離婚・不倫慰謝料の基礎知識

協議離婚とは?協議の進め方や注意点について

協議離婚とは?協議の進め方や注意点について

離婚を決意したら、その意志を相手に伝えて話し合いをし、条件面などお互いが納得できたら役所に離婚届を提出して離婚成立となります。このように、裁判所を通さず話し合いで離婚が成立する形態を協議離婚といい、離婚事案の多くがこの形態で行われています。

協議離婚は夫婦間の話し合いが中心になりますので、理性的に協議が進めば問題ないのですが、未成年のお子さんがいたり、財産分与が複雑になると条件面で合意が難しくなることもあります。

ここでは、離婚協議の進め方や注意点について解説します。

この記事の内容

協議離婚とは?

協議離婚とは、夫婦で話し合って離婚することと離婚に伴う条件を決め、離婚届を提出して行う離婚です。最も一般的な離婚の形といえます。

協議離婚の流れや進め方について

協議離婚では、夫婦のいずれかが離婚を切り出し、離婚する・しないや離婚する場合の条件を話し合います。合意ができた場合には、役所に離婚届を提出し、離婚が成立します。

離婚を成立させるためには、離婚自体を合意する他、未成年の子がいる場合には親権者を合意することが最低限必要です。

その他の離婚条件(財産分与や養育費など)は、決まっていなくても離婚届を出すことができます。そのため、条件をしっかり話し合わずに離婚してしまう夫婦もいらっしゃいます。もっとも、後のトラブルを防ぐため、基本的には離婚時にしっかり条件を合意しておいた方がよいといえます。

口頭での合意の場合、「そんな約束をしていない」と相手から反故にされてしまう可能性もあります。合意した内容は離婚協議書に記載し、夫婦で確認して署名押印をするようにしましょう。

相手が合意した約束を守ってくれるかどうかに不安がある場合には、「公正証書」で離婚協議書を作ることを検討しましょう。公正証書を作成しておけば、相手が約束した養育費や財産分与の支払いをしてくれない場合に、わざわざ裁判を起こすことなく強制執行(給与や預貯金の差押えなど)を行うことができます。

協議離婚は話し合いをできることが前提

協議離婚は、相手とコミュニケーションをとって話し合いができることが前提です。次のような場合、協議離婚を進めることは難しいといえます。

無視や「離婚する気はない」の一点張り

そもそも相手が離婚に応じる気が全くない場合、協議をすること自体が困難で、条件を調整する段階までたどり着くことができません。

感情的にお互いを責めるだけになってしまう

離婚に際し、お互いに相手に言いたいことがあるのは当然のことですが、相手の悪かったところを言い合うだけになってしまうと、話し合いは進みません。

感情的に相手を攻撃し合ってしまうと、話し合いの内容が離婚条件から逸れていったり、お互い意地になって条件を譲歩できなくなってしまい、協議離婚成立は難しくなります。

DV、つきまとい、迷惑行為のリスクがある

相手からDVやつきまといの被害を受けている場合、話し合いで顔を合わせること自体に危険が伴います。

迷惑行為を受ける危険がある場合、相手が協議に応じると言っていても話し合うことは避け、身の安全確保を第一にする必要があります。

このような話し合いが難しい事情がある場合、協議で解決することにこだわらず、離婚調停を起こすことを検討しましょう。

調停は時間のかかる手続きですが、進まない話し合いを無理に続けるより、かえって離婚までスムーズに進むこともあります。

また、調停では身の安全を確保しながら手続きを進められますので、身の危険がある場合にはためらわず調停を利用することをおすすめします。

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協議離婚で注意すべきこととは?

ここでは、協議離婚を進める中で注意すべき点をご説明します。

合意内容は書面に残す

合意した内容は必ず「離婚協議書」などの形で書面化しておくようにしましょう。証拠となる書面がないと、後で合意が破られたときに、調停や裁判で約束した内容を認めてもらうことが難しくなります。

また、万全を期すのであれば離婚の公正証書を作ることが望ましいといえます。もし合意が破られてしまっても、公正証書があれば裁判を経ることなくそのまま強制執行ができます。特に養育費や慰謝料の支払い約束が守られるか不安がある場合には、公正証書にしておくことで、いざという時には相手の給与や預貯金を差し押さえるといった効果的な対応を取ることが可能です。

不利な合意内容・条項の漏れに注意する

離婚に関する知識がないと、不利な条件であるにも関わらず、そうとは知らず合意してしまうリスクがあります。また、決めるべき事柄が漏れた状態で合意してしまう可能性もあります。

離婚協議書を作るときには、紛争の蒸し返しを防ぐため、「清算条項」を設けて、協議書に書いてあること以外にお互いに請求するものはない、という確認をするのが通常です。そのため、離婚協議書にサインした後で、決めておくべき条件があったことに気づいても、追加で請求を行うことは難しくなります。

合意内容に不安がある場合には、実際にサインをする前に弁護士に相談してみるとよいでしょう。

不明確な取り決めを避ける

せっかく合意ができ協議離婚が成立しても、あいまいな取り決めをしてしまうと、お互いが自分に有利な解釈をして、後からトラブルが再燃してしまいます。

例えば、「子どもの学費は夫が負担する」と取り決めていても、学校の入学金は「学費」か、受験勉強のための塾代や参考書代はどうか、といった解釈が分かれて、スムーズな負担の分担ができない可能性があります。

離婚の合意内容は、可能な限り一義的に解釈できる内容にしてトラブルを避けるようにしましょう。

時効に気を付ける

離婚することだけ・または一部の条件だけを合意して、離婚届を出してしまい、後から各種の請求をすることもできますが、この場合、相手に請求可能な期間に注意が必要です。

財産分与は離婚成立から2年、年金分割は離婚成立から2年で請求を行うことができなくなります。また、離婚慰謝料請求権は、離婚時から3年で時効にかかります。定められた期間を過ぎると請求を行うことができなくなるので注意しましょう。

「先に離婚届だけ出す」かどうかは慎重にすべき

協議離婚の場合、条件を決めることはいったん置いておき、先に離婚届を提出して離婚を成立させるということもできます。しかし、条件を合意せずに離婚を先行させるべきかどうかは、慎重に判断すべきです。

ご自身が婚姻費用を支払っており婚姻期間が長いほど出費が増えるケース、相手が渋々離婚に同意しているが、条件の話をしてしまうと離婚の意思を翻す可能性が高いケースなどでは、先に離婚を成立させてしまうことのメリットがあります。他方、こちらが相手に養育費や財産分与の請求をする必要があるケース、相手が慰謝料を支払ってでも離婚を望んでいるようなケースなどでは、ひとたび離婚できてしまうと相手が譲歩しなくなり、離婚後の条件調整が難航することもあります。

何はともあれ離婚を先にすべきか、それとも条件調整をきっちり行ったうえで離婚に踏み切るべきかは、個々の状況とご自身の希望によってケースバイケースです。判断に迷う場合には一度弁護士に相談してみましょう。

話が進まないなら早めに別居を検討する

こちらは離婚を希望しているのに、相手が話し合いを避けたり、言っていることが二転三転したりすることもあります。

話し合いが進まない場合には、調停や訴訟を利用して離婚の手続きを進めていかなければなりません。離婚することに争いがない場合には同居したままでも問題は少ないのですが、相手が離婚自体を拒否する可能性がある場合、早めに別居を検討することをおすすめします。

相手が離婚を拒否したとき、裁判所に離婚を認めてもらうためには離婚事由、つまり、夫婦関係が既に破綻しているといえるだけの事情が必要です。離婚の話し合いをしていても、配偶者との同居が続いている場合、離婚事由があると認めてもらえない可能性が高くなります。

裁判所での離婚手続きに備えるためにも、離婚の話し合いが進まない場合には別居を検討しましょう。

協議離婚とのメリットとデメリットについて

話し合いで円満に離婚成立すれば問題はないのですが、ケースによっては協議そのものが難しいこともあり、メリット・デメリットがあります。ここでは、そのメリット・デメリットについて解説します。

協議離婚のメリット

協議離婚のメリットとしては次のようなものがあります。

費用がかからない

協議離婚は、夫婦だけで進められますので、費用がかからずに進められる利点があります。

第三者を入れる必要がない

人によっては、離婚というプライベートな家庭の話に第三者を交えることに抵抗があることでしょう。協議離婚であれば夫婦のみで完結でき、他人に離婚の話を詳らかにする必要はないというメリットがあります。

柔軟な解決が可能

協議離婚における条件は、夫婦双方が合意できていればよいため、裁判所が関与する場合に比べ柔軟な取り決めが可能です。

条件調整の動きが早い

協議であれば、調停や訴訟のように、月1回の期日を待つ必要がありません。

お互いに条件を出し合って、意見のキャッチボールができれば、迅速に離婚協議をまとめることができます。

協議離婚のデメリット

次に、協議離婚のデメリットについて、どのような点があげられるのかを見ていきましょう。

不利な条項・トラブルにつながる条項に気付かない

第三者が介入しないというメリットの反面、当事者しか協議の内容を確認しないため、一方に不利な条項や、解釈や履行をめぐってトラブルになりやすい条項に気づかないまま合意してしまいやすいといえます。

約束を軽視されやすい

夫婦だけで離婚協議書を作ると、重大な合意であるという意識を持ちにくく、約束が軽視されてしまうことがあります。離婚協議書で約束した支払いや面会交流が後で滞ってしまった場合、改めて調停や裁判を行う必要が出てきてしまいます。

ひとたび迷走・脱線すると停滞してしまう

協議離婚は、建設的に話し合いができていれば合意までの動きが早いのですが、話が脱線したり、些細な点にお互いがこだわって迷走してしまうと、停滞しやすくなります。調停や裁判と異なり、軌道修正をしてくれる人がいないため、いったん停滞してしまうと、話が全く前に進まなくなり、かえって時間がかかってしまうこともあります。

相手の性質によっては危険が伴う

相手にDVやつきまといといった行為がある場合、直接話し合うこと自体に危険が伴います。話し合いの場に赴くことで、再度被害を受けたり、隠している居場所を特定されたりするリスクがあり、そもそも協議を行うべきか自体に慎重な判断が必要です。

協議がうまくいかないときは弁護士に相談・依頼するべきか?

協議がうまく進まないときには、弁護士に依頼することを検討しましょう。

弁護士が代理人になることで、依頼者であるご自身の利益を最大化するように動いてもらえます。相手と直接のやりとりも弁護士が行いますので、威圧されたり、弁が立つ相手に押し切られたりする不安がなく協議を進められます。

また、弁護士は離婚事件の処理に慣れているため、複雑・多数の条件を整理し、遺漏なく条件を取り決めることが可能です。

さらに、当事者の方は離婚事件の全体像を知らないことがほとんどですが、弁護士であれば、調停や裁判になった場合も見据えた対応が可能です。

離婚協議をご自身で進めることに不安がある場合には、まずは弁護士に相談し、ご自身のケースでは弁護士に依頼することで、どのようなメリットがあるかを聞いてみるとよいでしょう。

この記事の監修

離婚・不倫は、当事者の方を精神的に消耗させることが多い問題です。また、離婚は、過去の結婚生活についての清算を図るものであると同時に、将来の生活を左右するものであり、人生全体に関わる問題といえます。
各問題を少しでもよい解決に導き、新しい生活をスタートさせるお手伝いができれば幸いです。

弁護士三浦 知草

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