共有物分割請求について

現物分割とは?そのメリット・デメリットについて

共有物分割請求を共有者のひとりから求められた場合、共有者全員で協議を行い、解決を図る必要がありますが、その方法のひとつとして「現物分割」があります。

現物分割とは、共有物を物理的に分ける方法で、現物の不動産をそのまま分けることを指します。

共有者間で協議がまとまらなければ裁判所での和解もしくは判決となりますが、裁判では現物分割ができないかの検討が不可欠です。これは、現物分割での分け方がもっとも公平性が高いと考えられているからです。

しかし、現物分割を実行できる場面は多くはなく、特に共有不動産が一戸建てなどの建物であった場合、建物を2つに分けることはできませんので、別の解決方法を探ることになります。土地も分筆が現実的ではないことが多いといえます。また、共有者が多いと現物分割により土地が細分化され、かえって不動産の価値が下がることなどもあります。その他にも、建ぺい率や容積率の問題で、分割後に思い描いた建物が建設できない恐れがあるなど、注意が必要になります。

ここでは、現物分割における注意点やメリット・デメリットについて解説します。

この記事の内容

現物分割で注意すべき点とは?

共有物の解消について、他の方法で共有者間の合意ができるのであれば、必ずしも現物分割にこだわる必要はありません。現物分割の検討を進めるのであれば、この方法が共有者全員にとってプラスの結果をもたらすか、慎重に検討して進めるとよいでしょう。

  • 現物分割が物理的に可能であるかどうか確認する。
  • 現物分割をすることで、共有物である土地の市場価値が下がらないか確認する。
  • 分筆後に家を建てる計画がある共有者は、建ぺい率や容積率にも注意を払い、ご自身が希望する内容で建築できるか確認する。
  • 分筆後、埋設されている水道管やガス管の状況で、問題が発生しないか確認する。
  • 分筆後、道路との接続状況がどのようになるか確認する。
  • 分筆後、土地の境界が特定できるか確認する。
  • 分筆の比率や状況により価額に差が生じた場合、譲渡所得税や贈与税の課税対象になるか確認する。

共有物分割請求における現物分割では、一筆の土地を分筆して分けることで上記のような問題に直面することが多く、法的には現物分割が原則とされながらも、有効活用されているとは言いにくいのが現状といえます。

上記の他にも、自治体によっては地域の良好な住環境維持を目的として、分筆した土地に敷地面積の制限を条例で設け、一定の面積がないと分筆地に建物の建築ができないよう、規制をかけていることもあります。

分筆した土地に建物を建築することは、分筆地がある程度広い敷地であれば検討の余地がありますが、実際はこのように多くのハードルがあるため、難しいといえます。

現物分割が原則できないケース

冒頭でも少し触れましたが、現物分割を原則選択できないケースが2つあります。

  • 建物など物理的に分けることが明らかに難しいケース
  • 現物分割をすることで共有物の価値が著しく減少するケース

共有物が建物の場合は、そもそも物理的な分割ができないため、現物分割が適さないケースとなります。

また、共有している土地が狭いケースでは、現物分割をするとさらに土地が狭くなるため、新たな利用が困難になることで価値を失うなどの理由から、こちらも現物分割が適さないケースになります。(特に東京都23区など、都心部で最低敷地面積などの規制が及んでいる場合は、現物分割がより難しいと考えられます)

こうした理由から、2つのうちどちらかに当てはまる場合、現物分割による共有解消を選択することが難しいため、他の方法(代償分割・換価分割)を探ることになります。

現物分割のメリット

共有不動産を現物分割できた場合、それぞれの共有者の単独所有となりますので、分割した土地を自由に活用・運用することができます。共有者全員の意見集約をする必要がなく、アパートを建てて賃貸経営をはじめたり、ご自身が住む家を建てたり、土地そのものを不動産業者に売却するなど、思い描いた土地活用を自由にできることが一番のメリットといえます。

ただし、このようなメリットを享受するには、分割した土地の面積が一定程度あり、土地活用に不自由のない広さがなければ難しいかもしれません。

現物分割のデメリット

広大な土地の現物分割であれば、不動産の価値を下げることなく、ご自身の考えで自由に建物の建設や開発を行うことも可能です。しかし、都市部を中心に多くの共有不動産はこのような状況になく、狭い土地の現物分割を行うと、土地がさらに小さくなることで評価額を下げてしまうことがデメリットしてあげられます。

また、土地の形状によっては、現物分割することで道路との接続(接道)がない土地が生まれたり、建ぺい率や容積率が建物を建設するための法的要件を満たさない土地になるなど、現物分割によって土地を単独所有できても、非現実的な結果となってしまいます。

現物分割での共有解消を検討しているときは?

ここまで、土地の分筆による現物分割は注意点がいくつもあることをお伝えしてきました。

土地を分割することで、分割したそれぞれの土地が道路と接する義務を負っているか、分割した土地に家などを建設する場合、建築基準法に抵触する違法状態が発生していないかなど、未然にトラブルを防ぐ準備が求められます。

想定外のトラブルを防ぐには、現物分割に際し必要な資料の精査や、どのような問題点が発生するのか、弁護士をはじめ、測量士、土地家屋調査士、不動産仲介業者など不動産に関わる多くの専門家に意見や見解を求める必要があります。

土地の共有者が二人の場合、平等に半分ずつ分けるだけで何の問題があるのかと感じるかもしれませんが、土地を分けることで隣地との境界を確定させる必要がでてきたり、状況に応じて多くの確認事項と提出書類がでてきます。共有物分割請求に詳しい弁護士などに現物分割の妥当性や問題点、必要事項を伺いながら、慎重に判断されるとよいでしょう。

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この記事の監修

谷 靖介

Yasuyuki Tani

  • 代表弁護士
  • 東京法律事務所
  • 東京弁護士会所属

相続や熟年離婚に絡む共有物分割請求をはじめ、遺産分割協議や遺留分に関するトラブルなど、共有物分割請求や相続紛争問題を中心に、法律を通してご依頼者の方が「妥協のない」「後悔しない」解決を目指し、東京都を中心に活動を行っている。

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