左踵骨骨折による被害者の生活状況を丁寧にヒアリングして交渉に臨み、保険会社提案額より主婦休損・傷害慰謝料を増額することができた事案
- 公開日:
- 2023年5月23日
示談交渉主婦(夫)休業損害
- 解説弁護士
- 谷 靖介
T.Jさん・70歳代・主婦
- 受傷部位
- 下肢
- 後遺障害等級
- 非該当
- 傷病名
- 左踵骨骨折
- 解決方法
- 示談交渉
- 弁護士費用特約
- なし
- 取得金額
- 約300万円
ご依頼者の事故発生状況
- 事故態様
- (加害者)自動車/自転車(被害者)
ご依頼者のT.Jさんは、交差点を自転車で直進していたところ、対向車線から右折してきた相手方自動車に衝突されました。この事故により、踵骨骨折の重傷を負いました。
解決に向けた弁護士の活動内容
ご依頼者のT.Jさんは、通院して治療を重ねていましたが、2か月ほど経ったところでお子様から「母は踵を骨折して不自由しているのに、保険会社の対応に納得いかない。」ということでご相談に来られました。
その後も継続的にご相談をお受けし、後遺障害の認定(非該当)を受け、保険会社から示談額の提案があった段階で、T.Jさんとお子様が再度ご来所され、受任させていただきました。
本件の損害賠償金の中で大きな割合を占めるのは、休業損害と傷害慰謝料でしたが、保険会社からの提案は、非常に低い水準のものでした。
主婦休損について、保険会社は入院日数に少し色を付けた程度の日数分しか支払わないと提案してきました。また、計算の基礎となる日額も、自賠責の最低基準のものでした。
しかしT.Jさんは、受傷した部位が踵だったことから、退院できた後も家の中でまともに動き回ることはできず、やっと家事に復帰できたのは、退院から1か月後でした。
そのようなことをT.Jさんから丁寧にヒアリングし、徐々に家事労働ができるようになった程度に応じて休業損害を計算しました。
そして、主婦としての労働対価は、自賠責の最低基準ではなく、きちんと評価されなければなりませんので、賃金日額については、女性労働者の平均値を基準として計算しました。
こうして保険会社に提案した結果、当初保険会社から提案された休業損害の2倍以上の額で合意ができました。
傷害慰謝料についても、保険会社は裁判基準よりもかなり低額の提案をしていました。
T.Jさんは、自動車に衝突されて転倒し、約2か月間入院しています。退院した後も約1か月の間は、つかまり立ちでないと立てない、歩けない等、身動きもままなりませんでした。結局、総治療期間は約1年にも及び、その間、ケガによる痛みや治療の苦痛等に耐えたのですから、その精神的苦痛は正当に賠償されなければなりません。
当方からは、裁判基準の傷害慰謝料を提案し、交渉の結果、裁判基準に近い額で合意することができました。
また、細かい点ですが、入院雑費(入院中のこまごまとした支出について、細かく計上せずに、日額○円という形で支払われるもの)についても、自賠責の最低基準での提案でしたので、当方からは裁判基準の日額を提案し、当方の主張通りの額で合意することができました。
弁護士による事例総括
ご依頼を受けて弁護士が介入するまで、相手方保険会社はご依頼者のT.Jさんに対し、後遺障害等級非該当の結果について異議申立てはしない旨の念書を書かせるなど、友好的な態度ではありませんでした。そのような保険会社とのやり取りは、ご苦労が多かったことと推察いたします。
また、T.Jさんは弁護士に依頼するまでに、保険会社とのやり取り等、お子様にとてもよく頑張ってもらったので、少しでもお金を多くもらって、娘に分けてあげたいとお話されていました。
ご高齢の方が事故に遭った場合、骨折などの重傷を負ってしまうケースが多いため、その後きちんと後遺障害の認定を受けたり、保険会社から補償を受けることは非常に大切です。
事故に遭われて苦しい思いをされた分、一緒に苦労されたご家族も含めて、その後の生活が少しでもゆったりと過ごせるよう、適正な賠償金を得るお手伝いをさせていただければ幸いです。