもらうとよいでしょう。ただし、同意がある場合でも、あくまで整形外科での治療がメインであると考えてください。

交通事故が原因であることを証明する

事故から時間が経った時点でケガが見つかった場合、事故との因果関係が認められず、後遺障害等級が認定されないおそれがあります。痛い部分・違和感のある部分は、画像(レントゲン・MRI)を撮ってもらいましょう。

治療に6か月以上かかっていること

むち打ち・打撲の症状の場合、後遺障害等級が認定される1つの目安は、6か月以上継続した通院です。相手方保険会社は、6か月が経過する前に治療費支払いを打ち切ってくることも多いです。その場合には、労災保険や健康保険(社会保険・国民健康保険)を使って、症状固定・治癒いずれかに至るまで治療を続けましょう。

症状が継続して続いていること

6か月以上の治療を終え、症状固定の判断がなされた時点で、常時痛が続いている場合には、後遺障害の申請をしましょう。

痛み・痺れといった神経症状の場合、「常時痛」があることが認定の1つの条件になり、動作時痛(例えば、首を上に向けたときだけ痛い)のみしか残っていない場合は、非該当になりやすくなっています。むち打ち症では、何もしていないときよりも動かしたときに痛みが増す方も多く、しばしば後遺障害診断書に、「○○したときに動作時痛あり」などの記載がなされてしまいます。何もしていなくとも痛みがあるのであれば、そのことも記載してもらいましょう。

交通事故被害に遭われ、ケガの程度が重ければ弁護士に相談する

ここまで交通事故の被害に遭われ、ケガが完治せず後遺症が残った場合の後遺障害等級認定について、その内容や申請の流れについて説明してきました。

後遺障害の等級が認定されるかどうかで、その後の賠償金にも大きく影響することから、申請に関しては交通事故被害の対応に詳しい弁護士に相談し、どのように進めるべきかお話されることをおすすめします。

この記事の監修

交通事故の被害者の方は、ただでさえケガの痛みで苦しい思いをされているなかで、初めての諸手続きの大変さや先の見通しの不安を抱えて生活されています。弁護士は医者と違い、ケガの痛みを癒すことはできませんが、不安を取り除くともに、適正な賠償を受ける手助けをできれば幸いです。

弁護士三浦 知草

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