会社役員であり、役員報酬であることを理由に低額であった示談提案に対し、弁護士が的確な資料提出と主張・立証を行い、基礎収入を主張通りの労務対価額とした逸失利益が認められた事案
- 公開日:
- 2023年6月8日
紛争処理センター後遺障害
- 担当弁護士
- 齋藤 碧
G.Fさん・50歳代・会社役員
- 受傷部位
- 背骨(頚椎・腰椎)
- 後遺障害等級
- 14級9号
- 傷病名
- 頚椎捻挫
胸椎捻挫
腰椎捻挫
右手関節痛
- 解決方法
- 示談交渉
- 弁護士費用特約
- あり
- 取得金額
- 約440万円
ご依頼者の事故発生状況
- 事故態様
- (加害者)自動車/自動車(被害者)
ご依頼者のG.Fさんは右折するために停車中、後方から進行してきた相手方運転の車両に追突されました。この事故によりG.Fさんは、頚椎捻挫等の傷害を負い、約6か月間に亘って治療を継続しましたが、頚部痛や手の痺れ等が残存し、頚部の神経症状について事前認定の結果第14級9号に認定されました。
解決に向けた弁護士の活動内容
ご依頼者のG.Fさんは、相手方保険会社より示談提案書を受け取ったが、後遺障害等級がそもそも相当なのか分からないこと、後遺障害部分の提示が逸失利益と慰謝料を合わせても100万円に満たない低額な提示で納得できないということで、当事務所へご相談に来られ、ご依頼されました。
まず、G.Fさんは痛みや痺れといった神経症状を訴えられていたことから、後遺障害等級第14級9号の上位等級である第12級13号の認定可能性の調査を行いました。第12級13号と認定されるためには、その神経症状に画像上の異常所見等の他覚的所見による裏付けがあるか否かが重要です。
そのため、当事務所で事故当初に撮影された頚部のMRI画像やカルテの取得を行い、医学的な画像鑑定を専門に行っている業者に対して調査を依頼しました。その結果、画像上交通事故を原因とする外傷性の異常所見は見られないとのことでした。第14級9号が相当な認定結果であると考えられるため、これを前提として損害賠償請求を行うこととしました。
次に、G.Fさんは会社役員として役員報酬を得ており、治療期間中に短期間休業しても減収はありませんでした。役員報酬の会社の利益配当部分と労務提供の対価部分をどのような割合にするか、その金額の決め方は会社によって様々であることから、保険会社からそもそも逸失利益が発生しないとして争われることもあります。
G.Fさんは実際に労務提供を行っていたことから、相手方保険会社も逸失利益が発生すること自体は認めていました。しかしながら、その労務対価部分の金額は男女・学歴計・全年齢の平均年収に過ぎないとして、実態とかけ離れた基礎収入の提示をしてきました。
そこで、交通事故紛争処理センターにあっせんの申立てをし、具体的な職務内容、保有資格、会社の規模・売上げ、役員報酬の決定方法等の詳細な資料を提出し、労務対価部分の金額は男性・大学卒・同年齢の平均収入を下らないことを主張・立証し、当方の主張通りの基礎収入を前提とした逸失利益が認められました。
労働能力喪失期間についても相手方保険会社と交渉を行いました。
相手方保険会社は、申立人が休業していたとしても減収がなく、休業損害が発生しなかったことを理由に労働能力喪失期間は2年までしか認めないと主張してきました。
しかしながら、G.Fさんは短期間の休業後、神経症状に耐えて就労を行ったことから休業損害が実際には発生しなかったものです。G.Fさんには、第14級9号に認定された神経症状が残存しており、短期間で軽快する見込みもなかったことから、その労働能力喪失期間は裁判例で多く採用されている5年を下らないことを主張しました。
相手方保険会社が2年で改善するとの医学的な立証もできなかったことから、当方の主張通りの労働能力喪失期間を前提とした逸失利益が認められました。
弁護士による事例総括
法人役員の方が交通事故に遭われた場合、休業をしても役員報酬の減収がないことが多いことや、役員自身が報酬決定権限を持っている場合があることから、保険会社は休業損害や逸失利益を容易には認めてくれません。
そのため、実態を反映した賠償を受けるためには、過去の裁判例を参考にし、分析の上、交通事故前の職務内容、会社の規模・売上げ、役員報酬の決定方法等を主張し、相当な金額を算定し、かつ、数年分の信用性のある資料の提出をすることも必要となります。
本件では、ご依頼者のG.Fさんからの上記事情についての詳細な情報と資料のご提供をしていただけたことで、効果的な主張・立証ができたことから、交通事故紛争処理センターの斡旋担当者から当方の主張通りの認定をしてもらうことができました。
保険会社から「役員報酬だから」という理由だけで、減収があるのに休業損害を認めないとの提示や、低額な逸失利益の提示をされている方は、一度弁護士にご相談されることをおすすめします。