相続トラブルの基礎知識
相続トラブルの基礎知識
遺贈や贈与が多いと、遺留分侵害額請求はより複雑になります。適切な相手に、適切な金額を請求するために、意思表示を行う内容証明郵便の送付から協議、調停、裁判にむけた準備を含め、ご自身の置かれている状況を整理する必要があります。
ここでは、生前贈与に関する遺留分侵害額請求の手順について解説します。
遺言書で自身の相続分がなかった相続人。その相続人が被相続人の配偶者や子ども、親である場合に、最低限確保された相続分を相手方に請求することができる制度が「遺留分侵害額請求」です。相手方とは、被相続人から遺贈や生前贈与を受けた人を指します。相手方が一人の場合にはその人に対して遺留分侵害額請求を行うことになりますが、被相続人が複数の人に対して遺贈や生前贈与を行っていた場合、誰を相手方とすればよいか、順序を確認していきます。
被相続人から生前贈与と遺贈があった場合は、法律上では遺贈が優先されると定められています。この順番は当事者で変更の合意があったとしても無効とされる強行規定として考えられています。そのため、遺贈と生前贈与がある場合には、まず遺贈を減殺します。遺留分侵害額が残った場合には、さらに贈与を減殺することになります。
複数の人に対して遺贈されている場合は、すべての遺贈について、その価格割合に応じて減殺されることになります。しかし、遺言書の中で特定の遺贈から先に減殺するよう意思表示があった場合には、被相続人の意向を汲み、その順番で減殺することになります。
被相続人が贈与を複数の人に対して行っていた場合、日付が新しい贈与から減殺していくことになります。この順番は当事者同士で変更の合意があったとしても無効となる強行規定となっています。
このような場合、まず遺留分侵害額請求で遺贈を受けたCさんに請求することになります。Cさんが受けた遺贈を減殺しても遺留分侵害額が残った場合には、残った分は贈与の日付が新しいBさんに請求することになります。
谷 靖介
Yasuyuki Tani
遺産分割協議や遺留分に関するトラブル、被相続人の預貯金使い込みや遺言内容の無効主張など、相続紛争問題を中心に、法律を通してご依頼者の方が「妥協のない」「後悔しない」解決を目指し、東京都を中心に活動を行っている。