相続コラム
相続コラム
2023年6月25日に、メディア・ケアプラスより「もめてしまった相続トラブルの解決方法」を上梓された弁護士法人リーガルプラスの代表:谷靖介は、紛争相続トラブルを中心に多くの事案を解決してきました。
リーガルプラスでは、相続分野のなかでも紛争相続トラブルを中心に対応しており、谷弁護士のみならず、所属弁護士の多くが紛争相続案件に対応しています。
ここでは、紛争相続の解決に向けた書籍を出版された谷弁護士に、書籍を出版された経緯や紛争相続トラブル解決に向けたお気持ち、リーガルプラスの紛争相続に対する考えなどについて伺いました。
──弁護士法人リーガルプラスでは、紛争相続トラブル案件を中心に多くの方からご相談・ご依頼を受けていますが、「もめてしまった相続トラブルの解決方法」を出版された経緯について教えてください。
谷靖介弁護士(以下、谷):相続のご相談について法律相談をしていますと、ご相談者から「まさか自分の家族間でこのような相続問題が起きてしまうなんて…。」「感情的にもこじれて、話がまとまらない。」といったお話をよく聞きます。
生前対策として遺言書の作り方や相続税の節税対策などの書籍は多数出版されていますが、「もめてしまった相続トラブルをどうすれば解決できるのか」についての書籍はまだまだ少ないため、相続トラブルに巻き込まれてしまった方の解決の一助になればと思い、本書の出版企画を進めました。
──たしかに相続トラブル解決に向けた書籍はまだ少ないように感じます。本書では、相続トラブルの社会的背景から相続全般を俯瞰してトラブルになった場合の対応についてまとめられていますが、遺産分割協議や遺産分割調停に多くの項が割かれています。解決に向けてはここでの対応がポイントになるのでしょうか?
谷:はい。遺産分割の解決には、特に協議と調停の進め方が重要となります。
遺言がない場合、遺産目録(リスト)を作成し、相続人確定後に、誰が、どの遺産を取得するかを話し合います。遺産分割の枠組みは各相続人の法定相続分が基本となりますが、被相続人から生前に受け取っていた贈与(特別受益)や被相続人への貢献(寄与分)が考慮されることもあります。
相続人全員でしっかりコミュニケーションをとり、感情的にならず、譲るべきところは譲る姿勢があれば、遺産分割協議は円滑に進みます。
全相続人が納得できる遺産分割が決まり、遺産分割協議書に署名・捺印をすれば、協議成立となり、登記や銀行解約など遺産分けの事務手続きに移ります。
他方で、相続人全員での協議が難しい場合、家庭裁判所の遺産分割調停で解決を図ります。東京や大阪などの都市部の裁判所の遺産分割調停では、段階的進行方式が採用されており、テーマを区切って調停手続きが進みます。
──譲り合いと謙虚な気持ち、お互いの気持ちを事前によくすり合わせておくことが大切ということでしょうか。改めてこの項を読むと、遺産相続でトラブルになってしまうと解決するには大変な苦労と労力がかかる印象を持ちました。解決には弁護士への相談や依頼が必要になってくるようにも思いますが、紛争になった場合、弁護士への相談なしにご自身で解決することは可能でしょうか?また、弁護士に相談しないで進めることのリスクはどの程度あるでしょうか?
谷:トラブルになっている遺産分割で弁護士へ相談をせずに遺産分割を進めると、適正な遺産分けの指針や法律的な視点を欠いたまま遺産分割を進めることになってしまいがちです。自分に不利な遺産配分に気が付かなかったり、法的に請求できる権利を失ってしまったりといったリスクがあります。弁護士へ正式に依頼しない場合でも、弁護士の法律相談は活用した方がよいと思います。
──弁護士への相談は初回無料の事務所も多いので、うまく活用してご自身が不利にならないよう注意しておく必要はありそうですね。紛争相続トラブルはなかなか「自分ごと」しにくいと思うのですが、相続人同士で紛争になるとは思いもしなかったという方は多いのでしょうか?
谷:そうですね。亡くなった親などの被相続人がお元気なときには、「まさかこんなにもめることになるとは思わなかった。」と、困惑されるご相談者が多数いますね。
──紛争相続トラブルの解決においては、当事者のみならず弁護士の対応も繊細さを問われる場面が多いと思います。解決に向けて注意している点などあれば、教えてください。
谷:法律的な側面については、専門家としてしっかりと適正な分割に向けて代理活動を行うことを心がけています。他方で相続トラブルは、家族の長期間にわたる複雑な人間関係や過去の様々な出来事や感情問題が関係しています。
ご依頼者のお気持ちにしっかり寄り添った活動をするよう、心がけています。
──現在の社会状況を見ていくと、「終活」という言葉が象徴するように、相続トラブルにならないよう、事前に対策をとる方も増えてきているように思います。こうした状況下でも、紛争相続トラブルは多く発生している印象をお持ちでしょうか?
谷:終活のために財産管理を特定の家族(将来の相続人)に任せた場合や遺言で財産を承継させる相続人を決めておいたとしても、そのことに納得していない人物(相続人)がいれば、相続トラブルの芽になってしまいます。相続税を安くすることに捉われて、相続トラブルを生み出してしまう事もあります。終活には、遺産を残された相続人の間で不必要な争いが生じないよう、十分な配慮と法律上の分析と対策が必要と思います。
──紛争相続トラブルの入り口に差し掛かっている方のみならず、本書は「終活」されている方にも多くの示唆を与える内容になっていると感じますが、その点も意識してまとめられたのでしょうか?
谷:はい。本書には、様々な相続トラブルの原因や背景、解決が難しくなりがちな遺産構造なども示されています。他方で、「相続トラブルになりにくい」財産構造も示しています。例えば、不動産の価値よりも金融資産の方が非常に多く、特別受益や寄与分の問題がなければ、遺産分割は基本的には法定相続分に従ってお金を分けることになりますので、相続トラブルが起きにくいといえます。
終活をされている方は、どのように遺産を残せば、相続人同士のトラブルが発生しにくいかを知っていただける内容にもなっています。
──今後の紛争相続トラブル解決に向けた活動においてのお気持ちをお聞かせください。
谷:日本の人口構成からすれば、今後、戦後生まれの世代、いわゆる団塊の世代の相続の発生件数が増加することで、相続トラブルの増加も想定されます。
「相続人同士での話し合いが難しくなっている相続トラブル」、「もめている相続」をしっかりと解決できるよう、相続人の方への速やかな財産承継をご支援します。
また、代理活動を通じて、ご依頼者の親族間の心情対立に伴う精神的不安が緩和されるよう尽力できればと思っています。
本書を執筆・上梓された谷弁護士にお話を伺いました。相続が紛争に発展することは誰も望まないはずですが、相続人同士のコミュニケーション不足から疑心暗鬼に陥ったり、遺産分割協議を機に被相続人の遺産が勝手に使い込まれていたなど、ふとしたきっかけで予期せぬ事実が明らかになり、大きな紛争に発展することもよくあるとのことでした。
こうしたトラブルにならないよう、家族が普段より適度なコミュニケーションをとる気配りをもち、謙虚な気持ちでお互いを見つめ合うことが大切なのかもしれません。
なお、谷弁護士が著した「もめてしまった相続トラブルの解決方法」は、下記サイトにて発売中です。
遺産分割協議で相続人同士の意見が折り合わないなど、このままでは話し合いがまとまらない、トラブルに発展するのでは?といった不安があれば、一度本書を読まれたり、弁護士にご相談されることをおすすめします。