離婚時の共有不動産はどう分ける?ペアローンの罠と失敗しない財産分与の手順
- 公開日:
- 2026年5月19日
離婚に際し、財産分与をどのように取り決めるかについては、離婚協議の争点のひとつとなりますが、特にこれまでお住まいの住宅が夫婦共有名義になっている場合、その不動産を巡ってそれぞれに異なる希望があるときは、お互いの主張がぶつかり合い、財産分与がネックとなり解決までに時間を要することがあります。
また、近年では夫婦共働きが一般的となり、ペアローンを組んで返済を行う家庭も増えています。しかし、離婚の際は名義変更が難しい点やお互いの連帯保証の状況などから、財産分与の際にトラブルになることがあります。
ここでは、離婚協議にあたり「ご自宅が夫婦の共有不動産になっている」、「ペアローンを組んで住宅費用の返済をしている」ケースでの問題点や、その解決方法について解説します。
- この記事の内容
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離婚の際に共有名義の不動産を分ける方法とは?
離婚の際に共有名義の不動産をどのように分けるかについて、主に2つの方法があります。すなわち、不動産を売却し、その売却益(現金)を夫婦で分ける方法と、どちらか一方がその不動産を引き継ぎ、もう一方が不動産共有持分の価値に見合った分の現金を受け取る方法があります。ここでは、夫婦の共有持分が2分の1ずつである場合を例として、この2つの内容について説明します。
共有不動産を売却して得た現金を分ける方法(換価分割)
共有不動産を売却し、お金に換えて現金を分ける方法を「換価分割」といいます。
住宅ローンが残っている場合、まずは売却益でローンを完済し、売却にかかる諸費用を差し引いたうえで、残った現金を分けます。財産分与の際には、手元に残った売却益に、不動産以外の夫婦の財産を加えたものを夫婦で2分の1ずつ取得します。
例えば、自宅(住宅ローンなし)が2000万円で売却でき、その他に預貯金が3000万円ある場合、
(自宅不動産2000万円+預貯金3000万円)÷2=2500万円
となりますから、夫婦それぞれが2500万円ずつのお金を取得することになります(事案簡略化のため、ここでは売却諸費用は省略します)。
同じ例で、住宅ローンが1000万円残っているとすると、
{(自宅不動産2000万円-ローン1000万円)+預貯金3000万円}÷2
で、2000万円ずつが分与されることになります。
一方が共有不動産に住み続け、相手に現金を支払う方法(代償分割)
夫婦の一方が離婚後も引き続き自宅に住み続ける場合、「代償分割」という方法をとります。代償分割は、一方が不動産を取得して、その分の代償金を相手に支払う方法です。
先ほどと同じく、2000万円の自宅(住宅ローンなし)と、3000万円の預貯金がある例で、夫が自宅を単独で取得して住み続けるとします。
この場合、
夫の取り分:2000万円の自宅+預貯金500万円(合計2500万円分)
妻の取り分:預貯金2500万円
となります。
夫の預貯金の取り分は、妻より少なくなりますが、分与された財産全体として見ると、平等となっています。
換価分割・代償分割のどちらがよいか相手とよく話し合う
不動産は高額な資産であるため、夫婦で築いてきた財産の中で自宅が大きな割合を占めることが多く、自宅をどうするかで財産分与全体の帰趨を大きく左右することになります。
そのため、財産分与を行うにあたっては、まずは、自宅を売るのか(換価分割)、どちらかが住み続けるのか(代償分割)という方向性をよく話し合う必要があります。
換価分割を選ぶ場合
換価分割を選ぶと、売却益が現金として手元に残るため、財産分与がしやすくなります。また、現実に売れたお金を分けるので、「自宅はもっと高い(安い)はずだ」という評価の問題も起こりませんし、不動産そのものがなくなるので共有名義をどうするかの問題もなくなります。
このように、換価分割は比較的トラブルが生じにくい方法といえます。
代償分割を選ぶ場合
夫婦どちらかが住み慣れた家を残したいと希望している場合、代償分割が選択肢になります。もっとも、代償分割では、いくつか解決すべき問題点があります。
- 不動産評価の問題
代償分割では、現実に自宅を売るわけではないため、「もし今売るとしたらいくらになる」という金額を仮定した上で、財産分与を行います。
そのため、夫婦の間で、「この家の価値はもっと高い(安い)はずだ」という争いになることがあります。自宅のある地域によっては、数百万円の評価額の差が生じることもあり、財産分与の金額全体に大きな影響を与えます。
- 共有名義・住宅ローンの処理問題
住宅ローンが残っている場合、離婚後も返済を続けることになります。自宅の名義もローンの契約者も単独で、名義のある側が自宅に住みながら返済を続けるのであればよいのですが、共有不動産の場合、名義やローンをどうするかが問題となります。
ローンが残っている場合、勝手に自宅の名義を共有から単独にすることはできず、ローンを借りている金融機関との事前の調整が必要です。また、住宅ローン自体についても、連帯債務やペアローンの解消、自宅から出る側の連帯保証からの脱退を行う必要があり、金融機関との調整が不可欠です。
- 実現可能性の問題
自宅の資産価値が高く、夫婦の財産全体に占める自宅評価額の割合が大きい場合、そもそも自宅を残せるのかが問題になります。
例えば、自宅が3000万円(ローンなし)、預貯金が2000万円あり、夫が自宅の取得を希望しているとします。
(自宅不動産3000万円+預貯金2000万円)÷2=2500万円
となりますから、夫が3000万円の自宅を取得すると、500万円分はもらいすぎとなります。したがって、夫は、今ある預貯金2000万円以外から、500万円を調達して妻に代償金を支払う必要があります。
代償金を準備するには、借り入れをする、親族からの援助を受ける、妻と話し合って分割払いに合意してもらう等の手段が考えられます。もっとも、必要な代償金の金額が大きい場合には、これらの方法も難しく、自宅を残すことができないケースもあります。
共同名義の不動産を分ける際の準備について
共有不動産を分けるにあたり、不動産の時価を調べ、どの程度の価値があるかを確認します。その金額を踏まえ、住宅ローンの残額をすべて処理することができるのか、逆に時価が残高を下回る場合には残りの残高をどのように処理すべきかを確認していく必要があります。
共有名義の不動産の「時価」を調べる
財産分与の場面では、不動産は「時価」、つまり、仮に今売ったとすればいくらかになるかで評価します。
時価を調べるためには、不動産業者の査定をとります。夫婦がお互いに取り付けた査定額を出し合って、時価をいくらと見るかを協議することが一般的です。双方の取り付けた金額に大きな開きがあって、協議をしても時価の合意ができない場合、最終的には、裁判所の手続きのなかで鑑定を行い、評価額を決定します。
なお、固定資産税評価額や路線価といった公的な金額の方が一見評価額としてふさわしそうに思えますが、財産分与の場面で必要なのは、あくまでも時価、そのときの市場価格です。自宅のある地域によっては、時価と固定資産税評価額等が大きくずれていることもあります。財産分与全体の方向性を決めるためにも、簡易なもので構わないので、まずは時価の査定を取りましょう。
住宅ローンの残高を調べる
自宅不動産の時価を確認したら、別居(離婚)時点の住宅ローンの残高を確認しましょう。
不動産の時価額から残っているローンの金額を差し引いて、プラスになる「アンダーローン」なのか、マイナスになる「オーバーローン」なのかによって取り得る対応が異なります。
アンダーローンだった場合の対応について
アンダーローンの場合、不動産の時価額から残ローンの額を差し引いた金額が、財産分与における不動産の価値として扱われます。時価3000万円の家に1000万円のローンが残っている場合、2000万円の財産として扱われるというイメージです。
代償分割であれば、この不動産の価値に見合った代償金を支払って自宅を取得し、換価分割であれば、売却益でローンを完済した上で残額を分与します。
近年の物価上昇に伴い、特に東京都心部では、不動産の価格も大きく上昇しているため、アンダーローンと判断されるケースが増えています。換価分割の場合、不動産価格の上昇は夫婦双方にとってメリットが大きいといえます。他方、代償分割の実現には、多額の代償金を要することになり、自宅を残すことが困難なケースも出てきています。
オーバーローンだった場合の対応について
オーバーローンの場合、財産分与の場面では、自宅不動産は無価値なものとして、財産分与の対象から外されます。
この場合、
- ①不動産は価値0とみなして財産分与の対象から外し、不動産以外の財産を分ける
- ②不動産以外の財産を含めた全体の金額から住宅ローン額を差し引き、プラスが出ればその金額を2分の1ずつにする
という2つの考え方があり、最近の実務では②を取るケースが多いようです。
自宅の時価に自宅以外の財産の金額を加えても、なお住宅ローンの方が多い場合、財産分与は0円となります。この場合、当然にマイナスの金額(負債)を2分の1ずつ分けるということにはならない点に留意が必要です。裁判所が財産分与について結論を決めた場合でも、残っているローンをどのように処理するか、無価値とされた自宅をどうするかは別途協議をしなければなりません。
オーバーローン不動産が残った場合の処理
売却してもローンを完済できないオーバーローンの場合、ローンの貸し手である金融機関は抵当権を抹消してくれず、そのまま自由に売却することはできません。
任意売却をし、売却益で一部を返済した上で、引き続き返済を続けるというケースもありますが、この場合、金融機関の許可が必要です。また、借り換えや親族の援助で資金を調達して返済をし、不動産を処分することも考えられます。
これらの方法が難しい場合には、少なくともアンダーローンになるまでは、返済を続けながら自宅を所有し続けることになります。
共有名義の不動産をペアローンで購入している場合の対応
近年、夫婦共働きでペアローンを組んで住宅を購入されているケースが増えてきました。この方法は、単独ローンでは購入が難しい物件でも、ペアローンを組むことで視野に入れることができること、夫婦それぞれ住宅ローン控除を利用することができるため、メリットが大きい面もあります。
しかし、ペアローンを組んで離婚に至った場合、その対応を巡ってトラブルが発生しがちです。ここでは、離婚に際し、共同名義の不動産をペアローンで購入している場合の問題点について解説します。
ペアローンを組んで購入した不動産の問題点とは?
ペアローンを組んだ場合、夫婦が互いに相手の債務の連帯保証人になります。そのため、離婚後も、相手の経済状況の悪化により返済が滞るリスクを負い続けることになります。
また、どちらが自宅に住み続けるかを問わず、各自のローンの返済はそのまま継続します。
自宅を出た側が契約から抜けたり、お互いが連帯保証人である状態を解消したりできればよいのですが、金融機関の許可を得る必要があり、難しいことも少なくありません。
共有不動産をペアローンで組んでいる場合の解決方法
共有不動産にペアローンを組んでいる場合、状況によって解決方法が異なります。
- アンダーローンで換価分割をしたい場合
換価分割を選ぶ場合、単独でローンを組んでいる場合と同じく、売却益でローンを完済した上で残った現金を分与します。夫婦が換価分割をする方針に合意できていれば、ペアローンであるからといって特別な問題は生じにくいといえます。
- アンダーローンで代償分割をしたい場合
代償分割の場合、離婚後のトラブル防止のため、共有名義・ペアローン状態をともに解消しておくことが望ましいといえます。新たに連帯保証人や担保を立てて、家を出る側を契約から抜けさせてもらえるよう金融機関と交渉したり、借り換えや親族の援助を得て現在のペアローンを完済したりする方法が考えられます。
多額のローンが残っていると、これらの方法を取ることが難しい場合もあります。後のトラブルを避けるためには、家を残すという方針自体をもう一度見直すことも検討すべきでしょう。
- オーバーローンの場合
オーバーローン不動産は自由に売却することができませんから、いったん離婚後も不動産はそのまま共有し続けてローンの返済も各自継続するという形を取らざるを得ないこともあります。
もっとも、オーバーローンの場合も、共有・ペアローン状態が離婚後に長く続くことは望ましくありません。
したがって、不動産以外に夫婦の財産があれば、なるべくローンの返済を優先する方がよいでしょう。アンダーローンになるまで繰り上げ返済できれば、通常の不動産と同じように自由に売却してローンを完済し、ペアローン問題を解消することができます。借り換えや親族から援助を受けることも選択肢です。
自宅の時価に対して残っているローンの金額が多く、手元の資金で繰り上げ返済してもオーバーローン状態を解消できない場合には、ローンの貸し手である金融機関の許可を得た上で、任意売却をすることも考えられます。任意売却で得た売却益でローンを返済し、なお残ったローンは引き続き各自が返済する責任を負います。この場合、互いに連帯保証人としてのリスクは残るため、なるべく借り換え等をしてペアローン状態を解消した方がよいといえます。
ペアローンを組まれている場合の注意点
ペアローンを組んでいる場合、不動産の財産分与を行う際には、次のような注意点があります。
- 無断で単独所有にしない
夫婦の間でどちらが不動産を取得するかの合意ができたとしても、ローンの貸し手である金融機関に無断で名義を変えることは避けましょう。また、居住実態と名義にずれが生じることも問題視されます。無断での名義変更や居住実態・名義の不整合は、金融機関との契約に違反し、最悪の場合、一括返済を請求されるリスクもあります。
不動産にどちらが住み続けるのか、方針が決まったら、予め金融機関に相談するようにしましょう。
- 共有状態を残さないようにする
夫婦どちらかが住み続けたいが代償金が準備できないといった事情がある場合、ひとまず不動産を共有のままにしておこうと考えるかもしれません。
しかし、離婚後に長く共有状態を残すことは、トラブルにつながりやすく、おすすめできません。
住んでいる側が、後に家の売却や大規模リフォームをしたいと考えた際には、共有者である元配偶者の同意が必要となります。相手が同意してくれなかったり、そもそも所在がわからず協議自体できなかったりすることも想定されます。また、相手が亡くなって相続が発生すると、同意をもらう相手は相続人となります。見ず知らずの再婚相手や子どもと協議をしなければならない場面も出てきますし、離婚から何年も経つと代替わりで相続人が多数になっていて、全員の同意を取ることが困難になることも考えられます。
多少手間やお金がかかっても、可能な限り早期に、できれば離婚時に共有状態を解消しておくことが望まれます。
- なるべくペアローン状態を解消する
ペアローンは夫婦が互いの連帯保証人となっており、この連帯保証関係は離婚後も続いてしまいます。そのため、離婚後に相手の経済状況が悪化して返済不能となった場合、連帯保証人として残ローンを一括で返済しなければならなくなります。いきなりローンの一括返済を迫られる事態を避けるためにも、手持ち資金での繰り上げ返済や借り換えによって、なるべくペアローンの状態を解消しておくことが望ましいです。
また、代償分割を希望する側が、「自分が2人分のローンを支払い続けるから、家を売らないでほしい」と提案してくる場合があります。この場合、夫婦の間で一方がペアローンを全て負担する合意をしていたとしても、金融機関との関係ではあくまでも夫婦それぞれが支払いの責任を負い続けることに留意する必要があります。約束が反故にされた場合、ご自身の分のローンを返済し続ける必要が出てきてしまいますから、ペアローンを残す選択はしない方が無難です。
離婚における共同名義の不動産の分割で揉める場合は、一度弁護士に相談する
共有不動産は金額が大きい上、適切に処理しないと離婚後までトラブルの原因になる問題です。
特にペアローン状態の場合、リスクを見落としたり、金融機関との交渉といった、事前に取るべき段取りを失念してしまうと、後に大きな問題が生じやすいといえます。
共有不動産の財産分与で相手と揉めてしまう場合には、選択する方針の長短やリスクを十分に検討して交渉を進めるためにも、弁護士に一度相談してみましょう。
離婚・不貞に関する問題は弁護士へご相談ください
この記事の監修

離婚・不倫は、当事者の方を精神的に消耗させることが多い問題です。また、離婚は、過去の結婚生活についての清算を図るものであると同時に、将来の生活を左右するものであり、人生全体に関わる問題といえます。
各問題を少しでもよい解決に導き、新しい生活をスタートさせるお手伝いができれば幸いです。
弁護士三浦 知草
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市川法律事務所
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