共有物分割請求について

換価分割(代金分割)とは?そのメリット・デメリットについて

他の共有者から共有物分割請求を求められた場合、共有者全員で協議を行い、解決を図る必要がありますが、その方法のひとつとして「換価分割」があります。

換価分割とは、共有不動産を全て売却し、そこで得た売却代金を各共有者の持分に応じて分配し、共有の解消を図る方法で、代金分割とも呼ばれています。

この記事の内容

現物分割や代償分割での解消が難しい場合、換価分割で解消を図ることになりますが、共有者のなかには自身の持分をはじめ、共有地を手放すことに難色を示す方がいるかもしれません。こうなると売却も難しくなるため、交渉が決裂して共有物分割訴訟に移行し、裁判で和解協議を行うか、判決に沿って共有地の解消を進めるかたちとなります。

ここでは、換価分割におけるメリット・デメリットについて解説します。

換価分割までの流れ

共有物分割請求を求められた場合、共有者同士で協議を行い、どのような方法で分割するか話し合いを重ねることになりますが、共有者の中で土地の所有にこだわる方がいるときは、現物分割か代償分割による方法で解決に向けた話し合いを行います。

東京都を例にとると、現物分割は区や市の条例による制限がある地域では現物分割が難しく、代償分割で土地の所有をめぐり話し合いを行うことになります。

代償金を用意できないなど、話し合いで代償分割が難しい場合、換価分割による解決に向けた話し合いを進めることになります。もっとも共有者全員が最初から共有地すべてを売却して、その費用を分けたい意向があれば、換価分割で協議をまとめることもできます。

協議による解決が困難となれば、共有物分割訴訟となり、裁判での解決を目指すことになります。裁判所では和解協議を行うことになりますが、現物分割も代償分割も難しいとき換価分割による判断をされることがあります。

この場合、共有地を競売にかける手続きを進めることになり、その売却代金について持分の状況に応じて分配されることになります。

競売による売却は市場相場よりも低い可能性がある

競売による売却となれば、一般的な相場よりも低い金額で落札されることが多く、この点においては換価分割が不利になることもあります。地方の場合、地域によっては競売となれば、任意で売却するより低くなるケースもあります。

東京都23区などの都心や県庁所在地などの場合、近年は不動産市場の高騰の影響を受けて、競売による売却でも任意売却による売却金額と遜色ない金額で売却できるケースも多くなっています。

訴訟に移行したときは不動産の市場動向を確認し、競売となると経済的に不利になるかどうかを検討の上で、和解協議を重ねていく必要があります。

換価分割のメリット

換価分割は、現物分割も代償分割もできないとき、最後の手段として用いられる印象もありますが、共有地全てを売却し、その売却益を持分に応じて分配するので、公平感のある分割をすることができます。この公平感が一番のメリットともいえるでしょう。

そのときの社会状況や不動産市場動向によっては、共有地を任意売却することで相場よりも多くの売却益を得ることができ、換価分割による各共有者への分配金額が大きくなる可能性もあります。

換価分割のデメリット

換価分割は公平性のある分割ができる一方で、裁判で換価分割による判決となった場合、共有地すべてを競売にかけることになります。そのため、共有不動産の持分を失いたくない共有者にとっては不満の残る結果となります。そのため、持分を失いたくない共有者は、裁判のなかでご自身の希望を考慮してもらえるよう、和解による解決を目指す必要があります。

その他にも、競売判決に沿って競売を申し立てるときは、競売にかける共有不動産の固定資産税の評価額に応じて、裁判所に予納金を納めなければなりません。普通の戸建てでも80〜100万円程度かかることから、躊躇される方も多いと思いますが、実際は共有不動産が売却された際に売却代金のなかから優先的に返還されることになるため、一時的な費用の立て替えと考えてください。

共有物分割請求訴訟の控訴は一審判決より不利益な判決になる可能性がある

換価分割による競売の判決に納得ができず、控訴を検討される方もおりますが、共有物分割訴訟は一般の民事訴訟と違う特徴があります。

日本の民事訴訟は、「不利益変更禁止の原則」と呼ばれる、控訴審では原審よりも控訴した方が不利益になる変更となる判決は出せないという決まりがあります。

しかし、共有物分割請求訴訟においては、不利益変更禁止の原則が適用されないため、控訴をしても一審の判決より不利益な内容になる可能性があります。弁護士と今後の見通しについてよく協議したうえで、慎重な判断が求められます。

換価分割で注意すべき点とは?

換価分割を検討する場合、共有地すべてを売却し、売却益を持分に応じて分配する方法であれば複雑な手続きにはなりませんが、例えば、一部の共有地は換価分割したいが、残りの共有地は代償分割したいなど、換価分割のみでなく、他の方法との組み合わせで考える方もおり、注意が必要です。

共有者同士できちんと合意がとれているか、換価分割と他の方法による分割の組み合わせで、土地の境界線の状況をはじめ、水道管やガス管の状況、必要な手続きの確認など、多岐にわたる状況確認が重要になります。多くの専門家の知識が必要となるため、弁護士などにご相談されることをおすすめします。

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この記事の監修

谷 靖介

Yasuyuki Tani

  • 代表弁護士
  • 東京法律事務所
  • 東京弁護士会所属

相続や熟年離婚に絡む共有物分割請求をはじめ、遺産分割協議や遺留分に関するトラブルなど、共有物分割請求や相続紛争問題を中心に、法律を通してご依頼者の方が「妥協のない」「後悔しない」解決を目指し、東京都を中心に活動を行っている。

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