離婚裁判とは?訴訟の進め方や注意点について
calendar_today公開日:
event_repeat最終更新日:2024年01月17日
離婚の種類や手続きの流れについて
離婚協議や調停で話し合いがまとまらず、調停も不調に終わり離婚合意できないとき、裁判所に訴訟を提起し、裁判で離婚の成立を目指すことになります。
離婚裁判は、離婚を成立させるための最後の手段となりますが、訴訟提起には条件も伴います。
ここでは、離婚裁判の進め方や注意点について解説します。
- この記事の内容
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離婚裁判とは?
離婚裁判(離婚訴訟)は、夫婦で離婚の合意ができない場合に、裁判所の判断で離婚を命じてもらうための手続きです。
裁判所は、離婚を認めるか否かに加え、未成年のお子さんがいる場合には、親権者も決定します。また、養育費や面会交流等のお子さんに関する事項、財産分与、年金分割なども、当事者が請求すれば、「附帯処分」として一緒に決定が下されます。
離婚に関する訴訟提起はいくつかの条件がある
相手と離婚の合意ができないからといって、いきなり離婚訴訟を起こせるわけではありません。離婚という夫婦間の問題については、まずは話し合いを優先するべきであると考えられており、裁判をする前には必ず離婚調停を経る必要があります。
調停を経ずに離婚訴訟を起こした場合、裁判所は訴訟として事件を進めてくれず、職権で調停に付されることになります。
離婚が認められるには「離婚事由」が必要
訴訟で離婚が認められるためには、法定離婚事由(民法770条1項1~5号)があることが必要です。
法定離婚事由は、夫婦関係がもはや継続できないような重大な事由となります。不貞行為、暴力、理由もなく家に寄り付かず生活費を入れないといった事情が典型です。
被告が離婚を拒否している場合、離婚事由があることを原告が証明しないと、裁判所に離婚を認めてもらうことはできません。
離婚裁判には3つの種類がある
離婚裁判には、和解離婚、認諾離婚、判決離婚があります。それぞれの内容について説明します。
和解離婚
離婚することや離婚の条件について、裁判手続き内で合意してする離婚を和解離婚といいます。「和解」という言葉を使いますが、お互いに許しあうという趣旨ではなく、条件を調整して合意するという意味です。
「お互い離婚すること自体には納得しているが、条件面で折り合えずに裁判になった」というようなケースでは、和解離婚が成立することが多いといえます。
和解離婚では、判決で離婚するよりも早期に柔軟な解決が図りやすいといえます。また、お互いに一応納得して離婚が成立するため、合意した支払を任意に行ってもらいやすいといえます。
認諾離婚
被告が離婚することを争わず、「離婚することを認諾する」という陳述をすることで、直ちに離婚が成立し、裁判手続きが終了するものを認諾離婚といいます(人事訴訟法37条1項)。
ただし、認諾離婚が認められるのは、「離婚すること」自体のみが請求されている場合です。親権者の指定や附帯処分の請求がある場合には、認諾離婚で手続きを終わらせることができないこともあり、実際に認諾離婚がなされるケースは少ないです。
判決離婚
裁判官が、離婚を認めるか否か、離婚の各種条件をどうするかについて判断をして結論を決めるのが判決離婚です。「離婚裁判」の一般的なイメージに近い解決の仕方といえるでしょう。
判決離婚に至るのは、大別して、どうしても夫婦間で意見の隔たりが埋まらない場合と、被告が裁判手続きに協力してくれない場合です。
夫婦間の対立が解消できず、和解ができない場合には、これまで当事者が行ってきた主張・提出してきた証拠を踏まえ、裁判所が結論を出します。徹底的に争ったうえでの判決となるため、どちらかが判決に不満をもって控訴をしたり、判決で命じられた義務の履行(財産分与など)を行わずに強制執行が必要になったりと、更に争いが続いていく可能性もあります。
一方、被告が裁判を起こされたのに無視する等、裁判手続きに参加してくれない場合にも、判決離婚となります。民事訴訟のように原告の請求内容をそのまま判決で命じる「欠席判決」をするわけではなく、裁判官が職権で判断を行います。とはいえ、原告の主張のみに基づいて判断がなされますから、基本的には原告の希望どおりの判決が出ることが多いといえます。
離婚裁判のメリット・デメリットについて
離婚成立に向けた解決は、ほとんどが協議離婚で成立しています。協議がこじれて離婚調停による解決も多くはなく、離婚裁判で解決を図るケースはさらに少ない状況です。
ここでは、離婚裁判のメリット・デメリットについて説明します。
離婚裁判のメリット
離婚裁判には次のようなメリットがあります。
- 公正な判断を受けられる
離婚裁判では、裁判官が公平中立な立場で判断を下してくれます。話し合いで配偶者に威圧されたり、口のうまさに乗せられてしまうことを懸念する方もおられますが、裁判ではそのような心配はありません。
- 裁判官が手続きを指揮してくれる
裁判官は、最終的に判決を出す場合にはどうするかということを考えながら手続きの指揮をしてくれます。
調停における調停委員は、話し合いの交通整理をしてくれますが、何かを決める権限はありません。対して、裁判官は結論を決める権限を持つ存在ですから、ときには「今判決を書くとしたらこうなる見込みです」という心証を開示しながら、手続きを強力に進めてくれます。
- 相手方が非協力的でも手続きが進められる
配偶者が頑なに離婚を拒否したり、不合理な主張を繰り返したり、そもそもこちらの請求を無視したりと非協力的な場合には、離婚裁判が離婚を成立させる唯一の手段となります。
配偶者がどれほど離婚を拒否していても、夫婦関係が破綻していると認められれば、判決で離婚を命じてもらうことができます。
離婚裁判のデメリット
離婚裁判には次のようなデメリットがあります。
- 時間・労力の負担が大きい
離婚裁判は、強制的に結論を出せる強力な手続きである反面、当事者にとって負担の大きい手続きでもあります。
裁判期日はおおよそ月1回程度のペースで開かれるので、訴訟を起こしてから解決までにはどんなに早くとも半年以上の時間がかかります。対立が激しく、争点の複雑な事案では、2年を超える期間を要することもあります。
また、基本的に主張内容は書面にまとめ、証拠とともに提出する必要があります。調停のように、その場で話を聞いてもらうということはほとんどできません。そのため、期日に臨む準備にはかなりの労力を要します。
- 費用負担が大きい
離婚訴訟を行う場合、弁護士費用や裁判所に納める収入印紙代がかかります。また、財産分与の際、不動産の価格に折り合いがつかないといったケースでは、数十万円の費用をかけて鑑定を実施しなければならないこともあります。
手数料の安い調停手続きに比べて、費用面でもかなり負担は大きいといえます。
- 柔軟な解決が図りにくい
離婚裁判は話し合いの手続きではないため、柔軟な解決には不向きです。「慰謝料をすぐに支払えないので、分割払いをしたい」「不動産が売れたタイミングで財産分与のお金を支払いたい」といったニーズには対応しにくいといえます。
特に、判決離婚の場合、「~せよ。」という結論が命じられてしまうので、当事者の都合で調整を行うことはできません。
- 感情対立が激しくなる
裁判では、お互いに主張・反論を書面でぶつけ合うため、相手を激しく非難する局面もしばしば出てきます。そのため、元々悪化していた夫婦の関係性が、なお一層険悪になってしまいます。
幼いお子さんがいる場合、離婚訴訟で激しく争ったことで禍根が残り、その後の面会交流などの支障に繋がってしまうこともあります。
離婚裁判で弁護士を就けずに対応することは可能か?
弁護士はあくまで代理人ですので、当事者が「本人訴訟」の形で離婚裁判を行うことはもちろん許されています。
もっとも、現実的には、当事者本人が代理人弁護士をつけずに訴訟に対応することは非常に難しいことです。
離婚裁判は、話し合いではないため、「誠意をもって話せばわかってもらえる」という手続きではありません。主張は、口頭で話すのではなく、基本的に書面にまとめて提出しなければなりません。また、相手と認識が異なる事実については、証拠を提出して証明できなければ、事実として認めてもらうことができません。
また、ケースによっては、尋問を行ったり、不動産鑑定や調査嘱託(裁判所が官庁や会社等の団体に調査を依頼し、回答を求める手続き)の申出など、専門知識が必要な手続きを行う必要も出てきます。
裁判所は中立な立場ですから、当事者の一方が何をすべきかわからずに困っていても、助けてくれるわけではありません。本来出すべき証拠や主張を出すことができないまま、よくわからないうちに結論が出てしまうということにもなりかねません。特に配偶者に弁護士がついている場合、配偶者に一方的に有利な主張や証拠を出してくる可能性が高いといえます。
離婚裁判で弁護士を就けることのメリット
裁判の専門家である弁護士をつけることで、必要十分な主張と証拠を提出して裁判を戦うことができます。また、弁護士は全体の流れを見ながら、調査嘱託等の必要な手続きの申出を適時に行い、進行が有利なものとなるように動いてくれます。
また、必要な書類や証拠の準備も弁護士が代わりに行うため、当事者が訴訟にかける労力を軽減することができますし、進め方がわからない精神的な不安も軽減することができます。
離婚裁判の流れについて
離婚成立に向けて訴訟を提起する場合、どのような流れで進行するのか、ここでは離婚裁判の流れについて説明します。
①家庭裁判所へ裁判を起こす(訴訟提起)
離婚裁判を起こす際には、訴状(原告の求める請求内容と請求の根拠となる事実を記載した書面)と添付書類(戸籍謄本・調停の終了証明書など)、そして主張を支える証拠の写しを、管轄の裁判所に提出します。
訴状を受け付けると、裁判所は、訴状に形式面での不備がないか、訴状審査を行います。
②期日の決定と被告側の答弁書の提出
訴状審査で問題がなければ、裁判所から原告に裁判期日の調整の連絡が入り、初回期日が決定されます。
期日が決まると、被告に訴状の送達(書留での郵送)がなされ、同時に期日の呼び出し状が送られます。通常、期日の出席を求めるとともに、期日の1週間前までに答弁書を提出するよう指示がなされます。
答弁書は、原告の請求内容に対する被告の回答・反論を記載した書面です。とはいえ、最初から詳しい反論をしなければならないわけではありません。期限までに請求棄却を求める簡単な答弁書をひとまず出し、初回期日の後で詳細な書面を提出することが多いです。
なお、答弁書を出さず、期日にも出席できなかった場合、「被告には争う意思がない」と捉えられ、言い分を述べる機会のないまま判決が出てしまうので、必ず答弁書を出すようにしましょう。
③第1回口頭弁論
第1回口頭弁論では、訴状と答弁書の陳述が行われます。
被告は、答弁書を出していれば初回期日のみ欠席が許され、答弁書を陳述した扱い(擬制陳述)となります。そのため、初回期日には原告のみが出席し、訴状の陳述と次回期日の設定のみの数分で期日が終わることが通常です。
④争点整理のための期日
2回目以降の期日では、被告も本格的な反論・主張を行い、お互いに必要な主張と証拠を出していきます。被告の反論、原告の再反論…と交互に書面を出すことが多いです。また、裁判では主張を支える証拠が重要ですので、「書証」(証人以外の証拠)も提出します。
お互いの主張がおおよそ出そろったところで、多くの場合、裁判官から和解協議の打診がなされます。対立がどうしても埋められず、和解ができない場合、判決を見据えた段階に入っていきます。
⑤当事者尋問・証人尋問
主張と書証を出し尽くしても和解ができない場合、必要に応じて尋問が行われます。
尋問は、「書証」に対して「人証」ともいわれます。原告・被告本人への「当事者尋問」と夫婦以外の親族といった第三者への「証人尋問」があります。
離婚裁判全体では、尋問を行う前に和解をして終了するケースが多いですが、徹底的に争う場合には、尋問が実施されます。
⑥離婚裁判の判決
全ての主張と証拠(書証・尋問)が出し尽くされると裁判の審理が集結し、判決が出されます。
判決の内容に不服がある場合、判決書が送達された日の翌日から2週間以内に控訴をする必要があります。期限を1日でも過ぎると控訴ができなくなってしまうので注意が必要です。
夫婦ともに控訴をせずに2週間が経過すると、その時点で判決が確定します。判決が確定すると、原告は10日以内に離婚届を提出する必要があります。その際、判決書の謄本と判決の確定証明書を添付します。
確定した判決は、「債務名義」となるため、もし判決で命じられた債務の履行(財産の分与など)がされない場合には、相手方の財産を差し押さえて強制的に判決の内容を実現することになります。
離婚裁判にかかる時間とは?
離婚裁判が解決するまでには長い期間がかかることが多く、1~2年を要することもよくあります。
離婚裁判は、これまでの結婚生活の清算であり、離婚するか否か・お子さんの問題・財産の問題など、争点が多岐にわたることが多いため、どうしても時間がかかりやすいといえます。
また、既にご説明したとおり、離婚裁判を起こす前段階として必ず離婚調停を行う必要がありますので、調停手続きを始めてから離婚裁判が終わるまで3年以上かかることもあり得ます。
離婚裁判にかかる費用とは?
弁護士費用以外に離婚訴訟にかかる費用としては、次のようなものがあります。
まず、裁判所に納める手数料(印紙代)として、離婚と親権のみを求める場合1万3000円、加えてその他の附帯処分(財産分与や養育費等)を求める場合、1つの請求につき1200円ずつがかかります。また、書面を送達するために、予め裁判所が定める額の切手(予納郵券)を提出する必要もあります。
その他、鑑定や当事者以外の証人を呼んでの尋問を実施した場合、別途費用がかかります。特に、不動産鑑定を行うと、数十万円の費用を要します。
訴訟費用は、裁判で負けた側が負担します。和解離婚の場合には、「各自の負担とする」と定めるのが通例です。
離婚で話し合いが難しいときは早めに弁護士に相談する
離婚裁判は、時間や費用の負担が大きい手続きです。何より、当事者がしなければならないことが多く、非常に労力がかかります。
裁判は離婚に向けての強力な最終手段ですが、少しでも負担を減らして離婚をするために、協議や調停での解決を目指すことが重要です。「どうせ話し合いはできないし、もう裁判だ」と見切りをつける前に、まずは訴訟以外での解決が図れないか、弁護士に相談するとよいでしょう。
また、配偶者が協議にも調停にも応じず裁判をするしかないケースや、配偶者から離婚裁判を起こされたケースでは、ご自身で対応しようとせず、初めから弁護士に依頼することが大切です。ご自身が不利であることに気づかないまま裁判が進んでしまい、その段階で慌てて弁護士に依頼をしても、リカバリーは難しいことが多いです。
離婚の話し合いがうまく進まず、裁判を起こす・起こされるかもしれないという場合には、早めに弁護士に対応を相談するようにしましょう。
離婚・不貞に関する問題は弁護士へご相談ください
この記事の監修
離婚・不倫は、当事者の方を精神的に消耗させることが多い問題です。また、離婚は、過去の結婚生活についての清算を図るものであると同時に、将来の生活を左右するものであり、人生全体に関わる問題といえます。
各問題を少しでもよい解決に導き、新しい生活をスタートさせるお手伝いができれば幸いです。
弁護士三浦 知草
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上野法律事務所
- 東京弁護士会
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