離婚・不倫慰謝料の基礎知識

離婚相手が弁護士を立ててきた場合の対応について

離婚相手が弁護士を立ててきた場合の対応について

離婚協議を進める中、財産分与や親権などの条件面で話し合いがまとまらず、お互いの意見が平行線をたどり、協議が停滞してしまうことがあります。

協議が膠着しているときに離婚相手が弁護士を代理人に立ててきたとき、弁護士との話し合いではこちらに不利な条件で協議が進んでしまうのではと、不安に感じるかもしれません。

このように、離婚相手の代理人弁護士から書面で通知を受けた場合、今後どのように対応・協議に臨むべきでしょうか。

ここでは、離婚相手に弁護士が就いた場合の対応や注意点について解説します。

この記事の内容

今後の離婚協議において不利な交渉となる可能性がある

相手方に弁護士がついた場合でも、ご自身で交渉し、離婚成立まで進めることができる方もいらっしゃいます。もっとも、相手方弁護士に対する対応を誤ると、ご自身にとって不本意・不利益な形での離婚になってしまうこともあります。

相手方弁護士は「中立な第三者」ではない

弁護士は、依頼者の意思を尊重し、依頼者の権利と正当な利益を実現することをその職責としています(弁護士職務基本規程第21条、第22条)。

つまり、相手方についている弁護士は、あくまでも相手方の代理人として、相手方の利益を最大化するために動いているのであり、決して中立な第三者ではありません。

また、弁護士は、専門家として離婚事件の知識と経験を蓄積していますが、当事者ご本人は、離婚手続きについて熟知していないことがほとんどです。そのため、相手方本人や相手方弁護士に対して無自覚にとった言動が、ご自身にとって不利な形で利用されてしまうケースも少なくないのです。

では、相手方に弁護士がついた場合にどんな問題点が出てくるかについて、具体的に解説します。

相手方と直接やりとりできなくなる

相手方に弁護士がつくと、通常「本件については直接相手方に連絡をすることはお控えください。」といった通知が送られてきます。相手方本人に連絡を取ってみても、無視されるか、「弁護士に連絡してください。」の一点張りの返事しか返ってこなくなります。これまで夫婦として生活してきたのに、突然会って話をすることすらできなくなることに、納得しがたい思いを抱える方も多くいらっしゃいます。

また、相手方が幼いお子さんを連れて別居している場合、お子さんと会うこともできなくなってしまうことがあります。

言動を証拠化されてしまう

相手方に弁護士がついた際、驚いて弁護士に電話をかける方もいらっしゃいます。この際、相手方弁護士は、こちらに不利な事実を認めさせるように、さりげなく仕向けてくることがあります。不貞行為や暴力などを認める発言は、電話の録音であっても証拠にされます。

また、相手方本人や弁護士に送った手紙・メール・LINEなどは、すべて証拠として利用される可能性があります。相手方が閲覧できるSNSなども同様です。

弁護士から通知がきたことに動揺して、不用意な言動を取ってしまうと、自分に不利な証拠とされてしまうリスクがあり、注意が必要です。

相手方に有利な条件を求められる

相手方に弁護士がつくと、相手方に有利な条件での離婚を求められることになります。

弁護士が提示する条件は、相手方にとって一方的に有利な条件や、不合理な条件であることがあります。また、一見すると平等に見えても、例えば、財産分与の基礎となる財産の評価などが、実は相手方に有利に算定されているといった場合もあり、ご自身にとって不利な内容だと気付かないまま離婚に合意してしまうリスクがあります。

相手方のペースで手続きが進んでしまう

相手方に弁護士がつくと、手続きは相手方に有利なペースで進められてしまいます。

よくわからないまま様子を見ているうちに、婚姻費用を支払い続けなければならない期間が長期化したり、お子さんの親権者になるのが難しくなってしまうこともあります。

現状の正しい把握ができない

当事者ご本人では、現状を的確に把握することは難しいといえます。

調停や裁判が現在どの段階にあり、どちらに有利に進んでいるのかがわからず、いつになれば終わるのかもわからない状態は、離婚手続きの不安やストレスを高めます。

特に離婚事件の場合、離婚そのものについての調停・裁判のほか、お子さんに関する調停(監護者指定や面会交流)、婚姻費用の調停、不貞などの慰謝料請求といった別個の手続きが、同時に、あるいは五月雨式に申し立てられることもあり、慣れていない当事者は、今自分が何の手続きをしているのかわからなくなってしまうことすらあります。

また、状況によっては、相手方が動くのを待たずにこちらから調停・審判や保全処分の申し立てを行う必要があるのですが、そうした手続きの必要性やタイミングを見極めるのも、当事者ご本人には難しいものです。

精神的に疲弊する

相手方に弁護士がつくと、自分が不利になるのではと不安を抱えながら交渉をすることになります。また、弁護士によっては、態度が高圧的だったり、こちらの言葉尻を捕らえるような発言をしてきたりして、やりとりをすること自体がストレスになる場合もあります。さらに、自分の妻・夫と連絡を取ることも、子どもに会うこともできないために、不安が増大し、精神的に疲弊してしまう方もいらっしゃいます。

準備に労力がかかる

調停や裁判では、相手方弁護士が作成した書面や証拠が提出されます。この際、裁判所からは「では次回期日の1週間前までに反論の書面を準備してください。」という指示がなされることが一般的です。ほとんどの方は、裁判所に出す書面の作成に慣れていないため、作成にはかなりの時間と労力がかかります。特に、争点がたくさんあるケースや、複数の調停が同時に行われているケースでは、準備の手間は相当なものになります。

また、通帳や保険証券などの財産関係の証拠をすべて揃え、必要な数のコピーを作り、提出するといった準備も必要になります。

仕事や育児をしながらこれらの準備をすべてご自身で行うのは大変な労力を要します。

弁護士を代理人につけて交渉することを検討する

相手方に弁護士がついた場合、こちらでも弁護士を代理人にして交渉や調停・裁判に臨むことも検討しましょう。

もちろん、自分にも弁護士をつけたからといって、不利な状況を逆転できるケースばかりではありません。もっとも、適時に適切な活動をしなかったことによって、相手方に有利な既成事実ができてしまい、後から挽回することが困難になってしまうこともあります。ご自身の離婚の場合に弁護士をつけるべきか否かを判断するためにも、早いうちに一度法律相談をしてみましょう。

弁護士を立てることのメリット・デメリットについて

次に、弁護士を立てることのメリット、デメリットについてご説明します。

弁護士を立てるメリット

弁護士を立てるメリットには、次のようなものがあります。

依頼者の利益のために動いてくれる

弁護士は、依頼者の利益を実現するために活動します。相手方が申し立てた調停や裁判の手続きの中で、必要な主張・立証を行うとともに、場合によっては、相手方にあるはずの証拠を出すよう促したり(求釈明)、裁判所から証拠となる文書を出すよう相手方に命じてもらうよう申し立てを行うこともあります(文書提出命令申立て)。

また、こちらから積極的に行うべき手続きがあれば、適切なタイミングで申し立てをしますから、手続きが相手方のペースで進んでしまうこともなくなります。

離婚条件が不当に不利なものにならない

弁護士は、交渉や調停の中で、依頼者にとって最善のものとなるように離婚の条件を調整します。ある条件を定めることで、ご自身にどんな影響が出るかを弁護士と確認しながら調整を行うことができますので、気付かずに不当・不平等な条件での離婚になってしまうことを避けることができます。

書面の作成や資料収集の手間が省ける

調停や裁判で必要な主張書面を作成したり、各種資料を収集・精査するのは弁護士の役割になるため、当事者ご本人が準備をする手間が省けます。

精神的な不安が減る

ご自身側にも弁護士を立てることで、手続きが相手方ペースで進んでいる不安が解消できるほか、手続きや勝訴の見込みの説明を受けることができるため、不安が解消されます。

弁護士を立てるデメリットはあるか

離婚の手続きを行う上で、弁護士を立てることのデメリットとなりうるのは主に費用の面です。

離婚の場合、対立が激しく手続きが長期化する場合や、複数の調停・審判などが同時進行するような場合には、弁護士費用が高額になりやすいといえます。

相手方からせっかく財産分与や慰謝料を受け取っても、弁護士への報酬で費用倒れになるということもないわけではありません。

そのため、相手方に請求できる見込み額、弁護士を立てるメリット、弁護士費用の見積もりなどを事前にきちんと説明してくれる弁護士を選ぶことが重要です。

費用が捻出できない場合には法テラスの利用を検討する

弁護士を立てることにメリットが大きく依頼したいが、費用のことを考えると依頼を躊躇ってしまうという場合があります。

結婚生活時にパートタイマーや専業主婦(主夫)だった方は、すぐに安定した収入のある仕事に就けるとは限らず、自分名義の財産も少ないことから、まとまった弁護士費用の捻出が難しいこともあります。特に、お子さんを連れて別居し、相手方が婚姻費用を支払わないような場合には、ご自身とお子さんの生活費だけで精一杯ということも少なくありません。

このような場合には、法テラス(日本司法支援センター)による弁護士費用の立て替え払い制度の利用を検討しましょう。

関連ページ

法テラスは、国が設置した機関で、収入と資産が一定額以下の方に対して、弁護士費用を立替払いしてくれる仕組みになっています。立て替えてもらった費用は、毎月5000円~1万円ずつ分割で返済する他、財産分与や婚姻費用でまとまったお金を受け取った場合には、そこからまとめて返済することになります。

相手方が夫婦の財産を管理していて、財産分与されるまで手元にお金がない場合や、急いで弁護士を立てる必要があるが着手金の準備ができない場合には、法テラスの利用を検討してみましょう。

離婚問題で弁護士を立てるべきタイミングについて

ここまで相手に弁護士が就いたケースにおいての注意点や対応について解説しましたが、離婚問題ではどのタイミングで弁護士を立てるべきでしょうか。

理性的に協議が進行し、お互いが納得のいくかたちで離婚成立の目処が立つのであれば、無理に弁護士を立てる必要はありません。

しかし、お互いに相手の非を持ち出して理性的な話し合いができない、明らかに無理筋の条件を提示して譲らないなど、協議が進展しないケースでは弁護士に相談・依頼することは検討する必要があるかもしれません。

ここでは、離婚協議、調停・審判、裁判において弁護士への依頼を検討すべきケースについて説明します。

速やかに弁護士に相談すべき場合

まず、手続きの段階を問わず、速やかに弁護士に相談をすべき場合についてご説明します。

相手方が子どもを連れ去ってしまった場合

同居当時ほとんど育児をしていなかった相手方が、子どもを連れて別居してしまった場合や、子どもを面会交流のために相手方に預けたところ、こちらに帰すのを拒否された場合には、できる限り早期に弁護士に相談しましょう。

親であっても、子を主たる監護者(主にその子の世話をしている親)から引き離して連れていく・返さないことは、違法な連れ去りにあたる場合があります。しかし、連れ去りから長期間が経ち、子どもが、相手方との生活に慣れ親しんでしまうと、子どもの生活や心情の安定が優先されて、裁判所が相手方を監護者、ひいては親権者として指定してしまうおそれがあります。

子どもを連れ去られた場合には、早急に子の引渡し・子の監護者指定の審判(調停)と保全処分の申立てを行う必要があります。子を返してもらい、離婚時に親権者となるためには、連れ去りから手続きを行うまでのスピードが重要ですので、速やかに弁護士に相談するようにしましょう。

暴力や脅迫など身の危険がある場合

相手方からの暴力や脅迫行為などのDV、つきまとい行為がある場合、ご自身だけで離婚手続きを進めるのには危険が伴います。隠している現住所を突き止められることや、裁判所内で相手方に会ってしまうことを防ぐための配慮をしつつ、手続きを進める必要があります。また、激しい暴行などの危険性が高い場合には、「保護命令」の手続きを先行させることになります。警察への相談を行うとともに、弁護士を代理人として立てて、想定される危険を回避するようにしましょう。

また、身の危険はなくとも、相手方が勤め先に何度も電話や訪問をしてきたり、嫌がらせ目的で警察や児童相談所に正当な理由なく通報するといった迷惑行為がある場合にも、弁護士に依頼をして中止を求めるとともに、迷惑行為の証拠化を行うことをおすすめします。

離婚協議で弁護士に相談することを検討するべきタイミング

多くの場合、離婚は協議からスタートします。話し合いであれば、弁護士を頼まずに自分で進めようと考える方もいらっしゃいますが、以下のような場合には協議であっても弁護士に相談することをおすすめします。

感情対立が激しく、冷静に話し合える状況でない

不貞行為など夫婦の一方に非があって結婚生活が破綻した場合には、感情対立は激しくなりがちです。気持ちが前面に出てしまい、離婚条件を冷静に摺り合わせることが難しいことがあります。感情的に主張をすることで、かえって対立が深くなり、協議での解決が難しくなることを避けるため、弁護士に相談することが有益です。

離婚をするか・しないかに対立がある

そもそも離婚をするか・しないかについて意見が平行線の場合、話し合いを続けても時間が経つばかりで解決には至りません。適切なタイミングで協議に見切りをつけ、調停など次のステップに進む必要があります。協議を打ち切るタイミングの判断とともに、離婚訴訟までもつれた場合の勝訴見込みはどの程度かについても考えておく必要があるため、一度弁護士に相談してみましょう。

子どもの問題で対立している

離婚において大きな対立点になりやすいのが、お子さんの問題です。夫婦のどちらにとってもかけがえのない我が子であるにも関わらず、現行法上夫婦のどちらか1人を親権者として離婚しなければならないため、お子さんの取り合いが深刻化しやすいといえます。

お子さんの取り合い問題は、「同居親が子どもに会わせてくれない」「別居親が婚姻費用を支払わない」といった派生する問題にもつながりやすく、さらに渦中にいるお子さんの精神面に悪影響を及ぼすこともあります。お子さんを必要以上に夫婦の争いに巻き込まず、親権などの目的達成に必要な対応を冷静にとるためにも、弁護士に相談することをおすすめします。

不動産などの財産分与で対立している

預貯金などの流動性のある財産が夫婦の財産のメインになっている場合、単純に金額の調整を行えばよく、大きな対立になることは比較的少ないといえます。一方、マイホームなどの不動産が財産の大きな割合を占めていたり、夫婦で共同ローンを組んでいたりすると、単純に今ある財産を半分に分けるという処理はできません。

このような分けにくい財産の場合、当事者にはそもそもどういった分け方が適切かわからないこともありますし、滞りなく財産分与をするための段取りも必要となってきます。当事者同士で調整することが難しい場合には弁護士に相談してみましょう。

相手方が引き延ばしを図っている

相手方に手続きを早期に進めたくない事情がある場合、こちらの提案に前向きに回答しようとせず、協議の引き延ばしを図ることがあります。具体的には、相手方が婚姻費用を受け取っている場合、親権獲得のため単独で子の監護をしている実績を積みたい場合、離婚そのものに積極的でない場合などです。

このような場合には、協議に見切りをつけて調停を申立てるなど、こちらから積極的に手続きを動かす必要があります。相手方から引き延ばしされていると感じる場合には、弁護士に相談してみましょう。

離婚調停で弁護士に相談することを検討するべきタイミング

離婚調停は、裁判所に場を変えた話し合いの手続きのため、必ずしも弁護士を立てないと進められないわけではありません。もっとも、以下のような事情がある場合には、弁護士に相談することをおすすめします。

離婚をするか・しないかに対立がある場合

調停での話し合いを続けても、離婚するか・しないかについて当事者の意見が対立したままの場合、調停は不成立(不調)となり、手続きが終了します。それでも離婚をしたい当事者は、離婚訴訟を提起する必要があります。

調停が不調になり、離婚訴訟になることが見込まれる場合には、調停段階で弁護士を立て、訴訟になった場合に離婚事由(不貞、暴力、長期別居など夫婦としての関係を続けられなくなるような重大な事情)が認められるかどうか、金銭の支払いなどの条件を調整することで相手方が離婚に応じる余地はないかを見極めることが有益です。

子の監護権・親権に対立がある場合

現行法では、お子さんの親権者をどちらかに決めなければ離婚ができないため、双方が親権を譲らない場合、調停離婚ができず、離婚訴訟の中で親権者を決定することになります。

また、親権者決定の前段階ともいえる子の監護者指定の調停・審判においても、争いが先鋭化しやすいといえます。双方が、監護者の指定を勝ち取ろうと必死になった結果、相手の育児や相手の監護補助者(相手の親族など子の世話を助けてくれる人)を非難する主張を展開することが多く、感情対立がいっそう激しくなりがちです。

子の監護をしている側の当事者(監護親)は、必要な主張反論は行いつつ、自分の養育実績を積み上げることになります。相手方が監護者になってしまうかもしれないという不安から、子に相手方の悪口を聞かせたり、面会交流を妨げたりすることで、かえって監護者としての適格性を減じてしまうことがないように、弁護士のサポートを受けて不安を解消することが大切です。

監護をしていない側の当事者(非監護親)は、相手方が監護者としての適格性に欠けることの主張・立証を行い、監護者として適切なのは自分の方であることを裁判所に理解してもらう必要があります。しかし、当事者ご本人の主張は、必死になるあまり相手方への誹謗中傷に至ってしまうこともあります。子の監護者・親権者になれない可能性が高い場合には、できる限り有利な条件での面会交流ができるようにシフトチェンジすることが必要なのですが、相手方を激しく非難してしまうとスムーズな面会が難しくなってしまいます。味方でありつつ冷静な第三者でもある弁護士に相談することが有益です。

財産分与のために保全手続きを申し立てる場合

夫婦の財産である自宅を売却して現金化してしまうなど、当事者が自分名義の財産を散逸するリスクが高い場合には、不動産の処分禁止の仮処分・債権の仮差押えなど、財産を保全するための手続きを行う必要がある場合があります。

相手方が財産を散逸させるおそれがある場合には、速やかにその財産を保全する必要があります。保全処分は、まだ財産分与の権利が確定していないのに財産を仮に押さえることができる強力な処分なので、散逸リスクが高いこと(保全の必要性)や仮に押さえる財産を分与してもらえる可能性の高さ(被保全権利の存在)などを、裁判所に理解してもらい、保全処分を発令してもらわなければなりません。また、実際に財産が処分されてしまわないうちに、素早く保全処分を行う必要があります。

正確かつ迅速な申し立てをするために、保全処分を申し立てる際には弁護士に依頼をすることが望ましいです。

子の監護者指定・子の引渡しの保全処分を申し立てる場合・申し立てられた場合

自分が監護していた子を連れ去られた場合には、早期に子の監護者指定の仮処分・子の引渡しの仮処分を求める保全処分申立てを行う必要があります。既にご説明したとおり、スピードが重要な手続きですので、早期に弁護士に相談しましょう。

自分が子連れ別居をして、相手方から連れ去りを主張されている場合には、子に適切な養育を行いつつ、連れ去りではないこと・現在の自分の監護が適切であることを主張・立証することになります。

子に関する保全処分の手続きは、子の監護者指定・引渡しの本案(調停・審判)や親権獲得にも直結する重要な手続きですので、申立人・相手方どちらになる場合にも、弁護士に相談するようにしましょう。

複数の手続きが係属する場合

離婚事件では、離婚(夫婦関係調整)の調停・裁判のほかに、婚姻費用、子の監護者指定、面会交流などの調停・審判が同時に係属します。さらには地方裁判所で、不貞行為に対する慰謝料請求訴訟なども同時進行することがあります。

各調停は同じ期日に進行することもあれば、別日に設定されることもあり、慣れていないと、今どの問題がどのように扱われているのかを把握するのも大変です。また、各手続きには主張書面や証拠をそれぞれ準備しなければなりません。

複数の手続きが同時進行すると、当事者が手続きを進める労力も相当なものになるため、弁護士に相談することをおすすめします。

相手方が不合理な主張をする場合

こちらが正当な主張をしているにもかかわらず、相手方が不合理な主張に終始し、手続きが思うように進んでいかないことがあります。また、調停委員もこちらに譲歩を迫ってくることもあり、自分の主張が本当に正しいのか不安になってしまうことがあります。

調停において調停委員に決定権はなく、裁判官のように審判や裁判の結論を左右する権限はありません。相手方の主張が不合理であれば、きっちり反論し、場合によってはあえて調停を早期に不調にして、裁判や各種審判の手続きに進む判断も必要です。不安に感じる場合には、弁護士に相談してみましょう。

離婚裁判で弁護士に相談することを検討するべきタイミング

調停で決着がつかず、離婚訴訟になった場合には、弁護士を代理人にした方がいいケースがほとんどです。ご自身で訴訟を行うこともできなくはないのですが、調停に比べ準備にかかる労力が格段に大きくなり、負担が増します。

調停が不調になったのち、訴訟を提起されたり、こちらから訴訟を提起したい場合には、まずは弁護士に相談してみましょう。

訴訟は調停と異なり、もはや話し合いではありません。主張は基本的にすべて書面で準備し、証拠も揃える必要があります。弁護士は訴訟の専門家ですが、裁判が進んだ段階で相談をいただいても、残念ながらリカバリーは難しい場合が多いです。訴訟を行う際には、裁判所に最初の書面を提出する前の段階で一度弁護士に相談するようにしましょう。

相手が弁護士を立ててきた段階で一度弁護士に相談する

ここまで離婚相手が弁護士を立ててきたケースでの対応方法や留意点について説明してきましたが、相手に離婚協議の経験豊富な弁護士が就いたのであれば、交渉が不利な状況となる可能性が高くなります。

協議が展開する前に一度弁護士に相談し、状況を確認してもらいながら弁護士を就けて対応するべきかどうか検討されることをおすすめします。

この記事の監修

離婚・不倫は、当事者の方を精神的に消耗させることが多い問題です。また、離婚は、過去の結婚生活についての清算を図るものであると同時に、将来の生活を左右するものであり、人生全体に関わる問題といえます。
各問題を少しでもよい解決に導き、新しい生活をスタートさせるお手伝いができれば幸いです。

弁護士三浦 知草

離婚・不倫慰謝料の
ご相談は初回無料です

東京・千葉・茨城で離婚・不倫問題に関するご相談予約

  • ※配偶者と同居中で、具体的な離婚のご予定がない方のご相談はお受けできないことがございますので、予めご了承ください。