会社役員の逸失利益が争点となった交通事故事件で、弁護士がご依頼者の職務の実態や事故後の身体の不具合などを丁寧に立証し、納得のいく内容で和解した事案
- 公開日:
- 2025年9月25日
紛争処理センターむちうち

- 担当弁護士
- 若松 俊樹
R.Sさん・50歳代・会社役員
- 受傷部位
- 背骨(頚椎・腰椎)
- 後遺障害等級
- 14級9号
- 傷病名
- 頸椎捻挫
- 解決方法
- 紛争処理センター
- 弁護士費用特約
- あり
- 取得金額
- 約380万円
ご依頼者の事故発生状況
- 事故態様
- (加害者)自動車/自転車(被害者)
ご依頼者のR.Sさんは、信号機による交通整理のされていない交差点において、R.Sさんが自転車で優先道路を走行し、交差点を直進して通過しようとしたところ、左から一時停止をせずに直進してきた相手方運転の自動車に衝突されました。
R.Sさんは、治療終了後自ら後遺障害申請を行い、頸椎捻挫については14級9号の認定を得ることができました。しかし、その後の具体的な損害額について、交渉の仕方がわからないとのことでご相談に来られました。
解決に向けた弁護士の活動内容
相手方保険会社と争いとなったのは後遺障害逸失利益の部分でしたが、その中でも、
- ①R.Sさんは会社役員であるところ、年収の中に労務対価以外のものが含まれるのではないか
- ②R.Sさんは休業をしておらず、今後も減収が見込めない以上、逸失利益が観念できないのではないか
上記2点が問題となりました。この点について相手方保険会社と交渉を行いましたが認識が埋まらなかったため、紛争処理センターに和解あっせん申立てを行うこととしました。
①については業務の実態、会社内ないし会社間の立場などから年収の中に労務対価以外のものは含まれないこと、②については休業していないのは本人の努力や仕事を休めない事情にあること、現在でも仕事上の支障が多数の点で出ていることを丁寧に主張立証した結果、こちらの主張にほぼ沿った形でのあっせん委員の提案により、納得のいく金額で和解となりました。
ご依頼者の職務の実態と年収
ご依頼者のR.Sさんは、2つの株式会社の代表取締役ないし役員を務めていました。これらは、ある医療法人社団に関係するメディカルサービス法人と、医療法人施設と併設している薬局の運営会社になります。
それぞれから源泉徴収票は出ているものの、いずれも肩書が会社役員であることから、年収全額のうち、労務の対価とみなされない利益配当相当分が存在するのではないかが争われました。
これについては、R.Sさんが医療社団法人との関係で、いわゆる雇われ社長の立ち位置にあり、業務内容や業務時間などについて裁量がなかったこと、業務委託契約で年間の報酬額が決められている以外に利益配当の余地がなかったことを資料とともに主張立証し、おおむねそれを前提とした収入額認定がなされました。
ご依頼者に減収がない場合でも逸失利益が認められるか
ご依頼者のR.Sさんは、職務の都合もあり通院期間中も休業をしておらず、その後も通常通り業務を継続しており、一貫して減収がみられませんでした。そのため、相手方保険会社からは、14級9号が認定されたとしても減収を生じる見込みがないのではと主張があり、逸失利益が認められるかが争われることとなりました。
これに対しては、たしかにR.Sさんは休業をしていませんが、会社役員という立場上休みにくい状況にあったこと、事故後現在に至るまでの仕事上の体の不具合があることとその内容、休業をしなかったのは本人の並々ならぬ努力という側面もあることを主張立証し、その結果、5%5年をベースとする逸失利益が認められました。
弁護士による事例総括
交通事故の治療が終了し、後遺障害が認定された後も、最終的な損害額の算定および金額について争いが生じることは多いです。特に今回のように会社役員や自営業者の方、事故後も休業しておらず減収が生じていない場合などに争われる可能性が高くなります。
このような場合は、仕事の実情や休業をしなかった理由、事故後現在に至るまでの不具合について資料とともに丁寧に主張立証していくことが求められます。こうした主張立証の組み立てはご本人では難しいことも多く、弁護士とともに事実関係や資料を検証し、主張を組み立てていくことが大変重要です。