交通事故被害の基礎知識

交通事故における体幹(脊柱・その他の体幹骨)の後遺障害

交通事故における体幹(脊柱・その他の体幹骨)の後遺障害

体幹のなかで脊柱とは背骨を指し、その他の体幹骨は鎖骨、胸骨、肋骨、肩甲骨、骨盤骨を指します。

交通事故による脊柱をはじめとする体幹骨のケガとして、圧迫骨折や破裂骨折、関節の脱臼などがあり、こうしたケガで骨の変形や運動障害が発生するなど、後遺障害が残ることもあります。

ここでは、脊柱やその他の体幹骨の内容や後遺障害の等級について解説します。

この記事の内容

脊柱の構造の概略

脊柱は、体幹の中心を支える支柱の役割をする骨です。「椎骨」が重なってできており、椎骨の前側部分である「椎体」の間には、弾力のある「椎間板」が挟まっています。また、椎骨は、「脊髄」を保護する役割も果たしています。

脊柱は、脊椎と呼ばれる5つの部位に分類され、頚椎、胸椎、腰椎、仙椎、尾椎を指します。脊柱を横から見ると、頚椎と腰椎は前に、胸椎と仙骨は後ろに彎曲(わんきょく)して、緩やかなS字を描いています。この「正常彎曲」のつくりによって、直立姿勢でバランスを保ちやすく、歩いたり走ったりするときの衝撃を吸収することができるのです。

脊柱の後遺障害について

脊柱の後遺障害としては、変形障害と運動障害があります。

脊柱の後遺障害等級の認定にあたり、仙骨及び尾骨は脊柱と扱われません。脊柱の後遺障害は、頚部や体幹の支持機能や保持機能、運動機能に着目したものであるため、これらの働きに殆ど関与していない仙骨・尾骨については、脊柱として扱っておりません。

残りの頚椎、胸椎、腰椎のうち、頚椎(頚部)は主に頭部を支える機能を、胸椎・腰椎は主に体幹を支える機能を担っており、主な機能が異なるため、頚椎と胸腰椎は原則として異なる部位として取り扱い、それぞれの部位ごとに等級認定がなされます。

なお、診断書で用いられる「C1」や「T3」などの表記は、脊柱のどの部分が病傷したかを表示したものです。頚椎が「C1~7」、胸椎が「T1~12」、腰椎が「L1~5」で、番号は上から順に振られています。

脊柱の変形障害

脊柱の変形障害には、「著しい変形」、「中程度の変形」、単なる「変形」の3つの等級があります。

脊柱変形の認定基準の記載には日常生活で使用しない用語が多く、非常にわかりにくいので、1つずつご説明します。

まず、変形障害が認定されるためには、「エックス線写真等により、圧迫骨折等を確認できる」ことが前提です。

「エックス線写真等」には、エックス線写真(レントゲン画像)の他、CT画像、MRI画像が含まれ、何らかの画像で確認できることが要求されます。

「圧迫骨折等」には、圧迫骨折の他、破裂骨折等の骨折や脱臼が含まれます。

脊柱に著しい変形を残すもの

脊柱の「著しい変形」については、「後彎(こうわん)」と「側彎(そくわん)」で判断します。

「後彎」は、脊柱が後ろに曲がっている状態です。健常な状態の脊柱を横から見ると、緩いS字カーブを描いているのですが、本来は前彎(ぜんわん)しているはずの腰椎が後ろに曲がったり、胸椎がさらに大きく後ろに曲がったりして、緩いS字が崩れた形になります。外観は、背中が丸まったいわゆる猫背の状態になります。

「側彎」は、脊柱が左右に曲がっている状態です。健常な状態であれば前後から見た脊柱は真っ直ぐですが、側彎の状態になると、左右にゆがんだりねじれたりします。後彎と異なり、外観からは側彎していることはわかりにくいといえます。

なお、先ほど頚椎と胸腰椎では原則異なる部位として扱うと説明しましたが、変形障害の場合には、例外的に、頚椎と胸腰椎にまたがった変形でも1つの後遺障害として等級認定されます。

では、各等級を見ていきます。

脊柱に著しい変形を残すものの後遺障害等級と認定基準

等級 認定基準
第6級5号 1、エックス線写真等により、脊椎圧迫骨折等を確認できるものであって、脊椎圧迫骨折等により2個以上の椎体の前方椎体高が著しく減少(減少したすべての椎体の後方椎体高の合計と減少後の前方椎体高の合計との差が、減少した椎体の後方椎体高の1個あたりの高さ以上であるもの)して後彎が生じているもの
2、エックス線写真等により、脊椎圧迫骨折等を確認できるものであって、脊椎圧迫骨折等により1個以上の椎体の前方椎体高が減少(減少したすべての椎体の後方椎体高の合計と減少後の前方椎体高の合計との差が、減少した椎体の後方椎体高の1個あたりの高さの50%以上であるもの)し、後彎を生じるとともに、コブ法による側彎度が50度以上となっているもの

脊柱の骨折には、椎体の前側が潰れる場合、真ん中が潰れる場合、全体的に潰れる場合がありますが、交通事故による圧迫骨折では、前側が潰れるケースがほとんどです。

認定基準1は、後彎の程度が強いものです。

「2個以上の椎体の前方椎体高が著しく減少し」たとは、2つ以上の椎体が潰れてしまったケースです。この2個以上の潰れた椎体の前側の高さの合計から、同じ椎体の後ろ側の高さの合計を差し引いた値が、後ろ側の高さ1つ分よりも大きい場合、「著しく減少し」たものといえます。

例えば、圧迫骨折で、前の高さが60mm、後ろ側の高さが100mmの椎体が4個生じたとすると、(後ろ側100mm×4つ-前側60mm×4つ)=160mm>後ろ側100mmとなり、この要件を満たします。

認定基準2は、後彎と側彎がともに生じているものです。1よりも後彎の要件は軽くなりますが、同時に側彎の要件を満たすことが必要です。

「1個以上の椎体の前方椎体高が減少」したという要件は、認定基準1と同様に考えます。潰れた椎体の前側の高さの合計から、同じ椎体の後ろ側の高さの合計を差し引いた値が、後ろ側の高さの50%よりも大きい場合、「減少し」たといえます。

次に「コブ法による側彎度が50度以上となっている」の要件を見ていきます。

「コブ法」とは、レントゲン写真を用いて側彎を測定する手法です。頭(上)側で最も大きく傾いている椎体の上縁の延長線と、尾(下)側で最も傾いている椎体の下縁の延長線が交わる角度を計測し、これが50度以上であれば要件を満たします。

コブ法を図で表すと以下の通りです。

脊柱に中程度の変形を残すもの

脊柱の中程度の変形についても、後彎と側彎を見ていきます。

脊柱に中程度の変形を残すものの後遺障害等級と認定基準

等級 認定基準
第8級2号 1、エックス線写真等により、脊椎圧迫骨折等を確認できるものであって、脊椎圧迫骨折等により1個以上の椎体の前方椎体高が減少(減少したすべての椎体の後方椎体高の合計と減少後の前方椎体高の合計との差が、減少した椎体の後方椎体高の1個あたりの高さの50%以上であるもの)して後彎が生じているもの
2、エックス線写真等により、脊椎圧迫骨折等を確認できるものであって、コブ法による側彎度が50度以上となっているもの
3、エックス線写真等により、脊椎圧迫骨折等を確認できるものであって、環椎または軸椎の変形・固定(環椎と軸椎との固定術が行われた場合を含む)により、次のいずれかに該当するもの
(1)60度以上の回旋位となっているもの
(2)50度以上の屈曲位または60度以上の伸展位となっているもの
(3)側屈位となっており、エックス線写真等により、矯正位の頭蓋底部の両端を結んだ線と軸椎下面との平行線が交わる角度が30度以上の斜位となっていることが確認できるもの

  • ※(1)(2)については、軸椎以下の脊柱を可動させずに(被害者にとって自然な肢位で)回旋位または屈曲・伸展位の角度を測定する

認定基準1と2の考え方は、「著しい変形」の認定基準2の考え方と同じです。

後彎の要件と側彎の要件の両方を満たしていれば「著しい変形」、いずれか一方のみを満たしていれば「中程度の変形」となります。

認定基準3について見ていきます。

この基準は後彎・側彎とは違う観点で定められています。

まず、「環椎」とは、頚椎の1番上のC1の骨、「軸椎」はC2の骨を指します。この2つの骨は、C3以下の骨とは違う構造をしています。

頭の骨と環椎の間、環椎と軸椎の間には椎間板がなく、関節を大きく動かすことができます。首をぐるぐる回すことができるのは、この構造によります。大きく動かせるということは、反面不安定な構造であることも意味します。

環椎・軸椎に圧迫骨折等が生じ、変形した状態で固定してしまったのが(1)~(3)です。

事故自体で変形・固定した場合の他、固定術の手術を行った場合も含みます。

環椎・軸椎が変形して固定し、あるいは固定術で動かせなくなると、首の可動域は大きく下がり、同時に運動障害に当たる場合が多いです。脊柱の運動障害については後ほどご説明します。

脊柱に変形を残すもの

次に、脊柱に単なる「変形」を残すものについてご説明します。

脊柱に変形を残すものの後遺障害等級と認定基準

等級 認定基準
第11級7号 1、脊椎圧迫骨折等を残しており、そのことがエックス線写真等により確認できるもの
2、脊椎固定術が行われたもの(移植した骨がいずれかの脊椎に吸収されたものを除く)
3、3個以上の脊椎について、椎弓切除術(椎弓の一部を切離する脊柱管拡大術も含む)等の椎弓形成術を受けたもの

まず、認定基準1は、圧迫骨折等がエックス線写真等で確認できることです。

日本骨形態計測学会・日本骨代謝学会・日本骨粗鬆症学会・日本医学放射線学会・日本整形外科学会・日本脊椎脊髄病学会・日本骨折治療学会で構成される椎体骨折評価委員会の定める「椎体骨折評価基準」では、

  • 椎体の前縁の高さが後縁の高さの0.75倍未満の場合
  • 真ん中の高さが前縁・後縁いずれかの高さの0.8倍未満の場合
  • 椎体全体の高さが全体的に減少する場合には、その椎体の上か下の前縁・真ん中・後縁よりそれぞれ20%以上減少している場合
  • 新鮮な骨折でエックス線写真上明らかに骨皮質の連続性が断たれたもの

のいずれかに当てはまる場合を圧迫骨折としており、等級判断にも参考になります。

関連リンク

認定基準2は、「脊椎固定術」が行われた場合です。「脊椎固定術」とは、背骨の変形や不安定さをなくすために、背骨の形を矯正する手術で、交通事故以外にも、椎間板ヘルニアによる腰痛の治療などに用いられます。

患部に金属の固定具を入れるか、または患者自身の骨を入れて固定します。この移植した骨が脊椎に吸収された場合には、等級には該当しません。

認定基準3は、「椎弓切除術」を行ったことが要件です。

「椎弓切除術」は、「除圧術」ともいわれ、椎弓(椎骨の後ろ側の部分で、脊髄を取り囲む孔=椎孔を構成している)から切れ込みを入れて開き、人工骨や患者自身の骨を入れて脊柱管を広げ、脊髄への圧迫を取り除く手術です。交通事故以外にも椎間板ヘルニアや脊椎管狭窄症の治療に用いられます。

脊柱の運動障害

脊柱を損傷すると、首、腰の関節を動かせる範囲が狭くなる運動障害が生じます。

脊柱の運動障害の測定方法

脊柱の運動障害については、以下の運動を測定して等級を判断します。

脊柱関節の主要運動と参考運動

部位 主要運動 参考運動
脊柱(頚部) 屈曲と伸展、回旋 側屈
脊柱(胸椎部) 屈曲と伸展 回旋、側屈

「主要運動」とは、各関節における日常の動作にとって最も重要な運動をいいます。関節の運動障害の等級は、原則として主要運動の可動域にどの程度の制限があるかによって評価します。

「参考運動」は、一定の場合に、主要運動とともに等級評価に使われる運動です。

この「主要運動」と「参考運動」以外の運動に制限が生じていても、後遺障害としての評価対象にはなりません。

脊柱は、頚部と胸腰椎部について、それぞれ「参考可動域」が定められています。

手や足などの可動域制限については、障害が生じた側と、生じていない側(健側)の可動域を比較しますが、脊柱には比較対象となる健側がないため、参考可動域との比較によって等級を定めます。

可動域は、原則として他動で測定したものを採用します。ただし、マヒなどで自動運動ができない場合や、関節を動かすとがまんできないほどの痛みが生じるために自動運動できないと医学的に判断される場合には、自動運動の測定値を参考に認定を行います。

なお、屈曲と伸展、左右の回旋、左右の側屈は、合計した角度でもって評価します。

脊柱の参考可動域は以下のとおりです。

脊柱(頚部)参考可動域

運動方向 参考可動域角度
屈曲 60
伸展 50
左旋回 60
右旋回 60
左側屈 50
右側屈 50

脊柱(胸腰部)参考可動域

運動方向 参考可動域角度
屈曲 45
伸展 30
左旋回 40
右旋回 40
左側屈 50
右側屈 50

脊柱に著しい(変形または)運動障害を残すもの

脊柱に著しい運動障害を残すものの等級は以下のとおりです。

脊柱に著しい運動障害を残すものの後遺障害等級と認定基準

等級 認定基準
第6級5号 次のいずれかにより頚部および胸腰部が強直したもの
1、頚椎および胸腰椎のそれぞれに脊椎圧迫骨折等が存しており、そのことがエックス線写真等により確認できるもの
2、頚椎および胸腰椎のそれぞれに脊柱固定術が行われたもの
3、項背腰部軟部組織に明らかな器質的変化が認められるもの

関節の「強直」とは、関節の完全強直(全く関節が動かない可動域0の状態)または完全強直に近い状態にあるものを指します。

「完全強直に近い状態」とは、関節可動域が、参考可動域の10%程度以下の角度に制限されているか、または、関節可動域が10度以下に制限されているかのいずれかの状態です。

「著しい運動障害」といえるためには、この強直が、首と腰の両方に生じていることが必要です。

認定基準1と2の要件は、変形障害の項目でご説明したとおりです。

認定基準3の「項背腰部」とは、項(うなじ)・背中・腰です。「軟部組織」は、骨以外の組織で、筋肉、靭帯、神経、血管、腱などを指します。

「明らかな器質的変化」は、筋肉や靭帯などが、拘縮したり断裂したりしていることが明らかにわかる状態です。

脊柱に運動障害を残すもの

次に、単なる「運動障害」について見ていきます。

脊柱に運動障害を残すものの後遺障害等級と認定基準

等級 認定基準
第8級2号 次のいずれかにより、頚部(主要運動のいずれか一方)または胸腰部の可動域が参考可動域角度の1/2以下に制限されたもの
1、頚椎または胸腰椎に脊椎圧迫骨折等を残しており、そのことがエックス線写真等により確認できるもの
2、頚椎または胸腰椎に脊椎固定術が行われたもの
3、項背腰部軟部組織に明らかな器質的変化が認められるもの
4、頭蓋・上位頚椎間に著しい異常可動性が生じたもの

単なる「運動障害」は、首・腰いずれかに可動域制限があれば認定されます。

原則として主要運動について、参考可動域角度の1/2以下であることが必要です。もっとも、主要運動の可動域が、参考可動域角度をわずかに(10度以下)超える場合で、かつ参考運動のいずれかの可動域角度が1/2以下に制限されていれば、「運動障害」が認定されます。

認定基準の1〜3はここまでご説明してきたとおりです。

認定基準4は、頭の骨と頚部の上の骨の間に、「異常可動性」すなわち関節以外の本来動かない場所の骨が動いたり曲がったりする状態が生じたものです。

ここまで運動障害について見てきましたが、レントゲン写真などの画像から、圧迫骨折等・脊柱固定術・軟部組織の器質的変化などの「他覚的所見」が認められない場合には、運動障害の認定を受けることは困難です。神経症状(痛みなど)として、第14級9号の獲得を目指します。

また、運動障害における可動域制限は、ここまで見てきたように、関節を可動させる機能が損傷した場合に認められるものなので、「痛みで動かせず、可動域が狭くなっている」という状態では認定されません。こちらも神経症状としての等級獲得を目指すことになります。

荷重機能障害について

荷重機能障害は、脊柱の支持機能の障害です。脊柱は、いわば支柱として人体の重みを支えていますが、脊柱を損傷することで、首や腰を自力で支えることができなくなり、補装具で支えを補ってやらなければならない状態になります。

荷重機能障害としては2等級があります。

荷重機能障害の後遺障害等級と認定基準

等級 認定基準
第8級相当 その原因が明らかに認められる場合であって、そのために頚部及び腰部の両方の保持に困難があり、常に硬性補装具を必要とするもの
第6級相当 その原因が明らかに認められる場合であって、そのために頚部又は腰部のいずれかの保持に困難があり、常に硬性補装具を必要とするもの

荷重機能障害の「原因が明らかに認められる場合」とは脊椎圧迫骨折・脱臼、脊柱を支える筋肉のマヒまたは項背腰部軟部組織の明らかな器質的変化があり、それらがエックス線写真等で確認できる場合をいいます。

「硬性補装具」とは、金属やプラスチックなど硬い素材で作られた、失われた脊柱の機能を補完するための器具で、コルセットなどが代表例です。「硬性」なので、布で作られたようなものは除きます。

脊髄損傷による神経症状について

脊髄損傷は、体幹骨そのものの障害ではありませんが、脊柱の損傷と同時に生じることが多いので、ここでご説明します。
脊柱圧迫骨折の場合、主に椎体の前側が潰れるため、椎体の後ろ側を通る脊髄にはダメージが及ばないことが多くなります。一方、脊柱の「破裂骨折」の場合、椎体の前だけでなく後ろ側も潰れてしまうため、脊髄にも損傷が生じ、重い神経症状が発生することがあります。
生じる神経症状は、脊髄のどの部分を損傷したか(高位)によって決まります。
代表的な症状は、手や脚のマヒ、しびれ、疼痛、排尿障害、肛門周辺の感覚障害などです。
脊髄損傷が生じた場合の障害等級の認定は、身体所見及びMRI、CT等によって裏付けられるマヒの範囲と程度により認定します。
脊髄損傷による神経症状の後遺障害等級は以下のとおりです。

脊髄の後遺障害等級と認定基準

等級 認定基準
第1級1号 脊髄症状のため、生命維持に必要な身の回りの処理の動作について、常に他人の介護を要するもの
a.高度の四肢麻痺が認められるもの
b.高度の対麻痺(両下肢の麻痺)が認められるもの
c.中等度の四肢麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について常時介護を要するもの
d.中等度の対麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について常時介護を要するもの
第2級1号 脊髄症状のため、生命維持に必要な身の回りの処理の動作について、随時介護を要するもの
a.中等度の四肢麻痺が認められるもの
b.軽度の四肢麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について随時介護を要するもの
c.中等度の対麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について随時介護を要するもの
第3級3号 生命維持に必要な身の回りの処理の動作は可能であるが、脊髄症状のために労務に服することができないもの
a.軽度の四肢麻痺が認められるもの(第2級1号のbに該当するものを除く。)
b.中等度の対麻痺が認められるもの(第1級1号のdまたは第2級1号のcに該当するものを除く。)
第5級2号 脊髄症状のため、極めて軽易な労務のほかに服することができないもの
a.軽度の対麻痺が認められるもの
b.一下肢の高度の単麻痺が認められるもの
第7級4号 脊髄症状のため、軽易な労務のほかに服することができないもの
第9級10号 通常の労務に服することはできるが、脊髄症状のため、就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるもの
第12級13号 通常の労務に服することはできるが、脊髄症状のため、多少の障害を残すもの

その他体幹骨の構造の概略

その他の体幹骨とは、冒頭でもお伝えしましたが、鎖骨、胸骨、肋骨、肩甲骨、骨盤骨を指します。

鎖骨は、肩甲骨とともに体幹と腕とを繋げる役割を持ちます。首側から外に向かって鎖骨は薄く平らになっていくため、肩側にある「遠位端」が最も損傷しやすい部位です。

胸骨は胸の前部にある骨で、肋骨は肺や心臓などの臓器を籠のように取り囲んでいる骨です。胸骨・肋骨はともに胸郭を形成しています。肋骨は、息を吸うと広がり、吐くと縮む構造を持っており、衝撃を受けるとたわんで吸収するが、吸収しきれない力が加わると骨折してしまいます。

肩甲骨は、動かせる範囲が広い骨です。肩関節は、人体の関節の中で最大の可動域を持ってします。動かせる範囲が広い分、不安定な骨であるため、筋肉や靭帯で保護されています。

骨盤骨は、腰椎の仙骨・尾骨と寛骨(腸骨、恥骨、座骨)で構成されています。脊柱を支える保持機能と、中にある内臓を守る保護機能を持ちます。

その他の体幹骨の後遺障害について

体幹骨については、変形障害の1等級の定めがあります。もっとも、体幹骨の変形と同時に、他の後遺障害が生じるケースもあります。

その他の体幹骨の変形障害

その他の体幹骨の変形障害については、1等級のみが定められています。

その他の体幹骨の後遺障害等級と認定基準

等級 認定基準
第12級5号 鎖骨、胸骨、ろく骨、けんこう骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの

  • ※裸体となったとき、変形や欠損が明らかにわかるもの程度のもの(X線やCT、MRIにより、はじめて発見できる程度のものは非該当)

変形障害として認められるためには、裸の状態での見た目で変形していることがわかることが必要です。

その他の体幹骨の変形障害と同時に生じる障害

その他の体幹骨の変形障害と同時に生じやすい後遺障害について見ていきます。

その他の体幹骨の変形と神経症状

レントゲン写真などから初めてわかる変形は、変形障害として認定を受けることはできません。もっとも、骨が変形した部位に痛みがあれば、骨癒合が不全な部位の神経症状として、第12級13号または第14級9号の等級が獲得できる場合があります。

一方、変形障害として等級認定がされる場合、その場所の痛みは、変形障害の周辺症状として扱われ、独立の神経症状として等級がつくことはありません。もっとも、変形障害のみでは、基本的に労働能力の喪失は認められず、逸失利益の請求ができませんから、独立の等級はなくとも神経症状の存在を認めてもらうことが重要です。

鎖骨・肩甲骨の変形と肩の機能障害(可動域制限)

鎖骨を骨折・脱臼した場合や肩甲骨を骨折した場合には、肩の可動域制限が残る場合があります。

変形障害と肩の機能障害は、両方に等級がつき、併合の処理がされます。

肋骨の変形と呼吸機能障害

肋骨に骨折が生じた場合、折れた肋骨が胸膜を突き破って胸腔に空気や血液が流れ込む「外傷性血気胸」や、複数個所の肋骨が折れて胸郭全体との連続性が断たれ、正常呼吸時とは逆の動きを生じる「フレイルチェスト」などが生じることがあります。予後が不良で呼吸機能障害が残った場合、変形障害と両方に等級がつき、併合の処理がされます。

骨盤骨の変形と下肢短縮

骨盤骨がゆがんだ結果、下肢が1センチメートル以上短縮して左右の脚の長さに差が生じた場合には、下肢短縮の後遺障害が認定されます。この場合、骨盤骨の変形障害と下肢の短縮障害のいずれか高い方の等級が認定されます。

骨盤骨の変形と下肢の可動域制限

骨盤骨の骨折の結果、中心性脱臼などが起こり、股関節の可動域制限が生じる場合があります。この場合、変形障害と下肢の機能障害の両方が認定され、併合の処理がされます。

骨盤骨の変形と臓器の損傷

骨盤骨が損傷した結果、骨盤内の臓器が損傷してしまうことがあります。膀胱を損傷したことによる排尿障害や、女性の場合に骨盤入口(こつばんにゅうこう)が変形して正常分娩ができなくなるといった症状が起こります。

この場合、変形障害と胸腹部臓器の障害が認定され、併合の処理がされます。

体幹(脊柱・その他の体幹骨)の等級認定に向けた留意点について

最後に、体幹の後遺障害での等級認定に向けた留意点を解説します。

画像検査が重要であること

体幹の骨折等で、変形障害・運動障害に適正な等級が認められるためには、レントゲン写真・CT・MRIなどの画像から症状がわかることが必須です。画像所見がない場合、獲得できる可能性があるのは、むちうち症状などと同じ神経症状のみになります。

また、陳旧性の骨折(「いつの間にか骨折」など)は、後遺障害の対象から除外されます。新鮮骨折であることが画像からわかる必要があるので、事故から時間を空けずに画像を撮影するようにしましょう。

変形障害だけでは逸失利益は認められないこと

骨が変形したことそれ自体は、労働能力に影響を与えると考えにくいため、原則として逸失利益は否定されます。

逸失利益の賠償を受けるためには、骨折・変形に伴って、運動障害や神経症状が生じていることを証明する必要があります。主治医に後遺障害診断書を作成してもらう際には、変形だけでなく痛みなどの自覚症状をしっかりと書いてもらうようにしましょう。

脊柱損傷では「素因減額」の主張がよくなされること

特にご高齢の方の場合、骨がもろくなり、ちょっとした衝撃で圧迫骨折が生じることがあります。「いつの間にか骨折」という名称のとおり、事故でケガをしてレントゲン写真を撮影したところ、自覚症状のない事故前の骨折が見つかることもあります。

相手方保険会社からは、事故によって生じた損害には、骨のもろさという被害者の「素因」が一定の影響を与えていたのであり、その分損害額は減額されるべきだという主張がなされることがあります。

素因減額を行うことは妥当か、素因減額すること自体は妥当だとしてもどの程度の金額にすべきかは、事案によって様々です。

ご自身の事故について、素因減額が主張されている場合には、一度弁護士にご相談ください。

この記事の監修

交通事故の被害者の方は、ただでさえケガの痛みで苦しい思いをされているなかで、初めての諸手続きの大変さや先の見通しの不安を抱えて生活されています。弁護士は医者と違い、ケガの痛みを癒すことはできませんが、不安を取り除くともに、適正な賠償を受ける手助けをできれば幸いです。

弁護士三浦 知草

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