交通事故被害の基礎知識

交通事故によるむちうち症の慰謝料相場について

交通事故によるむちうち症の慰謝料相場について

交通事故被害に遭った場合、被害を受けた多くの方は、入通院でお仕事を休んだ際の給与の賠償をはじめ、入通院に対する慰謝料や後遺障害が残った場合の慰謝料など、主に加害者側の保険会社から何らかの賠償を受けることができると、漠然ながらでもイメージされると思います。

これらの損害賠償については、ケガの程度や治療期間により異なりますが、交通事故被害で多いむちうち症でも、治療期間や後遺障害の等級認定の有無により慰謝料の金額も大きく変わってきます。

ここでは、交通事故被害でむちうち症を負った場合の慰謝料について、おおよその目安や相場について解説します。

この記事の内容

交通事故被害におけるむちうち症で請求できる慰謝料について

むちうち症の場合に請求できる可能性がある慰謝料は、「入通院慰謝料(傷害慰謝料)」と「後遺障害慰謝料」です。

入通院慰謝料(傷害慰謝料)

事故から治癒または症状固定に達して治療が終了するまでの精神的苦痛に対する慰謝料です。基本的には入通院期間の長さによって決まりますが、通院が長期・不規則な場合には、実通院日数が考慮されることがあります。また、事故の悪質性が高い場合などには、基準額よりも増額されることがあります。

後遺障害慰謝料

後遺障害が残ったことによる精神的苦痛に対する慰謝料です。基本的に後遺障害等級が何級かによって金額が決まります。

むち打ち症の場合、2つの慰謝料の他に、治療中に仕事を休んだ場合の「休業損害」や後遺障害によって労働能力を喪失したことの損害である「逸失利益」などの賠償を受けられる可能性があります。

慰謝料の相場には3つの基準がある

慰謝料には、「自賠責保険基準」、「任意保険基準」、「裁判基準」の3つの基準があります。

自賠責保険基準

自賠責保険から支払われる保険金の基準です。強制保険である自賠責保険が行う最低保障であるため、多くの場合、3つの基準の中で最も低額になります。もっとも、過失相殺がなされないため、被害者の過失が大きい場合には裁判基準を上回る場合もあります。

  • ※7割以上の重過失がある場合、一定の割合で重過失減額がなされます。
任意保険基準

任意保険会社が独自に定めている基準です。任意保険会社が賠償する金額は、自賠責保険基準を下回ることができないというルールがあるため、自賠責保険基準を少し超える程度に設定されているケースが多いです。被害者の方に対する示談提示は、任意保険基準に基づいてなされます。

裁判基準

交通事故裁判の中で形成された慰謝料基準です。現在の裁判実務では、この裁判基準に基づいて慰謝料の算定がなされます。多くの場合、3つの基準の中で最も高額になります。弁護士が示談交渉を行う場合のいわゆる「弁護士基準」も裁判基準に準じたものになります。

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むちうち症による入通院慰謝料の相場

では、むちうち症の場合に実際に受け取ることができる入通院慰謝料は、どの程度の金額になるでしょうか。

自賠責保険基準の場合、慰謝料の日額は4300円となります。実通院日数の2倍の日数と、総治療期間の日数のいずれか短い方の日数分の慰謝料が支払われます。

裁判基準では、実通院日数ではなく、総治療期間に基づいて慰謝料額を算定するのが基本です。なお、通院が長期・不規則な場合には、軽傷では実通院日数の3倍の日数を、重傷では実通院日数の3.5倍の日数を治療期間とみなすことがあります。

むちうち症の場合、後遺障害が残るような症状での治療期間の目安は6か月程度、治療頻度の目安は月10日(週2~3回)程度となりますので、ここでは治療期間6か月までの慰謝料額の相場を示します。

軽傷での通院期間毎の慰謝料

通院期間 自賠責保険基準 裁判基準
1か月 8.6万円 19万円
2か月 17.2万円 36万円
3か月 25.8万円 53万円
4か月 34.4万円 67万円
5か月 43万円 79万円
6か月 51.6万円 89万円
  • ※自賠責保険基準の金額については、対象日数を1か月あたり10日で計算しています。

交通事故によるケガの中では、むちうち症は軽傷の部類にはなりますが、治療期間6か月の場合には、自賠責保険基準と裁判基準では約37万円の差額が出ることになります。

むちうち症による後遺障害慰謝料の相場

むちうち症で認定される後遺障害等級は、ほとんどの場合、第12級か第14級です。「他覚的所見(検査画像からわかる異常など)」があるむちうち症は第12級、他覚的所見のないむちうち症は第14級の認定を受けられる可能性があります。

認定された等級に応じて、慰謝料額が決まります。

後遺障害慰謝料の相場

後遺障害等級 自賠責保険基準 裁判基準
第12級 94万円 290万円
第14級 32万円 110万円

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加害者側保険会社はどの基準で示談提案するのか

ここまでむちうち症の入通院慰謝料と後遺障害慰謝料の相場をご紹介してきましたが、自賠責保険基準と裁判基準では、同じ内容でも金額に大きな開きがあります。では、加害者側保険会社はどのような基準で示談提案されるのでしょうか。

保険会社は、それぞれ独自の基準をもっており、各保険会社で試算した金額で示談提案をされます。

しかし、保険会社からの示談提案で裁判基準に近い提示はほとんどなく、多くは自賠責保険基準に少し上乗せした金額か、自賠責保険基準に近い金額で示談提示をしてくることもあります。

被害者の方が裁判基準での示談を申し出ても応じてもらえない

被害者ご自身が慰謝料について調べて、保険会社から提示された示談提案が低額すぎると気付く場合もあります。その際に、被害者ご本人から裁判基準での慰謝料で示談したいと申し出たとしても、保険会社は応じてくれません。

各保険会社は、賠償金を支払う際の内部決裁基準を作っており、被害者ご本人が交渉を行う場合には、裁判基準での賠償をするという決裁はなされない運用になっているのです。

裁判基準に即した示談交渉を進めるには弁護士へ相談・依頼をする

ご自身への示談提案が低すぎると感じた場合には、示談をする前に弁護士に相談してみましょう。

弁護士が代理人として交渉を行い、訴外(裁判をしない)での解決をする場合、裁判基準満額の9割前後の慰謝料で示談を行えることが多くなります。また、特段減額がなされるべき事情がないのに裁判基準の9割前後に満たない場合や、事故態様が特に悪質で、慰謝料を通常の裁判基準よりも増額すべきといえる場合には、弁護士が裁判やADRを行って、適正な慰謝料の獲得を目指すこともできます。

むちうち症の場合でも、弁護士が交渉や裁判を行うことで、慰謝料が大きく増額することもありますので、示談書にサインをする前に一度弁護士に相談してみましょう。

この記事の監修

交通事故の被害者の方は、ただでさえケガの痛みで苦しい思いをされているなかで、初めての諸手続きの大変さや先の見通しの不安を抱えて生活されています。弁護士は医者と違い、ケガの痛みを癒すことはできませんが、不安を取り除くともに、適正な賠償を受ける手助けをできれば幸いです。

弁護士三浦 知草

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