交通事故被害の基礎知識

交通事故によるむちうち症の治療期間と通院頻度について

交通事故によるむちうち症の治療期間と通院頻度について

追突事故などの交通事故被害で靭帯や筋肉、椎間板、関節包などを痛め、首や腰に痛みや痺れを伴うむちうち症を患った場合、多くの方はしっかりと治療に取り組み、医師と相談しながら完治に向けて通院することになると思います。

ただ、むちうち症による痛みや痺れの重さは、交通事故の状況や個人差もあり、その症状はさまざまです。そのため、治療にどの程度の時間がかかるのか、通院頻度とあわせて気にされる方も多いのではないでしょうか。

ここでは、交通事故被害によるむちうち症の治療機関や通院頻度の目安、慰謝料に関する留意すべき点などについて解説します。

この記事の内容

交通事故のむちうち治療に関する通院期間の目安は3〜6か月

交通事故被害でむちうち症を患った場合、治療に関する通院がどの程度になるか、これはケガの状況や程度により個人差があるため一概にはいえませんが、多くのむちうち症のケースをみていくと、おおよそ3〜6か月程度の治療通院がひとつの目安になります。

個人差があるため、必ずしもこの目安がすべてではありません。ケースによっては治療に6か月以上かかることもあれば、症状が比較的軽い場合は治療期間が1か月程度と短く済むこともあります。

治療にどの程度の時間がかかるのかは医師の判断となりますので、きちんと治療を受けて医師の指示に従って完治を目指すことが大切です。医師の指示に従ってきちんと治療を受けても完治せず、6か月を超える治療をしても症状が残る場合には、後遺障害の申請を検討することになります。

注意点として、保険会社もむちうち症の治療期間の目安を把握していますので、治療が6か月に達する前に治療費打ち切りの話が出てくるかもしれません。ケースによっては事故から2~4か月程度と、もっと早い段階で治療費打ち切りの打診をされることもあります。

しかし、治療においては医師の判断がなにより優先されますので、もし治療打ち切りの話がでても、医師が治療の継続を必要とする判断をされれば継続して治療を行い、最終的な医師の判断を仰ぎ、その上で保険会社と話し合うようにしてください。

交通事故のむちうち治療に関する通院頻度の目安について

むちうち治療のための通院頻度は、週2~3回(月10日程度)が目安となります。

通院頻度が少なすぎると、保険会社から「症状が軽いから通院回数が少ないのだ」と評価されて、治療費が打ち切られやすくなる上、後遺障害等級認定を受けることも難しくなります。また、毎日通うなどの多すぎる通院も、治療費がかかり過ぎることになるため、打ち切りを誘発する一因になります。

通院頻度の増減による入通院慰謝料への影響について

入通院慰謝料には、自賠責基準・任意保険会社基準・裁判基準(弁護士基準)の3つの基準があります。自賠責基準が最低限の賠償基準であり、任意保険会社基準も自賠責基準に近い基準です。裁判基準が一般に最も高い金額であり、交渉の場合の弁護士基準も裁判基準に近いものになります。

自賠責基準での慰謝料は、日額4300円です。治療期間(事故日から治療終了までの期間)と実通院日数×2倍のいずれか短い方の日数分の慰謝料を受け取ることができます。したがって、自賠責基準の慰謝料は、通院する頻度が高く、通院回数が多い方が高額になるといえます。

一方、裁判基準(弁護士基準)の場合、基本的に治療期間(事故から治療終了までの期間)によって慰謝料額を算定するため、実通院日数が直接に慰謝料額を左右するわけではありません。もっとも、通院が長期かつ不規則である場合には、実通院日数の3.5倍の日数を治療期間とみなしますので、通院頻度が全く関係ないというわけではありません。また、あまりに通院頻度が少ないと、保険会社が裁判基準に近い水準での示談に応じにくくなりますので、適切な通院頻度を維持することが大切です。

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むちうち症の治療は整形外科などの医療機関で医師の判断に沿って適切に行う

交通事故被害でむちうち症の治療にあたるとき、医師の判断のもと、治療を継続して完治されることが何より望ましいのですが、ケガの具合によっては痛みや痺れが残り、症状固定の診断を受けることもあります。

万一後遺障害(いわゆる後遺症)が残った場合、後遺障害の等級認定を申請し、認定されることで事故被害の賠償金にも大きな変化が生じるため、この点については事前に認識しておく必要があります。

むちうち症に関する後遺障害の詳細については、次にご案内するページをご確認ください。

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後遺障害の認定には、整形外科などの医療機関で、服薬だけでなくリハビリなどの治療を6か月以上しっかり受ける、整骨院での治療を主軸にしないなど、治療の段階で留意しておくべき点があります。医師の指示通りに通院・診療しないなどしていると、治療の終盤でこうした注意点に気づいても後戻りできないからです。

万一に備え、整形外科などの医療機関で医師の判断に従い、完治にむけて治療を行うように心がけてください。

むちうち症の治療のなかで医師の治療方針に疑問があるときについて

通院先の医師によっては、必要十分な治療を行ってくれず、症状の改善が実感できないといった状況に置かれる方もいらっしゃいます。ここでは、そうした場合の対応をご説明します。

リハビリを受けられる病院に通う

むちうち症状の場合、受傷直後は安静を指示されることもありますが、その後はリハビリ治療を行うことが一般的です。医師によっては、むちうち症状でのリハビリにあまり積極的ではなく、痛み止めや湿布薬の処方のみになる場合があります。このような場合には、受傷から日が経たないうちに、リハビリ治療を行える病院に転院することをおすすめします。救急搬送先が自宅から遠く、リハビリに通いにくいという場合も同様です。

治療方針に疑問を抱えたまま通院を続け、何か月も経ってから転院を行うと、転院をきっかけに治療費が打ち切られることがあります。

画像検査を必ず受ける

事故から日が経たないうちに画像検査を受けるようにしましょう。レントゲンだけでなく、MRI検査を受けることが望ましいです。

主治医が画像撮影に積極的でない場合や、通院先にMRIの設備がない場合には、他の病院で検査を受けることも検討しましょう。

むちうち症では、画像上何も異常が出ないケースが多いですが、その場合でも後遺障害申請の際に画像を資料として提出することになります。また、万が一むちうち症ではない重大なケガによって痛みが出ている場合に、画像を撮影することで早期発見・治療につながりますし、症状が残ってしまった場合に事故とケガとの因果関係が否定されてしまうのを防ぐことができます。

改善が全くない場合には別のケガを疑う

むちうち症の場合、治療をしても辛い痛みが残ってしまうことはありますが、事故当初の症状から全く改善しないケースは稀です。数週間むちうち症の治療をしても、痛みや痺れが全く変わらなかったり、むしろ悪化している箇所がある場合には、むちうち症ではない何らかの器質的損傷(骨折や軟部組織の損傷)が原因となっているおそれがあります。症状のある部位についての専門医(肩の専門家、手の専門医など)を受診したり、改めて詳細に画像検査を受けたりするようにしましょう。

同じような治療をする2つ以上の病院を並行受診しない

ご自身の通院先の対応に疑問や不満がある場合、早い段階での転院も検討すべきであることは既にご説明したとおりですが、いままで通っていた病院にも継続して通院しつつ、同じ症状の治療のために別の病院にも通うという通院方法は避けるようにしましょう。

例えば、首のリハビリ治療を行う病院に、並行して2か所通うような通院の仕方は避けましょう。過剰診療として、保険会社から打ち切りの対象となったり、治療の必要性を否定されることがあります。

交通事故におけるむちうち症で、整骨院での施術を受けることの問題点とは?

むちうち症のケガの症状が軽度と感じるケースであれば、整形外科などの医療機関を受診せず、不定期に整骨院で施術を受ける程度で大丈夫だろうと判断される方がおります。

しかし、弁護士の立場からすると、整骨院での治療をメインにするのは避けた方がよいといえます。

整骨院や接骨院などの施術機関は、病院ではなく医師もいないため、後遺障害等級の評価をしてもらう際に、治療としてプラスの評価を受けることができません。整骨院に通って病院での治療が少なくなると、「病院での治療が少ない」という部分がマイナスに評価され、適正な後遺障害等級を得ることができなくなります。

また、整骨院治療のために保険会社が支払う治療費は、高額になることも多いため、早期に治療費打ち切りを受けやすくなりますし、保険会社から慰謝料額が低めに提示され、交渉しても増額しにくい状況になることもあります。

これらのリスクを踏まえたうえで、整骨院に行くことが絶対にいけないとは申しませんが、良かれと思ってたくさん整骨院に通うことで、かえって適正な後遺障害等級や損害賠償を得ることができなくなってしまうかもしれない点にはご留意ください。

交通事故被害でむちうちの症状が疑われるときは、治療と並行して弁護士にも相談する

ここまで交通事故被害におけるむちうち症の通院期間の目安や治療における留意点について説明してきました。

交通事故で外傷が伴わなければ無理に医療機関で診察を受けなくても大丈夫と判断せず、事故直後早めに整形外科で診察を受けて状況を確認するようにしましょう。

むちうち症は、事故から数時間経ってから症状が出てくることも多くありますので、その場合は症状を自覚し次第速やかに整形外科をはじめとする医療機関への通院と平行して、弁護士へ相談されることも検討してください。

特にむちうち症で後遺症(後遺障害)が残るようなケースでは、治療をきちんと受けていないことで後遺障害等級認定の際に「非該当」となることもあるため、弁護士から事前に適切なアドバイスを受けることで、適切な賠償金を受けられる可能性が高まります。

むちうち症で適切な後遺障害等級認定を受けるための注意点については、下記ページでもご紹介していますので、こちらも参考にしてみてください。

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この記事の監修

交通事故の被害者の方は、ただでさえケガの痛みで苦しい思いをされているなかで、初めての諸手続きの大変さや先の見通しの不安を抱えて生活されています。弁護士は医者と違い、ケガの痛みを癒すことはできませんが、不安を取り除くともに、適正な賠償を受ける手助けをできれば幸いです。

弁護士三浦 知草

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