通院日数が少ないことで低額な傷害慰謝料を主張する保険会社に、弁護士が医療記録等を根拠に反論、裁判基準に近い傷害慰謝料を獲得した事案
- 公開日:
- 2023年6月1日
示談交渉
- 解説弁護士
- 谷 靖介
T.Oさん・40歳代・自営業
- 受傷部位
- 下肢
- 後遺障害等級
- 非該当
- 傷病名
- 両下腿打撲
右足関節捻挫
- 解決方法
- 示談交渉
- 弁護士費用特約
- あり
- 取得金額
- 約40万円
ご依頼者の事故発生状況
- 事故態様
- (加害者)自動車/歩行者(被害者)
ご依頼者のT.Oさんは、停止していた自動車のすぐそばで運転席の知人と談笑していたところ、対向車がきたためあわてて発進した知人の車に衝突されました。この事故によりT.Oさんは、右足関節捻挫、両下腿打撲のケガを負いました。
解決に向けた弁護士の活動内容
ご依頼者のT.Oさんは、知人の運転する自動車に衝突されたということもあって、事故後すぐに届出をしませんでした。(※道路交通法上、運転者には交通事故後、直ちに通報する義務があります。)
しかし、受傷部位の痛みが酷いため、事故から約1週間後に病院で診察を受けるとともに、警察へ事故の届出をしました。そして、加害者の加入する保険会社から治療費等の補償を受けようとしたところ、保険会社から「事故について調査中なので治療費は支払えない」と対応を拒絶されてしまい、どのように対応すべきか当事務所にご相談され、ご依頼を受けることになりました。
その際、弁護士はT.Oさんに対して、保険会社からすぐに治療費の支払いが受けられないとしても、ケガの程度や治療の過程をきちんと記録に残すため、必要な治療をしっかり受けるようアドバイスしました。
交渉において、当初、保険会社は治療費の支払いを拒絶していました。
本件では、交通事故の発生から事故の届出まで1週間ほど時間が空いたため、保険会社が実際にこの事故が起こったのかを疑い、事故の調査が終了するまで支払いはできないというものでした。保険会社の立場からすれば、その考え方自体はそれほど不合理なものではありません。
しかし、被害者の立場からすれば間違いなく事故に遭い、痛い思いをしているのに治療費すら払ってもらえないことは、とても理不尽です。また、保険会社から賠償金をだまし取ろうとしていると疑われていることも、大変不愉快に感じられたと思います。
そして、T.Oさんの通院の記録(カルテ等)が、その後の傷害慰謝料の交渉で非常に役立つこととなりました。
なお、T.Oさんは事故の調査終了後、無事に保険会社から立て替えた分の治療費の支払いを受けられました。
続いて傷害慰謝料ですが、T.Oさんは医師に「2〜3週間に1回通院してください。」と指示を受け、その通りに通院していました。
治療終了後、弁護士は傷害慰謝料を中心とした損害賠償を請求したところ、保険会社は「2〜3週間に1度程度の通院であるならば、ケガの程度や精神的苦痛は極々軽いと思われるため、裁判基準での慰謝料は支払えない。」として、非常に低額な傷害慰謝料を提案してきました。
T.Oさんとしては、当初、保険会社から治療費を支払わないと言われたため、思うように通院できなかったこともあり、「通院日数が少ないから慰謝料を払わない。」との反論に、非常に憤慨していました。
弁護士としては、傷害慰謝料を算定するにあたり、実通院日数を参考にせざるを得ない部分もありますが、「通院日数が少ないから精神的苦痛は極々軽微である。」と即断する保険会社の態度には問題があると考えました。
そこで、弁護士はT.Oさんのカルテを全て取り寄せ、また、主治医に「2〜3週間に1度の通院と安静により治療効果が高まった。」ことを内容とする、簡易な意見書を作成してもらい、保険会社に反論しました。
その結果、当方の当初主張に近い、裁判基準をベースとした傷害慰謝料で合意することができました。
弁護士による事例総括
様々な事情から、保険会社が対応や支払いを拒絶することがあります。
本件事故でもご依頼者のT.Oさんは、保険会社の担当者の対応が理不尽だと感じ、非常にストレスを感じておられました。
このようなときに弁護士がご本人に代わって窓口となることや、今どうすべきか、今後どのような手続きが待っているか、誰からどんな補償が受けられるかをご説明することにより、多少なり見通しが立ち、安心していただけたのではないかと思います。
また、本件ではその後の交渉も難航してしまい、T.Oさんにはご心配をかける面もあったのですが、弁護士のアドバイスをよく聞いていただけたおかげで、きちんと医療記録を収集することができ、保険会社を説得して当方の主張通りの合意に至ることができました。
交通事故被害に遭い、保険会社の対応に不満や疑問を感じたら、一度弁護士にご相談されることをおすすめします。