むち打ちの後遺障害

むち打ち

むちうちイメージ

むち打ちとは、事故により頸部が過伸展、屈曲したむち打ち運動後に生じた損傷をいい、一般的に、「骨折や脱臼のない頸部脊柱の軟部支持組織(靭帯・椎間板・関節包・頸部筋群の筋、筋膜)の損傷」」とされます。
 頭頸部の衝撃によって、X線上外傷性の異常の伴わない頭頸部症状を引き起こしているもので、骨折や脱臼を伴うものではありません。 むち打ちの病態は、頚椎柱及び頚椎指示組織(靭帯、筋、筋膜、椎間関節、関節包、Luschka関節、椎間板)の損傷を一次原因とし、それに神経、血管の機能的気質的病変が関与して引き起こされています。
 むち打ちの診断名は、むち打ち損傷・むち打ち症・むち打ち関連障害・むち打ち症候群・外傷性頸部症候群・外傷性頭頸部症候群・頚椎捻挫・頚部挫傷などが付けられます。

むち打ちの分類

①頚椎捻挫型

頚部、項部筋線維の過度の伸長ないし部分断裂(cervical strain)から、前後縦靭帯、椎間関節包、椎弓間靭帯、棘間靭帯などの過度の伸長、断裂などまでを含む段階のものです。頚部筋、項部筋、肩甲部筋などの圧痛、頚椎運動制限、運動痛を主症状としています。
神経症状は認められないか、認められても一過性であり部分的です。

②根症状型

頚神経の神経根症状が明らかなものです。捻挫型の症状に加え、末梢神経分布に一致した知覚障害および放散痛、反射異常、筋力低下といった症状があります。
根症状が現れる原因としては、椎間板損傷によって二次的に椎間板が突出して根を圧迫すること、事故前からある変形性頚椎症の骨棘が事故をきっかけに神経根を刺激すること、椎間関節の亜脱臼による椎間孔の狭小化などが挙げられます。
知覚障害は頚椎のC7からC8にあることが多いといえます。また上肢にわたる知覚障害が生じることもあります。頚腕症候群と比較すると神経症状から受傷部位を推察することは難しいと言われています。

③バレー・リュー症状型

頭痛、めまい、耳鳴、吐き気、視力低下、聴力低下などの症状が現れるものです。
発生原因として頚部交感神経緊張亢進、椎骨動脈循環障害、頚部軟部組織緊張亢進などの説があり、定説は確立していません。心因性ストレスが主因と考えられるとの説もあります。

④根症状、バレー・リュー症状混合型

根症状型の症状とバレー・リュー症状が現れるものです。

むち打ちの症状

むちうちの症状イメージ

むち打ちは以下の特徴的な症状があるといわれます。
事故状況(衝突箇所・方向・速度、衝撃、頭部運動、予測の可否等)と受傷時の頚椎状態(筋緊張、椎間板膨張)など多くの要因により、頚椎捻挫を中心に様々な症状が発生します。もっとも、病態は多様でその発生原因が解明されているものではありません。

①受傷直後

自覚症状:頭がボンヤリとする、脱力感がある、はきけや意識混濁、頭痛、上肢の痺れ、項部痛・圧迫感など

②急性期(受傷後1~4週間)

自覚症状:頚部痛、圧迫感・緊張感、頭痛、頚椎運動制限、肩こり、めまい、はきけ、上肢の痺れ、腰痛など バレー・リュー症状の出現

他覚所見:頚椎運動制限、項頚部筋の圧痛など知覚障害や神経根症状などの陽性所見、X線検査における椎間腔狭小化や変形性頚椎症所見の現れ

急性期の発症原因については、椎間関節・筋肉・椎間板等の損傷、頚椎椎間関節内の滑膜炎、頚椎椎間関節の交感神経幹への影響などの説明がされていますが、医学的な解明はされていれません。

むち打ちの治療経過

 症状は、治療を経て寛解するのが一般です。
遷延化する例は、器質的要因に加え、心理的要因、社会的要因などが関連して、症状に影響を与えているために生じると考えられています。 一般に平均的な治癒期間は2~3か月前後で、70%ほどの被害者が3か月で治癒しています。少数の被害者が6か月以上の長期治療となります。

むち打ちの後遺障害診断書

【記載サンプル】

【記載サンプル】

 むち打ちはレントゲンやMRI検査の画像に写りにくい神経症状です。
そのため、後遺症が残っているにも関わらず、医学的な証明がなされずに後遺障害等級認定を受けられないといった事態に至らないよう注意が必要です。

 医師と相談の上で以下の検査を受けることが重要です。

①ジャクソンテスト

神経根障害を調べる検査です。
被験者がイスにすわり、医師が後ろにまわり、医師が被験者の頭部を後ろに倒しながら圧迫します。この時、神経根の支配領域である肩、上腕、前腕、手等に痛みやしびれ感が放散した場合に、陽性となります。後遺障害診断書には、痛みやしびれ感の訴えがあるときは「+」に、痛みやしびれ感の訴えがないときは「-」と記載されます。

ジャクソンテスト

②スパーリングテスト

 ジャクソンテストと同様に頸部の神経根障害を調べる検査です。
被験者が頭を後ろに反らせた状態で、左や右に傾け、医師が圧を加え、神経根の出口を狭めます。その状態で、神経根から繋がっている肩、腕、手等に痛みやしびれがあるかを調べます。

①ジャクソンテスト、②スパーリングテストの2検査は、被験者の訴えを元にしており、後遺障害認定において決定的なものではありませんが、特定部位に神経症状を自覚していることを検査で実証できるものであり、実施しておくべき検査です。

スパーリングテスト

③深部腱反射テスト

筋肉に伸展刺激を与えた時に起こる、筋萎縮の反応を見る検査です。

深部腱反射テスト

腱に打診をして、正常な反射が返ってくるかどうかを検査します。
代表的な深部反射の中枢と求心・遠心路の対応は以下のようになっています。

求心・遠心路 反射中枢
下顎反射 三叉神経
上腕二頭筋反射 筋皮神経 C5.6(主に5)
腕橈骨筋反射 橈骨神経 C5.6(主に6)
上腕三頭筋反射 橈骨神経 C6~8(主に7)
回内筋反射 正中神経 C6~8
手指屈筋反射 正中神経 C6~Th1
胸筋反射 内・外胸神経 C5~Th1
膝反射 大腿神経 L2~4
下肢内転筋反射 閉鎖神経 L3~4

打診後に異常反応がある場合、せき髄や末梢神経に障害が生じている可能性があります。腱反射は被験者が自ら操作できない部分ですので、後遺障害等級の認定においては重視されている検査です。せき髄や大脳に異常があれば反射が亢進し、神経根や末梢神経に異常がある場合には、反射は低下ないし消失します。

むち打ちの頸椎捻挫に対する深部腱反射テストでは、特に、上腕二頭筋腱反射/上腕三頭筋腱反射/腕橈骨筋反射が重要です。

上腕二頭筋反射:被験者の両上肢を軽く外転させ、肘を約90度前後に曲げてもらいます。肘関節の屈側で上腕二頭筋の腱を検者の左第1指掌側で押さえ、指をハンマーで叩きます。必ず両側を検査して、左右を比較します。

上腕三頭筋反射:被験者に肘関節を約90度屈曲した肢位をとってもらいます。肘関節の約3cm近位部伸側をハンマーで叩きます。必ず両側を検査して、左右を比較します。

腕橈骨筋反射:被験者に両上肢を軽く外転、肘を軽く屈曲、前腕を軽く回内してもらい、手関節の2~3cm近位部で、腕橈骨筋を伸展する方向に橈骨遠位端をハンマーで叩きます。必ず両側を検査して、左右を比較します。

腱反射の評価基準と記載法は、
(+++):著明亢進(指で叩打など、わずかな刺激で誘発)
(++):亢進
(+):正常
(±):低下
(-):消失
となります。

例えば、深部腱反射テストで「低下」または「消失」の所見があり、対応する頚椎に椎間板ヘルニア等による神経婚や脊髄等の圧迫が画像上みられる等の場合には、医学的な証明が可能な状態と評価され、後遺障害12級に認定される可能性があります。

④筋電図検査

筋肉の活動を電気的に記録して筋力低下の有無やその原因が神経疾患によるものか否か等を調べる検査です。
針筋電図によって、筋力低下は神経疾患に原因があるのか、筋肉の異常に原因があるのかについて、判定します。
頸椎または腰椎の神経根の異常を医学的に証明する検査といえます。MRI画像に異常所見があり、筋電図検査においても神経疾患に原因がある筋力低下がみられた場合には、後遺障害12級に認定される可能性があります。

むち打ちの後遺障害認定

むち打ちの症状は、局部の神経系統の障害として、末梢神経障害の神経系統機能障害・精神の障害となります。
自賠責保険での後遺障害認定基準において、「末梢神経麻痺に係る等級の認定は、原則として、損傷を受けた神経の支配する身体各部の器官における機能障害に係る等級により認定すること」とされています。
しかしながら、むち打ちの症状は、それぞれ独立して身体部位の強度の機能障害としては認められないものです。実務において、後遺障害認定を巡って問題化しがちです。
後遺障害等級表において、むち打ちの等級は、以下の12級13号、14級9号の該当性が問題となります。

12級13号 局部に頑固な神経症状を残すもの
14級9号 局部に神経症状を残すもの

むち打ち損傷によって残存した症状が、12級に認定されるか/14級に認定されるか/非該当とされるかは、慰謝料や逸失利益等に深く連動するため、とても重要な問題です。
労災保険や自賠責保険の実務上、「障害の存在が医学的に立証できるもの」「医学的に証明し得る神経系統の機能または精神の障害が残っている」「感覚障害、錐体路症状及び錐体外路症状を伴わない軽度の麻痺、気脳撮影など他覚的所見により証明される軽度の脳萎縮、脳波の軽度の異常所見等が残っている」などの場合、12級の認定がなされます。
14級は「障害の存在が医学的に説明可能」「医学的に証明できないが、自覚症状が単なる故意の誇張でないと医学的に推定されるもの」という考え方が採用されています。
主訴しか存在せず、医学的説明ができないものは一般に非該当とされます

14級と非該当との違いは、

  • ○事故状況との関連性
  • ○受傷当時からの症状の訴えの「一貫性」 (自覚症状が一貫して継続しているか)
  • ○治療状況の推移(定期的な通院があるか)
  • ○検査内容(症状に応じた適切な検査を受けているか
  • ○後遺障害診断書の記載内容(症状改善可能性の有無)

などが考慮されていると思われます。

医師が診断書の記載に協力的でない場合

ほとんどの医師や病院は後遺障害診断書に協力してくれますが、むち打ちの治療担当医師が後遺障害診断書の記載に協力をしてくれないことがあります。
①交通事故の示談などに関わりたくない、②後遺障害診断書の書き方がわからない、③そもそも診断書を記載しない、などの理由です。
特にむち打ちの場合、一部の医師は、むち打ちを詐病と考え、意図的に診断書の記載に協力しないことがあります。
また、「後遺障害」とは、治療をしたにも関わらず治癒しなかった状態を指すため、一部の医師にとっては「後遺障害が残った」という状態を受け入れ難い心理もあります。
医師が診断書の記載に協力してくれない場合、他の医療機関等への転院や通院などを行い、他の病院で検査を経て、診断書を記載してもらう方法もあります。

裁判におけるむち打ちの損害判定

裁判手続きでは、後遺障害による損害額の認定は、被害者が自賠責保険や労災手続きにおいて後遺障害認定を受けていても、裁判所の判断が一致しないことがあります(民事訴訟上の裁判官の自由心証主義)。
 しかし、類似の事故や被害態様に関して裁判官ごとにバラバラの判断になることは望ましくありません。
自賠責保険における後遺障害等級認定と同様に、裁判手続きにおいては、等級を認定し具体的損害額を算定しています。
 裁判においては、神経根圧迫などに体質的素因が寄与しているかどうか、ヘルニアなどが既往のものであったか事故の外傷によるものなどが争われることがあります。
 事故前に痛みがない場合や事故によって痛みが著しく増加したような場合は、事故との因果関係をすべて否定することは難しく、身体素因を賠償額算定上で減額要素して考慮されることが多いといえます。

むち打ちの後遺障害慰謝料・逸失利益算定

一般に、むち打ちの労働能力喪失率(交通事故により収入減少へ与える影響)は、認定された後遺障害の等級に応じて算出されます。
むち打ちで後遺障害等級は12級か14級が一般です。
12級なら労働能力喪失率は14%、14級なら5%となります。労働能力喪失期間は、特別の事情がない限り、12級で10年程度、14級で5年程度と制限される傾向にあります。

左右にスクロールしてご確認いただけます。

自賠責保険等級 神経系統又は
精神の障害の程度
慰謝料例
(弁護士/裁判基準)
労働能力
喪失率
逸失利益算定例
(*基礎収入を年400万円として算定)
別表第Ⅱ
12級13号
局部に頑固な神経症状を残すもの 290万円 14/100 400万円×14%
×7.7217432
4152円
別表第Ⅱ
14級9号
局部に神経症状を残すもの 110万円 5/100 400万円×5%
×4.329586
5900円

入通院慰謝料について

入通院頻度と期間で増減します 詳しくはこちら

後遺障害のご相談は無料です。

当事務所は成功報酬ですので、被害者の方の自己負担は実質0円です。ご質問やお問い合わせもお気軽にどうぞ。

  • 面談相談0円
  • 着手金0円

ただし、弁護士費用特約が無い場合に限ります。

運営

弁護士法人リーガルプラス弁護士法人リーガルプラス

千葉の頼れる身近な弁護士を目指しています!

弁護士法人リーガルプラス
  • TEL

    9:00~20:00(平日・土曜)

  • お問い合わせ