相続トラブルの基礎知識
相続トラブルの基礎知識
相続財産の維持や増加に対する貢献度を相続分に反映する寄与分は、他の相続人から貢献したことは認められても、実際にお金に換算するとなると一体いくらになるのか、貢献内容を金銭的な価値に置き換えようとする段階で揉めることがあります。
ここでは、寄与分の評価方法や実際に遺産分割を行う際、どのように計算されるのか解説します。
相続財産の維持や増加に対する貢献度を相続分に反映する寄与分には、法定相続分のように民法で定められた基準がありません。相続財産の総額や寄与した内容、他の相続人との比較によって、まったく違った結果となります。そのため、個々の相続人によって考え方や価値観が異なるため、寄与分の主張は取得財産を多くしたいという権利主張でもあり、他相続人とのトラブルを生むことがあります。
では、実際どのように算定されるのか、寄与行為に関する実務上の算定方法をご紹介します。
・家事従事型・従業員型
寄与分を主張している相続人が受け取るべき相続開始時の年間給与額×(1-生活控除割合)×寄与年数=寄与分額
・共同経営型
(通常得られてしかるべき報酬+利益配分)-現実に得た給付=寄与分額
・不動産取得のための金銭の贈与
相続時の不動産価格×(寄与者の出資金額÷取得時の不動産価格)=寄与分額
・不動産そのものの贈与
相続開始時の不動産価格×裁量的割合※=寄与分額
・不動産の使用貸借(無料貸与)
相続開始時の賃料相当額×使用年数×裁量的割合※=寄与分額
・金銭の贈与
贈与当時の金額×貨幣価値変動率×裁量的割合※=寄与分額
・実際に療養看護を実施した場合
介護福祉士・ヘルパーの日当額×療養看護日数×裁量的割合※=寄与分額
・ヘルパーなどの費用負担
費用負担額=寄与分額
寄与分が認められた場合には、通常の遺産分割とは違う計算式になります。相続開始時の遺産相続から認められた寄与分の額を引いた金額を「みなし相続財産」とし、それを法定相続分で分けます。寄与分が認められた相続人はそこに寄与分の金額を足します。
1.遺産分割の対象となる「みなし財産」を計算する
【相続時の財産】-【認められた寄与分】=「みなし相続財産」
2.各相続人の相続分を計算する
寄与分が認められた相続人:「みなし相続財産」×法定相続分+認められた寄与分
それ以外の相続人:「みなし相続財産」×法定相続分
3.実際の計算例
寄与分が絡む遺産分割は、お互いが感情的になりがちで、揉めてしまうと収拾がつかず協議が進まなくなることがあります。
寄与分と認められる内容かどうか、相手の主張が正当性のあるものなのかを本人で判断することは大変難しいので、一度相続に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。
谷 靖介
Yasuyuki Tani
遺産分割協議や遺留分に関するトラブル、被相続人の預貯金使い込みや遺言内容の無効主張など、相続紛争問題を中心に、法律を通してご依頼者の方が「妥協のない」「後悔しない」解決を目指し、東京都を中心に活動を行っている。