離婚・不倫慰謝料の基礎知識

浮気・不倫相手の配偶者から慰謝料を請求されたときの対応について

浮気・不倫相手の配偶者から慰謝料を請求されたときの対応について

浮気・不倫相手の配偶者から慰謝料請求に関する内容証明郵便が届いたら、どのように対応されるでしょうか。突然のことで答えが出せず、どう行動してよいか悩まれるかもしれません。

また、交際相手が結婚していることを隠しているようなケースで慰謝料請求された場合、相手に対して疑念と怒りの気持ちが交錯し、どう対応すべきか困惑するかもしれません。

こうした事例は、気軽に誰かに相談することも難しく、一人で問題を抱えがちになります。

特に相手が弁護士をたてて慰謝料請求してきた場合、無視をすることは難しく、放置してしまうとより不利な状況となってしまいます。

ここでは、不倫相手の配偶者から慰謝料を請求されたときに準備すべき対応や、実際に慰謝料請求された場合の解決までの流れについて解説します。

この記事の内容

相手配偶者から慰謝料請求されたときに確認すべきこととは?

不貞慰謝料請求は、内容証明郵便で行われることが多く、見慣れない仰々しい文書に焦りを感じることもあるでしょう。まずは落ち着いて内容を確認しましょう。

相手方配偶者の言い分はご自身の認識とずれていないか

請求に書かれている不貞行為の内容が、ご自身の認識と相違がないかを確認しましょう。

不貞行為についてどの程度特定されているか

不貞行為の時期や態様がはっきり書かれている場合、相手方配偶者は何かしらの証拠を持っている可能性が高いといえます。請求を無視してしまうと、裁判を起こされるリスクがあると考えられます。

もっとも、はっきり書いていないから証拠はないだろうと決めつけるのは早計です。証拠があるのにあえてぼんやりとした記載にとどめて、こちらの反論の矛盾をつこうとしている場合もあります。

不貞によって夫婦関係はどうなったと書かれているか

請求のなかで、不貞による相手方配偶者と不貞相手との夫婦関係の変化について言及がある場合があります。

不貞慰謝料は、夫婦関係の悪化の程度が大きいほど高額になりやすいといえます。そのため、「既に離婚した」「離婚調停中である」といった記載がある場合には、支払うべき慰謝料額がある程度高くなることを覚悟した方がよいでしょう。対して、「離婚を検討している」とか「破綻しかけている」といった表現の場合、あくまでも一般論ですが、離婚しない可能性が高いと予想できます。

請求額と回答期限

慰謝料としていくら請求されているか、こちらの回答期限はいつかを確認しましょう。

何も回答しないまま期限が過ぎてしまうと、裁判を起こされるリスクがあります。弁護士への相談など、早めに対応をはじめましょう。

差出人は本人か弁護士か

内容証明郵便の差出人は、本人か代理人弁護士かを確認しましょう。

弁護士が差出人の場合、訴訟を見据えて対応していることも多く、「いったん無視して事態が過ぎ去るのを待つ」という対応は望ましくありません。

ご自身のしたことは本当に「不貞」か?

法的に不貞慰謝料を支払う義務が生じるのは、不貞をした場合、つまり、不貞相手が既婚者であると知りつつ肉体関係を持ち、それによって不貞相手の夫婦関係を悪化・破綻させた場合です。

相手方配偶者に黙って2人きりで食事に行く、キスをするといった言動を、浮気・不倫だと評価する人もいるでしょう。しかし、これらは法的な意味での不貞行為ではありません。

また、不貞相手が独身だと信じて肉体関係に及んでいた場合、故意がないとされますから、慰謝料を支払うべきは不貞相手のみです。

「肉体関係はないが交際していた」「独身だと思って肉体関係を持っていた」という場合であっても、相手方配偶者は精神的苦痛を負いますが、だからといって不貞慰謝料を支払う義務はありませんので、きちんと言い分を主張することが必要です。

慰謝料請求された際にやってはいけないこと

慰謝料請求に対する対応を誤ると、本来義務のないことを約束する羽目になってしまいます。また、いたずらに相手方配偶者の怒りを煽ってしまうと、交渉が決裂する可能性もあります。慰謝料請求をされた際には、次のような対応をしないよう注意しましょう。

不当な要求には応じない

不貞行為を実際にしてしまった場合、相手方配偶者に対する負い目から、「言われたとおりに支払わなければならない」「条件を飲まなければならない」と考える方もいらっしゃいます。精神的苦痛を与えたことには謝罪し、誠実な対応をとらなければなりません。もっとも、当然ながら相手方配偶者の言うことをすべて聞かなければならないわけではありません。

過大な請求や、「土下座を強要する謝罪の要求」「配偶者と接触させないよう、他都市への移住の強要」といった、不当な条件を受け入れる必要はありません。

また、相手の感情を逆なでしないように留意する必要はありますが、相手があまりに非常識な行動(SNSや動画投稿アプリで不倫の事実を拡散させる、勤め先に乗り込んできて退去しない等)をされた場合には、毅然とした対処が必要になります。

過大・不当な要求が続き、悩んでいる場合には、まず弁護士に相談してみましょう。

不貞の事実がある場合・認める場合にしてはいけないこと

不貞を認めて慰謝料を支払おうと考えている場合にやってはいけないことについてご説明します。

すぐに「全額支払う」と約束しない

慰謝料を支払うこと自体は決心している場合でも、すぐに「言われたとおり全額支払います」という回答をするのは控えましょう。特に、弁護士が代理人として請求してきている場合、金額の交渉になることを想定しているので、「全額支払う」と答えないからといって直ちに訴訟になる可能性は低いといえます。

ひとたび「その金額を支払います」と約束してしまうと、基本的に後からなかったことにはできません。合意書や念書にサインした場合はもちろん、電話や面談でのやり取りも録音されて証拠にされる可能性があります。

このことは、当事者本人同士の合意でも同様です。合意を破ると、相手方配偶者はその合意を根拠にして、支払いを強制すべく裁判を起こしてくる可能性もあります。

実現不可能な約束をしない

例えば、不貞相手と同じ会社に勤めているのに、「一切接触をしない」といった無理な約束をすることは避けましょう。約束をした上でそれを破ってしまうと、トラブルの再燃につながり、追加で慰謝料を請求されるようなこともあります。

相手の感情を逆なでする主張をしない

必要な言い分はしっかり主張すべきですが、相手方配偶者を不用意に批判し、感情を逆なでするような主張(例えば、「あなたが酷いことをしたから夫(妻)が不貞に走った」等)はしないようにしましょう。本来なら示談が望ましいケースでも、合意が難しくなります。

不貞の事実がない場合・否認する場合にしてはいけないこと

不貞の事実がないのであれば、はっきりと事実がないことを相手方配偶者に伝えましょう。不貞の事実がなければ、相手方配偶者は裁判で勝てるような証拠を持っていないはずです。否定することを怖がって曖昧な対応をすると、かえって相手方配偶者の疑いを高めてしまうおそれもあります。

こっそりデートしたといった不貞に至らない付き合いがあった場合、罪悪感から「いくらか支払って終わりにしたい」と考える場合もあるでしょう。もっとも、支払うという判断をする際には慎重に動くべきです。金額によっては、「不貞があったからこそ支払うといっているに違いない」と、返って相手が疑念を深めてしまうこともあります。解決金として低額の支払いをしようと考える場合には、一度弁護士に相談してみましょう。

不貞相手への対応に注意する

慰謝料請求をされた際、不貞相手に状況の確認をとりたい気持ちになる方も多いでしょう。しかし、基本的には慰謝料請求をされたら、不貞相手とは会わない・連絡を取り合わない方がよいといえます。不貞相手側から連絡がきたとしても、無視をするか、「もう連絡は取り合わない」と明確に断ったうえで、そのことを音声録音などで証拠化しておくようにしましょう。

接触をとろうとしていることが知られると、「慰謝料請求をされたにも関わらず、まだ懲りずに夫(妻)に連絡をしてくる」と、相手方配偶者の怒りを買い、交渉の決裂・慰謝料の高額化につながります。また、接触の内容によっては、交渉態度が不誠実だという証拠にされてしまうこともあるため、不貞相手から情報を得ようと試みるような行動は慎んでください。

不貞相手を相手方配偶者へのメッセンジャーにしたり、請求の盾にするようなことも行わないようにしましょう。

なお、不貞期間中、不貞相手から、「夫(妻)とは別れてあなたと結婚する」「慰謝料請求されても私が守る」などの発言があっても、そうした約束を鵜呑みにして行動しない方がよいでしょう。慰謝料請求の問題に発展すると、手のひらを返して相手方配偶者側に有利な証言をする不貞相手もおります。必ずしも不貞相手がご自身の味方にならないことを前提に行動してください。

慰謝料の支払いが発生すると考えられるケースとは?

慰謝料支払いが発生するのは、不貞相手が既婚者であると知りつつ(または過失により知らずに)肉体関係を持ち、相手夫婦の婚姻関係を悪化・破綻させた場合です。そして、これらの事実を証明する証拠があれば、慰謝料の支払いが命じられます。

慰謝料の支払いをせずに済む可能性があるケースとは?

次のようなケースでは、慰謝料の支払いをせずに済む可能性があるといえます。

肉体関係がない場合

肉体関係がなければ、当然不貞行為に当たりませんので、慰謝料は発生しません。

既婚者だと知らず、そのことに過失がない

不貞相手が既婚者だと知らず、既婚者でないと信じたことに過失がなければ、慰謝料は生じません。

過失の有無は個別の事情から判断されますが、例えば、結婚相談所で出会った相手であるといった事情であれば、過失がないとみなされる可能性があります。

不貞以前に夫婦関係が破綻していた・破綻していると信じたことに過失がない

例えば、不貞以前に相手夫婦が離婚を決めていたのであれば、夫婦関係は既に破綻していたといえます。戸籍上はまだ夫婦であっても、不貞行為のせいで関係が悪化したわけではないため、慰謝料は発生しません。

また、実際には夫婦関係が破綻していなくとも、破綻していたと信じたことに過失がない場合も同様です。

もっとも、「破綻を信じたことに過失がない」といえるためには、相応の根拠があって信じたことが必要です。単に不貞相手から「もう夫婦関係は終わっている」と聞いていただけでは、過失がないとはいえません。

慰謝料が時効にかかっている

不貞慰謝料請求権は3年で時効にかかりますので、時効の期限を過ぎていた場合には慰謝料を支払う必要はありません。

ただし、時効期限のカウントがスタートするのは、相手方配偶者が「損害及び加害者を知ったとき」からです。最後に不貞をしたときとイコールでないことには留意する必要があります。

また、時効のことを失念して、「慰謝料を支払います」と約束(債務承認)してしまうと、もはや時効を主張する権利(時効の援用権)がなくなってしまうので注意しましょう。

請求者が不貞相手から高額の慰謝料を受け取っている

不貞慰謝料は、不貞相手との連帯債務ですので、不貞相手が既に高額の慰謝料を支払っている場合、「私の支払うべき分はもう残っていない」と主張できる可能性があります。

なお、不貞相手から「私が支払いすぎた分を返還してもらう」という求償請求がなされる可能性は別途残ります。

不貞はしたが証拠がない場合の慰謝料について

「不貞をしたけれど、相手方配偶者に証拠がないから知らないふりをすればよいのでは?」と考える人もいるでしょう。

相手方配偶者が証拠を持っていない場合、相手方配偶者は裁判で勝つことができませんから、たしかに不貞をしても慰謝料を支払わずに済む可能性はあります。

しかし、弁護士として虚偽報告することをお勧めできないことはもとより、不貞の事実があるのに否認をすることにはリスクがあります。

ご自身では何も証拠を残していないつもりでも、探偵の調査などで証拠がとられている可能性もあります。

また、不貞相手の所持するドライブレコーダーやクレジットカード明細といった、思わぬものから噓が暴かれることもあり、相手方配偶者がどのような証拠を出してくるかはわかりません。

さらに、味方だと思っていた不貞相手が、土壇場で相手方配偶者の側についてしまい、こちらに不利な証言をすることも考えられます。

否認したまま不貞の事実が認定されてしまうと、不誠実であるとみなされて、不貞を認めて謝罪した場合よりも、高額の慰謝料が命じられる可能性もあります。

相手が法外な慰謝料請求してきたときの対応について

相手方配偶者の請求が法外に高額な場合、当然そのまま支払う必要はありません。

裁判で認められる慰謝料額にはかなりの幅があるため、相場といった金額提示は難しいのですが、不貞が原因で離婚した場合で300万円程度、離婚に至らないケースでは数十万円~100万円程度のイメージを持っておくとよいでしょう。

ご自身で「◯◯円程度なら支払います」と交渉を行ってもよいのですが、相手方配偶者に押し切られる不安がある場合には、弁護士に相談しましょう。

例え法外な金額であっても、ひとたび支払いの約束を取り交わしてしまうと、後から「高すぎるから支払わない」ということは基本的にできません。慰謝料額が公序良俗に反するほど高い場合には「約束は無効」ということもできますが、かなり例外的な場合です。例えば、弁護士の感覚からすると1000万円の不貞慰謝料はかなり高額ですが、公序良俗に反して無効だとまではいえない可能性が高いです。

相手が弁護士をたてて慰謝料請求してきた場合の対応について

相手方配偶者が弁護士を立てている場合、こちらも弁護士に依頼することをおすすめします。

交渉力に差があることに加え、直接話をすると、電話や面談で会話を誘導され、証拠となる発言をとられてしまうリスクもあります。また、慰謝料額は不当でなくとも、示談条件が相手方配偶者有利に設定されている可能性もあります。

弁護士が相手方配偶者の代理人についた場合、内容証明郵便での請求書を送ってくることが一般的です。「◯◯日以内に支払いをしないと訴訟提起します」という文言を見て慌てる方も多いですが、これは、主に無視や回答遅延を防ぐための記載です。請求者側も、できれば交渉で支払ってほしいと思っているのが通常ですから、1日でも遅れたらすぐに訴訟を起こされるといったことは稀です。

ご自身が弁護士に相談・依頼できるのが期限後になってしまう場合、「◯◯日までには回答するので待ってほしい」と弁護士に連絡をしておくことで、それまでは待ってもらえることが多いでしょう。ちなみに、この連絡の際に「不貞を認めるのか」等の質問をされることもありますが、ひとまずその場での回答を避けるか、連絡自体を手紙やFAXで行う方が無難です。

裁判を起こされた場合の対応

ご自身で交渉したが折り合えずに裁判を起こされた場合や、いきなり裁判となった場合、こちらも弁護士を依頼し、裁判の代理人になってもらうことが必要です。

裁判で出した主張や証拠は、良くも悪くも裁判官の判断材料になってしまいます。「自分でできるところまでやって、困ったら弁護士にお願いしよう」というやり方では、後からリカバリーすることが難しくなります。初期の対応から弁護士に相談・依頼をすることをおすすめします。

慰謝料請求されてから解決までの流れ

慰謝料請求を受けてから、解決するまでの一般的な流れはおおよそ次のとおりです。

金額や条件の交渉

慰謝料を支払って示談する方向で話を進めるのであれば、慰謝料額や支払い時期・支払方法(一括か分割か)を交渉します。

また、金額の合意ができそうであれば、その他の条件の交渉も並行して行います。

お互い第三者に不貞のことを口外しないことを約束する口外禁止条項や、不貞相手への接触を禁止する接触禁止条項などを定めるケースが多いです。

そもそも支払うことが難しい慰謝料額や、非現実的な条件での合意とならないよう注意しましょう。

交渉が成立したら合意書を作成する

慰謝料額と条件で折り合うことができれば、合意書を作成します。お互いがサインすることで正式に合意したことが証明できます。また、清算条項を入れることで、後から「慰謝料額が思ったより少ないので金額を上乗せしてもらおう」といった蒸し返しが起こることを防げます。

一度合意書にサインをして約束を違えてしまうと、相手方配偶者から裁判を起こされるなどの不利益があるため、合意の際には弁護士に相談するなど慎重に検討しましょう。

交渉が決裂すると、裁判での解決を図る

交渉が決裂した場合、相手方配偶者がなお慰謝料を請求したいのであれば裁判を起こしてくるでしょう。

裁判でお互いに主張と証拠を出し合い、最終的には裁判官が慰謝料発生の有無や慰謝料額はどの程度が妥当かを判断することになります。

裁判になれば真っ先に思いつくのは「判決」ですが、裁判手続きの中で和解して解決するケースも多くあります。不貞があったことには争いはないが、金額の折り合いがつかずに裁判に発展した場合、和解で終わるケースが多くみられます。

実際に慰謝料の支払いを行う

合意や裁判で慰謝料の金額や支払い方法が定められたら、その内容に従って支払いを行います。合意書の約束を破って支払いを行わなかった場合、合意への違反として裁判を起こされることがあります。また、判決や裁判上の和解で決まった慰謝料を支払わなかった場合、預貯金や給与の差押えといった強制執行をされるリスクもあります。

不貞慰謝料請求されたら、すぐ弁護士に相談する

不貞慰謝料を請求されたら、慌てて相手方配偶者や相手方の弁護士に連絡を取る前に、まずはご自身も弁護士に相談するようにしましょう。

請求内容は妥当なのか、どのように対応していくべきかをよく相談し、必要に応じて交渉の代理人として弁護士に依頼することをおすすめします。

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この記事の監修

離婚・不倫は、当事者の方を精神的に消耗させることが多い問題です。また、離婚は、過去の結婚生活についての清算を図るものであると同時に、将来の生活を左右するものであり、人生全体に関わる問題といえます。
各問題を少しでもよい解決に導き、新しい生活をスタートさせるお手伝いができれば幸いです。

弁護士三浦 知草

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