事故前にご依頼者が抱えていた病気に関する素因減額が示談の争点となるなか、弁護士が粘り強く交渉を重ね、治療費を超える賠償金を獲得した事案
- 公開日:
- 2024年3月7日
示談交渉休業損害
- 担当弁護士
- 今井 浩統
M.Rさん・20歳代・アルバイト
- 受傷部位
- 背骨(頚椎・腰椎)下肢その他
- 後遺障害等級
- 非該当
- 傷病名
- 心的外傷後ストレス障害
頚椎捻挫
左外側半月板損傷
- 解決方法
- 示談交渉
- 弁護士費用特約
- あり
- 取得金額
- 約180万円
ご依頼者の事故発生状況
- 事故態様
- (加害者)自動車/自転車(被害者)
ご依頼者のM.Rさんは、見通しの悪い住宅街の交差点において一時停止後に右折したところ、右側から走行してきた相手方車両と衝突し、大ケガを負われました。また、この事故によりPTSDを発症しました。
解決に向けた弁護士の活動内容
ご依頼者のM.Rさんは、事故後に当事務所へご相談に来られ、事故全般の対応をお願いしたいとのことで受任することとなりました。
M.Rさんは相手方保険会社より、M.Rさんが事故前に患っていた病気の影響も大きい(素因減額)との主張を受け、低い示談金額を提示されていました。
次に、示談交渉においてポイントとなった点について解説します。
PTSDについて
ご依頼者のM.Rさんは、元々軽度の精神疾患を有していたため、PTSDの発症がそれによるものということが争点となっておりました。
従前、当該疾患の治療にあたっていた医師から、PTSDの発症とは無関係であるとの確認をいただいてはおりましたが、保険会社が譲歩せず、M.Rさん及び親族の方は訴訟を希望しなかったため、素因減額を認めることとして交渉を成立させました。
なお、PTSDの治療終了時期について、主治医も判断を悩むところではありましたが、M.Rさん及び親族の早期解決の希望を踏まえ、M.Rさんが一定程度回復したところで、相手方保険会社との関係においては治療終了という扱いとし、示談に向けた交渉をすることになりました。
既往症について
ご依頼者のM.Rさんは、元々両膝を痛めていたため、保険会社より悪化の原因がこれにある旨の主張がなされていました。
こちらについても、一度完治したものであったため、既往症は関係ない旨を主張していましたが、PTSDの件とあわせ、素因減額にて合意することとなりました。
転居費用について
ご依頼者のM.Rさんは、PTSDの治療にむけて親族と同居することになったため、本件以前に使用していた住居からの転居等に多額の費用を要しました。
こちらの費用については、M.Rさんの強い要望もあり、相手方保険会社担当者を説得し、当該費用も踏まえた合意となりました。
休業損害について
ご依頼者のM.Rさんは、事故当時小さな飲食店でアルバイトをしていたため、勤めていた飲食店経営者に、休業損害に関する交通事故関係の書類の記載をお願いしなければなりませんでした。
ただ、勤務先の経営者は交通事故関係の書類の書き方が分からず、当職にて丁寧に事情を確認し、書類の記載方法について何度も説明をすることとなりました。
M.Rさんが退職していたこともあり最初は消極的でしたが、当職の説得に応じて適切な書類を作成いただき、当該書類に基づいて相手方保険会社からの支払いを受けることができました。
弁護士による事例総括
本件は、PTSD、素因減額、既往症、実費の範囲、休業損害、過失割合など、多数の法的争点があったほか、ご依頼者のM.Rさんが県内の多数の医療機関、親族宅付近の多数の医療機関(他県)に入通院していたため、調査・分析には多大な時間を要しました。
M.Rさん及び親族の方が、PTSDへの影響等に鑑み、訴訟を避けたいとの希望が強かったため、交渉での解決に全力を注ぎました。M.Rさんにも過失はありましたが、このような状況下において、ご依頼者に自己負担を生じさせるわけにはいきませんので、治療費を超える賠償金を獲得しての示談に当職も安心することができました。