保険会社が事故後早々に一切の賠償金支払いを拒絶、弁護士が交渉を重ねご依頼者のご希望に沿うかたちで解決した事案
- 公開日:
- 2023年4月26日
- 最終更新日:
- 2023年4月27日
訴訟
- 担当弁護士
- 今井 浩統
M.Uさん・20歳代・会社員
- 受傷部位
- 背骨(頚椎・腰椎)
- 後遺障害等級
- 非該当
- 傷病名
- 頚椎捻挫
- 解決方法
- 訴訟
- 弁護士費用特約
- あり
- 取得金額
- 約30万円
ご依頼者の事故発生状況
- 事故態様
- (加害者)自動車/自動車(被害者)
ご依頼者のM.Uさんは信号待ちで停車中、後方から運転してきた加害者がM.Uさんの運転する車両に追突。この事故により、頚椎捻挫のケガを負われました。
ところが、事故直後に保険会社の担当者は、「賠償金の支払いは当社が対応しますのでご安心ください。」と話していたにもかかわらず、事故発生から10日後、突如治療費等の支払いをしませんと一方的な連絡をしてきました。
そのため、M.Uさんは何らの賠償も受けられておらず、自費で通院している状況でした。
解決に向けた弁護士の活動内容
ご依頼者のM.Uさんは、突然の治療費支払いの拒否に困惑し、複数の弁護士事務所を訪れたものの依頼には至らず、当事務所にご来所され、ご依頼いただくこととなりました。
当職から相手方保険会社に連絡をしたところ、担当者は話し合いどころか、資料の送付すら応じませんでした。
その後も何度か連絡をしましたが、終始まともに対応することはなく、突如として弁護士に依頼し、債務不存在確認訴訟を提起してきました。
加害者は、本件事故は車の損害が比較的軽微であったため、そのような事故態様でM.Uさんがケガを負うはずはないと主張してきました。
当職は、車両の傷の位置や停車位置等から、加害者の走行状況や速度、M.Uさんに加わった衝撃の程度や方向について詳細な主張・立証を重ね、また、自動車工学上の解析からM.Uさんが本件事故によりケガをしたことを立証しました。
その結果、裁判所は、本件事故によりM.Uさんがケガをしたことを認めました。
こうして裁判所から相当額の和解案の提示がありましたが、加害者は、M.Uさんはケガをしていないという従前の主張を維持し、和解を拒絶しました。
裁判所の和解案は、裁判官の認定した事実に沿って作成されるものであるため、和解が決裂し判決となった場合、当該和解案に近い金額の判決となることが多いと考えられています。
しかし、判決を取得するにはM.Uさんが裁判所において尋問を受ける必要がありました。また、判決が出されれば、加害者は控訴することも考えられました。この場合、判決までに半年、控訴審で半年と、さらに1年ほどの期間を要する可能性もありました。
なお、交通事故の被害者の尋問は、事故の状況や治療の経過を中心に話してもらうので、他の証人尋問と比較するとそれほど負担の大きいものではありません。
M.Uさんは、仕事を休んでまで裁判所に出廷しなくてはならないこと、負担が大きくないとはいえ、尋問に応じなくてはならないこと、解決まで1年ほどの期間を要する可能性があること、訴訟が継続していることで精神的な不安があること等を踏まえ、当職と何度も協議した結果、低額な和解でも構わないから早期に解決してほしいという結論を出されましたので、再度金額を調整のうえ、和解により解決することとなりました。
弁護士による事例総括
訴訟で提出された証拠を見る限りでは、本件の保険会社の担当者は、本件事故発生から支払拒絶の10日までの間に、本件事故とご依頼者のM.Uさんの受傷を否定するような調査をしたという形跡は全くありませんでした。
交通事故の被害者という弱い立場にある人に対し、交通事故を日常的に扱う保険会社の担当者が何ら調査をすることなく、怠慢により支払拒絶をするという対応には大いに問題があると感じています。残念ながらこのような担当者にあたってしまい、二次被害に遭ってしまわれる被害者の方は一定数おられます。
本件は、当職が依頼を受けた後に債務不存在確認訴訟を提起されたというものでしたが、弁護士に依頼しておらず、裁判経験のない方がいきなり訴訟を提起されれば、損害賠償請求そのものを諦めてしまいかねないものです。
交渉段階であればご自身で対応される方も多くいらっしゃいますが、訴訟になってからは専門家でなければ対応できないところが多々ございます。万が一そのような状況になってしまった場合には、早急に弁護士に相談してください。
弁護士の業務は、専門的な知識と経験を有し、依頼者のサポートや依頼者に代わって事件を解決することです。弁護士は、依頼者のお気持ちに沿って解決の努力をしますので、金銭のみを追求するということはありません。
本件も、ご依頼者のM.Uさんが経済的なメリット・デメリットと精神的なメリット・デメリットについて、M.Uさん自身の価値観で考え、和解に応じるという判断をされましたので、そのような希望に沿えるよう和解の努力をしました。
改めて保険会社の対応については大いに問題を感じるところではありますが、最終的にM.Uさんが治療費等実費を負担することのない金額で早期に和解することができました。