交通事故における足指の後遺障害
calendar_today公開日:
event_repeat最終更新日:2023年07月12日
部位別の後遺障害等級認定について交通事故による後遺障害について
足指の後遺障害は、大きく欠損障害・機能障害に分かれており、「障害内容」と「障害の残った指との組み合わせ」によって、様々な後遺障害等級が定められています。
後遺障害等級表は、障害が発生した指の本数と、どの指に障害が発生しているかによって、複数の等級を定めています。
ここでは、足指に関する後遺障害の内容や等級について解説します。
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足指の機能・構造について
足指(「趾」とも表記します。)は、立った姿勢でバランスをとるのを助ける他、歩いたり走ったりする際に衝撃を緩和したり、前に向かう推進力を高めたりする役割を果たしています。目立たない部位ですが、足指を失ったり、動かせなくなったりすると、日常生活に支障が生じるといえます。
足指は、親指が第1指、人差し指が第2指、中指が第3指、薬指が第4指、小指が第5指といいます。
第1指については、先端側から末節骨と基節骨、第2~4指は先端側から末節骨、中節骨、基節骨で構成され、これらの骨をまとめて「趾骨」といいます。基節骨よりさらに踵側にあるのが中足骨です。
関節は、第1指では先端から「指節間関節(IP関節)」と「中足指節関節(MTP関節)」、その他の4指では先端から「遠位指節間関節(DIP関節)」、「近位指節間関節(PIP関節)」、「中足指節関節(MTP関節)」です。カルテなどではアルファベットの表記が使用される場合もあります。
足指の後遺障害について
足指に関する後遺障害ですが、足指を欠損したり、足指の関節の可動域に制限が残ったり、動かなくなってしまった場合、いくつかの条件はありますが後遺障害として認定される可能性があります。
後遺障害の種類として、欠損障害、機能障害があり、ここではそれぞれの種類の内容について解説します。
足指の欠損障害
足指を失った場合には、どこの指を欠損したかによって、等級が区分されます。
足指の欠損障害の後遺障害等級と認定基準
等級 | 認定基準 |
---|---|
第5級8号 | 両足の足指の全部を失ったもの |
第8級10号 | 1足の足指の全部を失ったもの |
第9級14号 | 1足の第1の足指を含み2以上の足指を失ったもの |
第10級9号 | 1足の第1の足指又は他の4の足指を失ったもの |
第12級11号 | 1足の第2の足指を失ったもの、第2の足指を含み2の足指を失ったもの又は第3の足指以下の3の足指を失ったもの |
第13級9号 | 1足の第3の足指以下の1又は2の足指を失ったもの |
「足指を失ったもの」とは、指の丸ごと全部を失ったものを指します。具体的には、中足指節関節から失ったものを意味しますが、中足指節関節以外の位置で切断されたものであっても、足指の付け根(基部)からの喪失の場合には、欠損障害が認定されます。
なお、リスフラン関節以上の位置で欠損した場合には、足指の欠損障害ではなく、より重い下肢の欠損障害となり、両足で第4級7号、片足で第7級8号が認定されます。
足指の機能障害
足指は、「用を廃したもの(用廃)」に達している場合に機能障害が認定されます。
足指の機能障害の後遺障害等級と認定基準
等級 | 認定基準 |
---|---|
第7級11号 | 両足の足指の全部の用を廃したもの |
第9級15号 | 1足の足指の全部の用を廃したもの |
第11級9号 | 1足の第1の足指を含み2以上の足指の用を廃したもの |
第12級12号 | 1足の第1の足指又は他の4の足指の用を廃したもの |
第13級10号 | 1足の第2の足指の用を廃したもの、第2の足指を含み2の足指の用を廃したもの又は第3の足指以下の3の足指の用を廃したもの |
第14級8号 | 1足の第3の足指以下の1又は2の足指の用を廃したもの |
足指の「用廃」とは、「第1の足指(親指)は末節骨の半分以上、その他の足指は遠位指節間関節以上を失ったもの又は中足指節間関節若しくは近位指節間関節(第1指にあっては指節間関節)に著しい運動障害を残すもの」とされています。
わかりにくいですが、具体的には以下のいずれかに当てはまる場合です。
- 第1指の末節骨の長さの1/2以上を失ったもの
- 第2~4指の中節骨を切断したもの
- 第2~4指の基節骨を切断したもの
- 第2~4指を遠位指節間関節か近位指節間関節で離断したもの
- 第1指の指節間関節の可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されるもの
- 第2~4指の中足指節関節か近位指節間関節の可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されるもの
足指が丸ごと欠損せずに一部だけを失った場合には、機能障害として評価されます。
また、可動域制限については、屈曲+伸展の角度を、健側(ケガをしていない側)と比較しますが、両足ともに指を失っていたり、健側とされる側にも障害がある場合には、以下の参考可動域角度との比較を行います。
足指の運動方向と参考可動域角度
運動方向 | 参考可動域角度 |
---|---|
屈曲(MPI) | 35 |
伸展(MPI) | 60 |
屈曲(IP) | 60 |
伸展(IP) | 0 |
足指における後遺障害の認定条件について
足指の後遺障害が認定されるためには、「画像所見」が重要です。足指の骨折や脱臼、靭帯損傷、神経損傷などの異常が、レントゲン・CT・MRIなどの画像から読み取れることが必要です。
指が動かない状態であっても、画像から読み取れる異常がない場合には、後遺障害等級は非該当になってしまう可動性が高いといえます。
足指の等級認定に向けた留意点について
最後に足指の等級認定に向けた留意点を解説します。
足指は小さい骨で構成されていることもあり、骨折や脱臼が見逃されやすい部位です。足を捻挫した際に、足指骨折がともに生じることも多いのですが、この際、捻挫の痛みに紛れて足指骨折が見逃されることがあります。
ケガから時間が経つと、予後が不良になるだけでなく、足指の障害と事故との因果関係が否定されてしまうリスクが高まります。少しでも痛みや違和感があれば、速やかにMRIやCTなどの画像検査を受けるようにしましょう。
交通事故被害による示談交渉は弁護士にご相談ください
この記事の監修
交通事故の被害者の方は、ただでさえケガの痛みで苦しい思いをされているなかで、初めての諸手続きの大変さや先の見通しの不安を抱えて生活されています。弁護士は医者と違い、ケガの痛みを癒すことはできませんが、不安を取り除くともに、適正な賠償を受ける手助けをできれば幸いです。
弁護士三浦 知草
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上野法律事務所
- 東京弁護士会
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