後遺障害9級の主な症状や慰謝料の相場について
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event_repeat最終更新日:2023年07月07日
等級別による後遺障害の内容について交通事故による後遺障害について
交通事故被害で後遺症が残った場合、後遺障害等級認定の申請手続きを行うことで、症状内容に応じた等級認定を受けられる可能性があります。
ここでは、後遺障害9級が認定される主な症状や慰謝料の相場について解説します。
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後遺障害9級の認定基準について
後遺障害9級は、障害の部位や内容によって、1号から17号までに分けられています。
認定された場合の労働能力喪失率は、基本的に35%とされます。
各号の後遺障害の内容と認定基準は以下のとおりです。
目の障害
9級1号~4号は目の障害です。
9級1号
後遺障害の内容 |
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両眼の視力が0.6以下になったもの |
認定基準 |
両眼の矯正視力が、万国式試視力表(ランドルト環の切れ目を見分ける通常の視力検査の方法)による視力測定で0.6以下になったもの |
9級2号
後遺障害の内容 |
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1眼の視力が0.06以下になったもの |
認定基準 |
片眼の矯正視力が、万国式試視力表(ランドルト環の切れ目を見分ける通常の視力検査の方法)による視力測定で0.06以下になったもの |
9級3号
後遺障害の内容 |
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両眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの |
認定基準 |
両眼について、V/4視標による8方向の視野(目の前の1点を見つめたときに同時に見える外界の広さ)の角度の合計が、正常視野の角度の60%以下になった場合 ・半盲症は、視野の左右いずれかの半部が欠損するもの ・視野狭窄は、視野周辺が、同心状に、または不規則に狭くなるもの ・視野変状は、網膜出血などによる病的な暗点・病的な視野欠損を指す(生得的な盲点を除く) |
9級4号
後遺障害の内容 |
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両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの |
認定基準 |
両眼について、普通に眼を閉じた場合に、角膜(くろめ)を完全に覆い得ない程度のもの |
鼻の障害(9級5号)
後遺障害の内容 |
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鼻を欠損し、その機能に著しい障害を残すもの |
認定基準 |
鼻軟骨部の全部又は大部分を欠損し、かつ、鼻呼吸困難又は嗅覚を脱失したもの(外貌醜状といずれか高い方の等級が認定される) |
口の障害(9級6号)
後遺障害の内容 |
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咀嚼及び言語の機能に障害を残すもの |
認定基準 |
咀嚼障害と言語障害の両方を残すもの 咀嚼障害とは、固形食物の中に咀嚼できないものがあること又は咀嚼が十分にできないものがあり、そのことが医学的に確認できる場合。 具体的には、不正咬合・咀嚼関与筋群の異常・顎関節の障害・開口障害・補綴できない歯牙損傷等の咀嚼障害の原因が医学的に確認でき、かつ、ご飯・煮魚・ハム等は咀嚼できるが、沢庵・らっきょう・ピーナッツ等の一定の固さの食物中に咀嚼できないまたは咀嚼が十分にできないものがあること 言語障害とは、4種の語音(ま行などの口唇音・な行などの歯舌音・か行などの口蓋音・は行の咽頭音)のうち1種が発音不能であるもの |
耳の障害
9級7号~9号は耳の障害です。
9級7号
後遺障害の内容 |
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両耳の聴力が1m以上の距離では普通話声を解することができない程度になったもの |
認定基準 |
両耳の平均純音聴力レベル(どこまで小さな音を聞き取れるかの程度)が60dB以上のもの |
両耳の平均純音聴力レベルが50dB以上であり、かつ、最高明瞭度(言葉を聞き取れる程度)が70%以下のもの |
9級8号
後遺障害の内容 |
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1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することが困難である程度になり、他耳の聴力が1m以上の距離では普通話声を解することが困難である程度になったもの |
認定基準 |
片耳の平均純音聴力レベル(どこまで小さな音を聞き取れるかの程度)が80dB以上であり、かつ、もう一方の耳の平均純音聴力レベルが50dB以上のもの |
9級9号
後遺障害の内容 |
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1耳の聴力を全く失ったもの |
認定基準 |
片耳の平均純音聴力レベル(どこまで小さな音を聞き取れるかの程度)が90dB以上のもの |
神経系統の障害(9級10号)
後遺障害の内容 | |
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神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの | |
認定基準 | |
高次脳機能障害 (器質性精神障害) |
通常の労務に服することはできるが、高次脳機能障害のため、社会通念上、就労可能な職種が相当程度に制約されるもの 具体的には、高次脳機能障害のため、4能力(意思疎通能力、問題解決能力、作業負荷に対する持続力・持久力、社会行動能力)のいずれか1つの能力の相当程度が失われているもの |
身体性機能障害 | 通常の労務に服することはできるが、身体性機能障害のため、社会通念上、就労可能な職種が相当程度に制約されるもの 具体的には、軽度の単麻痺が認められるもの |
非器質性精神障害 | 通常の労務に服することはできるが、非器質性精神障害のため、就労可能な職種が相当程度に制約されるもの 具体的には、以下のa又はbに該当するもの a 就労している者又は就労の意欲のある者の場合、判断項目②~⑧※のいずれか1つの能力が失われているもの又は判断項目の4つ以上についてしばしば助言・援助が必要と判断されるもの ※能力に関する判断項目 ①身辺日常生活 ②仕事・生活に積極性・関心を持つこと ③通勤・勤務時間の遵守 ④普通に作業を持続すること ⑤他人との意思疎通 ⑥対人関係・協調性 ⑦身辺の安全保持、危機の回避 ⑧困難・失敗への対応 b 就労意欲の低下又は欠落により就労していない者の場合、身辺日常生活について時に助言・援助を必要とする程度の障害が残存しているもの |
脊髄の障害 | 通常の労務に服することはできるが、脊髄症状のため、就労可能な職種が相当程度に制約されるもの 具体的には、1下肢の軽度の単麻痺が認められるもの |
外傷性てんかん | 数ヶ月に1回以上の発作が、転倒する発作以外の発作であるもの、又は服薬の継続により、てんかん発作がほぼ完全に抑制されているもの |
頭痛 | 通常の労務に服することはできるが、激しい頭痛により、時には労働に従事することができなくなる場合があるため、就労可能な職種が相当程度に制約されるもの |
失調・めまい・ 平衡機能障害 |
通常の労務に服することはできるが、めまいの自覚症状が強く、かつ、眼振その他平衡機能検査に明らかな異常所見が認められ、就労可能な職種が相当程度に制約されるもの |
疼痛性感覚異常 (RSD・カウザルギー) |
通常の労務に服することはできるが、疼痛により時には労働に従事することができなくなるため、就労可能な職種が相当程度に制約されるもの |
胸腹部臓器の障害
9級11号・17号は胸腹部臓器の障害です。
9級11号
後遺障害の内容 | |
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胸腹部臓器の機能に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの | |
認定基準 | |
呼吸器の障害 | 動脈血酸素分圧が60Torrを超え70Torr以下のもので、動脈血炭酸ガス分圧が限界値範囲内(37Torr〜43Torr)にあるもの |
循環器の障害 | 心機能が低下したもので、運動耐容能の低下が中等度であるもの すなわち、おおむね6METsを超える強度の身体活動が制限されるもの(平地を健康な人と同じ速度で歩くのは差し支えないものの、平地を急いで歩く、健康な人と同じ速度で階段を上るという身体活動が制限されるもの) |
心臓の房室弁又は大動脈弁を置換し、継続的に抗凝血薬療法を行うもの | |
食道の障害 | 食道の狭窄による通過障害を残すもの 具体的には、次のいずれにも該当するもの a 通過障害の自覚症状があること b 消化管造影検査により、食道の狭窄による造影剤のうっ滞が認められること |
胃の障害 | ・消化吸収障害※1とダンピング症候群※2が認められるもの ・消化吸収障害と胃切除術後逆流性食道炎※3が認められるもの※1 消化吸収障害とは、次のいずれかに該当するもの a 胃の全部を亡失したこと b 胃の一部を亡失し、低体重等が認められること※2 ダンピング症候群とは、次のいずれにも該当するもの a 胃の全部又は一部を亡失したこと b 食後30分以内に出現するめまい・起立不能等の早期ダンピング症候群に起因する症状又は食後2~3時間後に出現する全身脱力感・めまいなどの晩期ダンピング症候群に起因する症状が認められること※3 胃切除術後逆流性食道炎とは、次のいずれにも該当するもの a 胃の全部又は一部を亡失したこと b 胸焼け・胸痛・嚥下困難等の自覚症状があること c 内視鏡検査により食道にびらん・潰瘍等の所見が認められること |
小腸の障害 | 小腸を大量に切除したもの(残存する空腸及び回腸の長さが100cm以下になったもの) |
小腸皮膚瘻(ろう)を残すもの(瘻孔から漏出する小腸内容が概ね100ml/日以上のもので、パウチ等による維持管理ができるもの) | |
大腸の障害 | 大腸皮膚瘻を残すもの(瘻孔から漏出する大腸内容が概ね100ml/日以上のもので、パウチ等による維持管理ができるもの) |
便秘を残すもの(用手摘便を要すると認められるもの) | |
便失禁を残すもの(常時おむつの装着が必要なもの) | |
肝臓の障害 | 肝硬変(ウイルスの持続感染が認められ、かつ、AST・ALTが持続的に低値であるもの) |
膵臓の障害 | 外分泌機能の障害と内分泌機能の障害の両方が認められるもの 外分泌機能の障害とは、次のいずれにも該当するもの a 上腹部痛・脂肪便(常食摂取で1日糞便中脂肪が6g以上であるもの)・頻回の下痢等の症状が認められること b 次のいずれかに該当すること (a) 膵臓を一部切除したこと (b) BT-PABA(PFD)試験で異常低値(70%未満)を示すこと (c) 糞便中キモトリプシン活性で異常低値(24U/g未満)を示すこと (d) アミラーゼ又はエラスターゼの異常低値を認めるもの 内分泌機能の障害とは、次のいずれにも該当するもの a 異なる日に行った経口糖負荷試験によって、境界型又は糖尿病型であることが2回以上確認されること b 空腹時血漿中のC-ペプチド(CPR)が0.5ng/ml以下(インスリン異常低値)であること c Ⅱ型糖尿病に該当しないこと |
ヘルニアを残すもの | 腹壁瘢痕ヘルニア・腹壁ヘルニア・鼠径ヘルニア・内ヘルニアを残すもの(常時ヘルニアの脱出・膨隆が認められるもの又は立位でのヘルニアの脱出・膨隆が認められるもの) |
腎臓の障害 | 腎臓を失っていないもので、GFR(腎臓の糸球体が老廃物等をろ過する能力の程度)が30ml/分を超え50ml/分以下のもの |
片側の腎臓を亡失したもので、GFRが50ml/分を超え70ml/分以下のもの | |
その他泌尿器の障害 | ・尿路変更術を行ったもの(禁制型尿リザボア及び外尿道口形成術を除く、尿禁制型尿路変更術を行ったもの) ・排尿障害を残すもの(膀胱の機能の障害により、残尿が100ml以上のもの) ・蓄尿障害を残すもの(切迫性尿失禁又は腹圧性尿失禁のため、常時パッドを装着しなければならないが、パッドの交換までは要しないもの) |
9級17号
後遺障害の内容 |
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生殖器に著しい障害を残すもの(生殖機能は残存しているものの、通常の性交では生殖を行うことができないもの) |
認定基準 |
陰茎の大部分を欠損したもの(陰茎を膣に挿入することができないと認められるものに限る。) |
勃起障害を残すもの。次のいずれにも該当するものをいう。 a 夜間睡眠時に十分な勃起が認められないことがリジスキャン®による夜間陰茎勃起検査により証明されること b 支配神経の損傷等、勃起障害の原因となり得る所見が次の検査のいずれかにより認められること (a) 会陰部の知覚、肛門括約筋のトーヌス・自律収縮、肛門反射及び球海綿反射筋反射にかかる検査(神経系検査) (b) プロスタグランジンE1海綿体注射による各種検査(血管系検査) |
射精障害を残すもの。次のいずれかに該当するものをいう。 a 尿道又は射精管が断裂していること b 両側の下腹神経の断裂によるその神経の機能が失われていること c 膀胱頚部の機能が失われていること |
膣口狭窄を残すもの(陰茎を膣に挿入することができないと認められるものに限る。) |
両側の卵管に閉塞若しくは癒着を残すもの、頸管に閉塞を残すもの又は子宮を失ったもの(画像所見により認められるものに限る) |
上肢の障害
9級12号・13号は上肢の障害です。
9級12号
後遺障害の内容 |
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1手のおや指又はおや指以外の2の手指を失ったもの |
認定基準 |
片手のおや指を指節間関節(おや指の先端側の関節)以上で失ったもの 具体的には次のいずれかの場合 a 手指を中手骨(手の甲部分の骨)又は基節骨(指の付け根側の骨)で切断したもの b 指節間関節において、基節骨と中節骨を離断したもの |
人差指~小指のうち2本を近位指節間関節(指の真ん中の関節)以上で失ったもの 具体的には次のいずれかの場合 a 手指を中手骨又は基節骨で切断したもの b 近位指節間関節において、基節骨と中節骨を離断したもの |
9級13号
後遺障害の内容 |
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1手のおや指を含み2の手指の用を廃したもの又はおや指以外の3の手指の用を廃したもの |
認定基準 |
おや指と人差指~小指のうち1本の計2本、又は、人差指~小指のうち計3本の手指について、 手指の末節骨(指の先端側の骨)の半分以上を失い、又は中手指節関節(指の付け根側の関節)若しくは近位指節間関節(指の真ん中の関節。おや指にあっては指節間関節)に著しい運動障害を残すもの 具体的には a 手指の末節骨の長さの1/2以上を失ったもの b 中手指節関節又は近位指節間関節(おや指にあっては指節間関節)の可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されるもの c おや指については、橈側外転(おや指を人差指から離す動き)又は掌側外転(おや指を掌から離す動き)のいずれかが健側の1/2以下に制限されているもの d 手指の末節(第1関節から先)の指腹部及び側部の深部感覚及び表在感覚が完全に脱失したもの |
下肢の障害
9級14号・15号は下肢の障害です。
9級14号
後遺障害の内容 |
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1足の第1の足指を含み2以上の足指を失ったもの |
認定基準 |
おや指と人差指~小指のうち1本以上の計2本以上の足指について、その全部を失ったもの 具体的には、中足指節関節(指の付け根側の関節)から失ったもの |
9級15号
後遺障害の内容 |
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1足の足指の全部の用を廃したもの |
認定基準 |
片足の全ての指について、おや指は末節骨(指の先端側の骨)の半分以上、その他の足指は遠位指節間関節(指の先端側の関節)以上を失ったもの、又は中足指節関節(指の付け根側の関節)若しくは近位指節間関節(おや指にあっては指節間関節。指の真ん中の関節)に著しい運動障害を残すもの 具体的には a おや指の末節骨の長さの1/2以上を失ったもの b おや指以外の足指を中節骨(指の真ん中の骨)若しくは基節骨(指の付け根側の骨)を切断したもの又は遠位指節間関節若しくは近位指節間関節において離断したもの c 中足指節関節又は近位指節間関節(おや指にあっては指節間関節)の可動域は健側の可動域角度の1/2以下に制限されるもの |
醜状障害(9級16号)
後遺障害の内容 |
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外貌に相当程度の醜状を残すもの |
認定基準 |
顔面部の長さ5cm以上の線状痕で、人目につく程度以上のもの |
後遺障害9級に関する慰謝料の相場
後遺障害慰謝料には、自賠責基準・任意保険会社基準・裁判基準の3つの基準があります。
後遺障害9級の場合、自賠責保険による慰謝料金額(自賠責基準)は、249万円になります。これは、被害者救済のための最低限の補償のための基準です。
加害者側保険会社が示談提案する際の基準(任意保険会社基準)は、自賠責基準を下回らないものとされており、249万円よりは高い金額の提示がなされることが多いです。
もっとも、本来被害者が受け取るべき慰謝料水準よりは低い提示がなされることがほとんどです。
一方、裁判所が認定する慰謝料の相場(裁判基準)は、9級の場合、690万円です。裁判基準慰謝料が、後遺障害による精神的苦痛をてん補する賠償金の満額となります。
そして、弁護士が代理人として加害者側保険会社との交渉・裁判を行う場合、裁判基準に準ずる請求を行います。
後遺障害による苦痛について、適正な慰謝料を受け取るためには、弁護士に相談・依頼することを検討するのがよいでしょう。
交通事故被害による示談交渉は弁護士にご相談ください
この記事の監修
交通事故の被害者の方は、ただでさえケガの痛みで苦しい思いをされているなかで、初めての諸手続きの大変さや先の見通しの不安を抱えて生活されています。弁護士は医者と違い、ケガの痛みを癒すことはできませんが、不安を取り除くともに、適正な賠償を受ける手助けをできれば幸いです。
弁護士三浦 知草
-
上野法律事務所
- 東京弁護士会
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