社用車を無断使用した従業員が起こした自損事故に巻き込まれた被害者に対し、裁判により会社と社長個人の責任が認められ、保険会社から賠償を受けることができた事案
- 公開日:
- 2023年4月22日
- 最終更新日:
- 2023年4月26日
訴訟死亡事故
- 担当弁護士
- 齋藤 碧
S.Rさんの遺族・10歳代・無職(学生)
- 解決方法
- 訴訟
- 弁護士費用特約
- なし
- 取得金額
- 約8500万円
ご依頼者の事故発生状況
- 事故態様
- (加害者)自動車/その他(被害者)
被害者のS.Rさんは、社用車を無断使用していた従業員運転の車に同乗中、運転者が追い越しをする際にハンドル操作を誤ってスリップし、車がコンクリート製の建造物に衝突。
この事故によりS.Rさんは、事故時の衝撃で車外に放り出されて亡くなりました。
解決に向けた弁護士の活動内容
事故から数か月たっても被害者のご両親に対して、運転者及び運転者が勤めていた会社や保険会社から全く連絡がありませんでした。
人の死という重大な結果を引き起こしているにもかかわらず、謝罪も賠償提案もないことから、加害者側の対応を待つのではなく、被害者側から動く方法を知りたいということで、当事務所にご相談に来られました。
その後、何度かお話をさせていただき、当事務所へご依頼をいただきました。
受任後、運転者の勤務先に状況を伺ったところ、運転者が勤めていた会社は、従業員による社用車を使用した事故であるにもかかわらず、無断で社用車を持ち出されたことを理由に事故の責任を否定しました。保険会社も、会社が責任を負わない以上、保険会社にも保険金を支払う義務がないとして、支払いを拒否しました。
そのため、刑事記録をもとに、会社は従業員による社用車の無断持ち出しが可能な管理をしており、社長個人も従業員の管理監督を怠っていたことから、事故が発生したものとして裁判で争いました。
その結果、裁判所も会社と社長個人の事故の責任を認めた上で、判決により会社、社長個人、保険会社に対して賠償を命じました。
交通事故の責任を負う者の選択と責任を負う理由
交通事故の責任を負う者は、事故を起こした運転者のみとは限りません。
本件のように、従業員による社用車運転時の事故の場合、会社に社用車や鍵の管理の仕方や従業員を管理監督していた者に落ち度があれば、会社や管理監督者個人が直接的には交通事故発生に関与していなくとも、交通事故の責任を負うことになります。
また、本件では運転者ではない従業員が社用車の持ち出しに関与しており、判決により、持ち出しに関与した従業員にも運行供用者としての責任が認められています。
運転者は当然に事故の責任を負いますが、運転者が保険に入っていない場合には、運転者には資力がないことから、実際に賠償を受けることは困難です。
交通事故の解決の際には、誰が交通事故の責任を負うのか、また、実際に賠償を受けるためには誰に請求をすべきか等、事故を法的に分析することと加害者側の資力の分析が必要になります。
事故状況等の把握が困難な場合の証拠収集の方法
本件では、被害者のS.Rさんが事故によりお亡くなりになってしまったことから、依頼者であるご両親は、事故発生に至るまでの経緯や事故状況は全く分からない状態でした。
そのため、これらの事情を知る者は加害者側の関与者だけであったことから、ご両親による証拠の収集は困難な状況にありました。
また、裁判では、会社と社長個人の責任の有無が争点となり、会社の社用車と鍵の管理状況がどのようなものであったかが結論の決め手となりました。
被害者による独自の証拠の収集が難しい場合には、捜査機関である警察や検察が作成した書類や刑事裁判の書類が有用な場合があります。
本件では、裁判所から運転者の刑事裁判の書類の謄写を受け、また、検察庁への問い合わせにより、社用車の鍵の管理状況という会社内部の写真の開示を受けることができました。
弁護士による事例総括
法律上、保険会社が保険金を支払うべき事故であるにもかかわらず、事実関係が複雑で責任の有無の判断が困難な場合や保険会社の担当者の無知などで、保険金の支払いを拒否されることがあります。
被害者の方は、保険会社がそのようにいうのであれば仕方ないのであろうと考えることが多いと思いますが、保険会社の約款を調べ、法律上の責任の有無を分析して、保険会社の対応が正しいのかを見極める必要があります。
被害者の方にこうした見極めは難しいことが多いので、そのような際には、交通事故の経験が多い弁護士への相談や、場合によっては裁判で権利を主張することが必要となります。