交通事故に関する解決事例 108

高齢主婦の重症事故において、相手方保険会社と粘り強く交渉を行い、示談にて1250万円の賠償金を獲得した事案

解説弁護士
谷 靖介

K.Zさん・70歳代・主婦

受傷部位
下肢
後遺障害等級
併合11級
傷病名
皮膚欠損
右足関節脱臼骨折
右大腿骨骨子部骨折
右中足骨・足根骨骨折
右下腿左挫挫傷
右下肢機能障害
解決方法
示談交渉
弁護士費用特約
なし
取得金額
1250万円

ご依頼者の事故発生状況

事故態様
(加害者)自動車/歩行者(被害者)

ご依頼者のK.Zさんは、信号のある横断歩道を渡っていたところ、前方不注意の右折自動車が横断歩道に進入し、衝突しました。この事故によりK.Zさんは、皮膚欠損、右足関節脱臼骨折、右下肢機能障害等の大ケガを負いました。

解決に向けた弁護士の活動内容

ご依頼者のK.Zさんは、入院して治療することとなり、症状固定に至る数か月前に一度ご来所され、弁護士から今後の流れや後遺障害申請のアドバイス等をさせていただきました。

その後、事前認定により後遺障害等級の認定結果が出たタイミングで再度来所され、保険会社との間の示談交渉のために受任させていただきました。

当方からK.Zさんに残存した後遺障害に基づき、妥当な損害賠償額を提案したところ、保険会社は、K.Zさんの主婦としての休業損害(主婦休損)について、著しく低い日額(1日当たりの労働対価)で計算したものを提案してきました。

主婦の家事労働を金銭的に評価するには、労働者の賃金の統計である「賃金センサス」の女性平均を使用するのが通常ですが、保険会社はK.Zさんが高齢であり、労働能力が衰えている等の理由で、平均賃金より低い水準の金額を主張してきました。高齢を理由に上記のような主張をされることはよくあります。

しかしK.Zさんは、事故前には毎朝畑に出かけて農作業をし、家では、通常の家事をこなしていた他、持病のある夫の生活の介助を献身的に行っており、その傍らジムで身体を動かす等、同年代の主婦よりも健康で元気によく働いていました。

そのような事情を保険会社に説明し、反論した結果、保険会社は休業損害の増額に応じました。

逸失利益(後遺障害が残ってしまったことによる将来的な減収)についても、保険会社からは、高齢者は稼働能力が衰えているとの理由で、低い基礎収入を主張されましたが、当方からは、休業損害で述べたのと同様に反論し、逸失利益についても、保険会社の当初主張から約1.5倍の増額となりました。

慰謝料(入通院慰謝料、後遺障害慰謝料)については、訴外で示談する場合、早期解決の利益が双方にあるとして、裁判基準で計算した額からは減額に応じざるを得ない部分があります。

しかし、本件では休業損害や逸失利益の点で、当方も調整や譲歩に応じた結果、入通院慰謝料、後遺障害慰謝料については裁判基準満額で合意し、最終的に当方の主張を大幅に取り入れた内容で示談が成立しました。

弁護士による事例総括

交通事故の被害者がご高齢の場合、骨折等を伴う重傷の場合は、重い後遺障害が残るケースが多いです。そのため、事故前にできたことができなくなってしまい、格段にQOL(生活の質)が下がってしまったにもかかわらず、保険会社からは、高齢との理由で低額の提案をされてしまい、ご納得いかないとの声をよくお聞きします。また、保険会社とそのようなやり取りをすること自体、ご高齢の方にとっては、煩わしく、わけがわからず、苦痛であることと思います。

本件のご依頼者であるK.Zさんは、事故により入院して、持病のある夫に心配をかけたこと、夫の世話が十分にできなくなったことを非常に悔やんでおられました。また、事故前は、同年代の人以上に元気に動き回っていたのに、保険会社からは何度も年齢の点を指摘されて、非常に憤慨していました。

現実に生じた損害の補てんであるという損害賠償の法的性質上、被害者の稼働能力については実年齢を考慮せざるをえず、裁判例でも、高齢者の逸失利益や休業損害が、若い人と同様に認められることは少ないと言わざるを得ません。しかし、事情によっては、増額が見込めることも少なくありません。

この点、交渉の中でどこまで増額が引き出せるか、裁判まで行った場合に、立証可能な証拠が収集できるかについて、十分な検討が必要です。

本件では、証拠の関係で若い人と同様の平均賃金の主張までは諦めたのですが、その代わり、慰謝料については裁判基準満額で合意し、何とかK.Zさんにまとまったお金が入る内容で示談出来ました。

最終的にK.Zさんからは、「力強い味方になってくれた」「よく話を聞いてくれた」とのお言葉をいただきました。K.Zさんには何の落ち度もなく、仲の良いご夫婦が突然見舞われてしまったご不幸でしたが、少しでも、ご夫婦が事故前のような日常生活を取り戻す手助けになれば嬉しく思います。

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