交通事故における慰謝料の基準
交通事故の慰謝料の基準は、賠償額が高い順に「裁判所基準」「任意保険会社基準」「自賠責基準」の3つがあります。
「裁判所基準」は「自賠責基準」の2倍以上の賠償額になる場合もあります。そのため、「裁判所基準」をもとに示談交渉などを進めることが、被害者にとって一番の救済となります。「自賠責基準」がもっとも低いのは、自賠責保険が強制的に加入する保険であり、最低保障の存在だからです。
交通事故被害者の方の「慰謝料相場」は、"裁判所基準"となります。
- 裁判所基準自賠責基準
- 12級の場合
- 約700万円
内訳
-
- 後遺障害慰謝料
- 290万円(赤本基準)
-
- 逸失利益
- 基礎収入×0.14×7.7217(10年のライプニッツ係数) 逸失利益の計算例
年間基礎収入が4,000,000円の場合
4,000,000円 × 0.14 × 7.7217 = 逸失利益 432万4,152円
-
- 後遺障害慰謝料
- 入通院頻度と期間で増減します
- 14級の場合
- 約200万円
内訳
-
- 後遺障害慰謝料
- 110万円(赤本基準)
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- 逸失利益
- 基礎収入×0.5×4.3295(5年のライプニッツ係数) 逸失利益の計算例
年間基礎収入が4,000,000円の場合
4,000,000円 × 0.05 × 4.3295 = 逸失利益 86万5,900円
-
- 後遺障害慰謝料
- 入通院頻度と期間で増減します
「裁判所基準」について
- 交通事故の慰謝料の基準は、最低保障金額である「自賠責基準」、自賠責よりも賠償額が上回るものの十分とは言えない「任意保険会社基準」、これまでの交通事故に関する裁判を通じて、過去の判例からつくられた「裁判所基準」の3種類の基準があります。
表を見ると明らかなように、「裁判所基準」と「自賠責基準」では2倍以上の賠償額になる場合もあり、「裁判所基準」をもとに示談交渉などを進めることが被害者にとって一番の救済となるので、裁判所基準を目指して交渉を進めるのが理想的です。弁護士が示談交渉をする場合にはこの基準に基づいた金額で解決するケースがほとんどです。
任意保険会社基準とは
それぞれの保険会社が自社の基準で定めている慰謝料の基準です。「自賠責基準」をやや上回る額であることが多いようですが、「裁判所基準」の金額には及びません。具体的な内容は外部非公開が一般的です。
「任意保険会社基準」が「裁判所基準」よりも低いのは、保険会社が営利企業であり、賠償額の支払いをできるだけ抑えて利益を確保するためだと考えられます。
保険会社に「これ以上の賠償金の増額は無理だ」と言われても、あきらめる必要はありません。保険会社からの提示額はあくまで「任意保険会社基準」によるもので、「裁判所基準」による基準とは異なることがほとんどですので、実際に「裁判所基準」で賠償額を算出して増額の可能性があるようなら、「裁判所基準」で示談交渉を進めることも選択肢のひとつとして検討するべきです。

「むちうち」の賠償金の内訳
「むちうち」の賠償金に含まれるのは、代表的なものとして「休業損害」「入通院慰謝料」「後遺障害逸失利益」「後遺障害慰謝料」があります。
「休業損害」は、「むちうち」により仕事を休まざるを得ず収入が減ってしまった場合に支払いを受けることができるものです。
「入通院慰謝料」は、「傷害慰謝料」とも呼ばれ、「むちうち」になってしまったことや、そのせいで通院をしなくてはならなくなったことによる肉体的、精神的苦痛に対する賠償です。
「後遺障害逸失利益」は、「むちうち」の後遺障害が残ったために、事故以前のようには働けなくなったことによる収入の減少に対しての補償です。
「後遺障害慰謝料」は、「むちうち」の後遺障害が残ったことによる肉体的、精神的な苦痛に対する補償になります。

詳しくは「知らないと損する「交通事故の慰謝料の相場」」をご覧ください。
もっと詳しく!「むちうち」の慰謝料相場
「むちうち」は、後遺障害として等級認定された場合、ほとんどが「12級」か「14級」になります。「むちうち」は先に述べたとおり、後遺障害と認められるには通院中や治療終了後の診断書作成、後遺障害等級認定手続きなどにおいて注意するべきことが多々ありますので、早い段階で弁護士に相談されることをおすすめします。
「むちうち」後遺障害12級の場合
等級 | 後遺障害の内容 | 自賠責基準 | 裁判所基準 |
---|---|---|---|
12級13号 | ・局部に頑固な神経症状を残すもの ・医学的に客観的な証拠があり、 「むちうち」だと証明できる場合 |
93万円 | 290万円 |
代表的な解決事例の紹介
「むちうち」後遺障害14級の場合
「むちうち」で後遺障害が残る場合において、そのほとんどが14級です。「自賠責基準」と「裁判所基準」では2倍以上の開きがあります。適切な賠償額を望むなら、「裁判所基準」をもとに示談交渉を進める必要があります。
14級の場合、我慢できる程度の苦痛であるため、「弁護士に相談するまでもない」と思う方も多いようですが、後になって後悔することがないよう「12級の等級認定が受けられるかどうか」「提示賠償額が適切かどうか」について、示談前に弁護士に相談することをおすすめします。
等級 | 後遺障害の内容 | 自賠責基準 | 裁判所基準 |
---|---|---|---|
14級9号 | ・局部に神経症状を残すもの ・医学的には証明できなくとも、 治療経過などから説明できる場合 |
32万円 | 110万円 |
「むちうち」後遺障害非該当の場合
後遺障害の等級認定手続きを行ったけれど「非該当」となってしまった場合の慰謝料相場は個別に算定するほかありません。
損害賠償請求を行うにあたって、慰謝料や休業損害など請求できる項目の中身について、一つ一つ項目を検討し、裁判所基準で計算することで慰謝料を増額できる可能性について探ることになります。